- 障がいのある子どものいる家庭の相続では、法定相続分と遺留分について留意する必要がある
- 法定相続分を侵害するような内容の遺言は、相続トラブルを招く原因になりかねないので避けたい
- 特定贈与信託の仕組みを利用すれば、将来的に兄弟姉妹への財産を多く残すことも可能
障がいのある子どもがいる家族にとって、「親が亡くなったあとの本人の生活をどうするか」は避けて通れない話題ではないでしょうか。障がいのない兄弟姉妹がいる場合には、遺産の分配方法にも注意する必要があります。
たとえば、「障がい者本人には経済的サポートが見込めるから、面倒を見てもらう意味で兄弟姉妹に多く相続させたい」と考えた場合、どのような方法があるのでしょうか。この記事では、障がいのある子どもがいる家族の遺産相続について解説します。
トラブルなく多くの遺産を兄弟姉妹に渡したいなら
一例として、「3人の兄弟姉妹でうち1人に重度の障がい(身体障がい1級)があり、2人は自立しているケース」の遺産相続において、注意点を確認しておきましょう。このようなケースの相続では、「重い障がいのある子どもは経済的なサポートが得られるため、世話をすることになる兄弟姉妹に多くの財産を残したい」といったニーズが多くあります。
「法定相続分」と「遺留分」
遺言書がない相続では「法定相続分(相続人が取得する相続財産の割合)」が定められており、相続人が配偶者と子ども1人の場合は配偶者が2分の1、子どもが2分の1の割合で相続します。上記の例のように子どもが3人いる場合は、子どもの法定相続分(2分の1)を3人で均等に分け合う形です。
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一方、正しい形式でつくられた遺言書がある場合は、法定相続分にのっとって遺産分割をする必要がありません。ただし、その場合も「遺留分(相続人に保障されている最低限の相続範囲)」の請求が認められており、配偶者や子どもであれば法定相続分の2分の1が遺留分となります。
この「法定相続分」と「遺留分」という仕組みがある関係で、一般的な相続方法では「特定の誰か」にすべての遺産を相続させたり、相続させなかったりするのは難しいと言えるでしょう。「重い障がいのある子どもは経済的サポートがあるから、兄弟姉妹にのみ遺産を相続させたい」という意向があったとしても、実現するのは困難です。
そしてなにより、法定相続分を侵害するような内容の遺言は相続人の間に摩擦を生じさせ、相続トラブルを招く原因にもなりかねません。そこで検討したいのが、「特定贈与信託」の仕組みです。
「特定贈与信託」なら将来的に兄弟姉妹へ多く遺産を渡せる
特定贈与信託は、親などの個人が特定障害者である子どもなどを受益者として設定し、財産を信託(特定障害者扶養信託契約)する仕組みです。万が一扶養者が亡くなっても、生活費や養育費が信託財産より定期的に交付されるので、生活の安定や療養の確保をはかりやすくなります。また、6,000万円(特別障害者以外の特定障害者の場合は3,000万円)を限度に贈与税が非課税となる点も、特定贈与信託のメリットです。
多方面からの経済的支援によって特定贈与信託に頼らない生活が送れるのであれば、信託財産は資産として残すことが可能です。障がい者本人が亡くなった後の資産の受取先を兄弟姉妹やその子孫に設定しておけば、将来的に多くの資産を残すことができるでしょう。
障がいのある子どもがいる家族は信託財産も検討を
障がいのある子どものいる家族の相続は事情がやや複雑です。しかし、「経済的サポートが見込めるから」といって、障がい者本人の相続分を「なし」にするのは難しいと言えるでしょう。将来的に、兄弟姉妹に多くの財産を残したい場合は、信託を利用するのも手です。
相続についてお悩みの方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
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