「同じことを何度も聞く」「最近の出来事をすぐ忘れてしまう」――そんな変化に気づいたとき、心配になるのが認知症です。 日本では高齢化が進み、認知症は介護が必要になる主な原因のひとつとなっています。 認知症には複数の種類がありますが、代表的な4タイプで全体の約92%を占めています。 本記事では、認知症の代表的な4つの種類とその症状、進行の特徴、そして早期発見の重要性についてわかりやすく解説します。
- 4つの種類で認知症全体の92.4%を占める
- 最も多いのは「アルツハイマー型認知症」
- 早期発見と早期治療によって、認知症の進行を遅らせることができる
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認知症とは?
認知症とは、脳の病気や障害などによって記憶力・判断力・思考力などの認知機能が低下し、日常生活に支障が出る状態です。 単なる物忘れとは異なり、進行性の病気であることが多く、早期発見・早期対応が重要です。
代表的な認知症には、以下の4種類があります。
- アルツハイマー型認知症
- 血管性認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症
これら4種類が認知症全体の大部分を占めており、それぞれに適した治療や対応が異なるため、早期発見と正確な診断が非常に重要です。


出典:厚生労働省 「認知症に関する政府の取組」の情報を基に、クラモア編集部が作成
認知症の代表的な4つの種類
ここでは、認知症の代表的な4つの種類の特徴について解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多いタイプで、全体の半数以上を占めるといわれています。
脳では、「アミロイドβ」や「タウたんぱく」と呼ばれる異常なたんぱく質が神経細胞にダメージを与え、少しずつ神経細胞が壊れて脳が萎縮していきます。 特に記憶をつかさどる海馬から変化が始まり、徐々に脳全体に広がるのが特徴です。 進行は緩やかで、数年から十数年かけて症状が進んでいきます。
▼主な症状
- 初期:物忘れ、同じことを繰り返す
- 中期:家事や買い物が難しくなる、金銭管理が困難に
- 後期:言葉が出にくくなる、感情表現が乏しくなる
▼対応
- 薬物療法で進行を遅らせる
- 環境調整や介護支援が生活の質を守る
血管性認知症
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって脳の血流が途絶え、脳細胞にダメージが生じることで発症します。 その結果、記憶力や判断力、注意力の低下に加え、感情の変化や歩行障害などの症状も現れやすくなります。
症状の進行は、急に悪化したあと安定し、再び悪化する段階的なパターンが特徴です。 また、症状は「まだら認知症」と呼ばれ、得意なことはできても特定の作業が困難になることがあります。
▼主な症状
- 感情の起伏が激しい、歩行障害、言語障害
- 段階的に進行するケースが多い
▼対応
- 再発予防が最重要(高血圧・心疾患の管理)
- 生活習慣の改善が効果的
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、脳にレビー小体という異常なたんぱく質が蓄積することで発症します。 特徴的なのは、初期には記憶障害が軽く、注意力や思考力の変動が目立つ点です。 さらに、幻視(実際には存在しないものが見える)や、パーキンソン病に似た運動症状(手足の震え、筋肉のこわばり、歩行の小刻み化など)が現れやすいのも大きな特徴です。
アルツハイマー型や血管性認知症と比べると、症状が日ごと・時間ごとに変動しやすく、転倒リスクも高いため介護の負担が大きいことがあります。 また、進行が比較的速いことも特徴です。
▼主な症状
- 幻視(虫や人が見える)
- 手足の震え、歩行障害
- 認知機能の変動、睡眠障害
▼対応
- 薬剤調整は慎重に(副作用や過剰反応に注意が必要)
- 転倒予防や生活支援が重要
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉の神経細胞が徐々に壊れることで発症する認知症の一つです。 特徴的なのは、発症年齢が比較的若く、40〜65歳前後で発症することが多い点です。
初期症状として物忘れよりも性格や行動の変化が先に現れることが特徴です。 例えば、他者への配慮が欠けたり、暴力をふるうなど衝動的な行動が目立ったりすることがあります。
▼主な症状
- 衝動的な行動、社会的マナーの欠如
- 無関心・無感動、言語障害
▼対応
- 対処療法が中心
- 家族や周囲の理解とサポートが不可欠
軽度認知障害(MCI)とは?
軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)とは、日常生活に大きな支障はないものの、記憶力や判断力などの認知機能が低下している状態を指します。 正常と認知症の中間にある状態で、放置すると認知症に進行するリスクがあります。 実際、MCIの人の約半数は5年以内に認知症へ進行するといわれています。
▼早期発見・早期対応のメリット
- 認知症への進行を遅らせるチャンスがある
- 生活支援や介護準備がしやすくなる
- 医療機関での予防的治療が可能
MCIの段階で気づき、早期に対策を行うことが認知症予防や進行抑制につながるため、注意深く観察し、必要に応じて医療機関を受診することが重要です。
認知症の予防と対応のポイント

認知症の進行を遅らせるためには、早期発見と日常生活での予防対策が非常に重要です。 ここでは、認知症の予防方法と、認知症の方との接し方のポイントを紹介します。
認知症予防に効果的な生活習慣
認知症の発症リスクは、日々の生活習慣によって大きく左右されます。
以下のような取り組みが、予防につながるとされています。
- 適度な運動:
ウォーキングや体操など、無理なく続けられる運動を習慣化する - バランスの取れた食事:
野菜・魚・発酵食品などを中心に、脳に良い栄養を摂取する - 十分な睡眠:
質の高い睡眠は脳の回復を促進し、認知機能の維持に役立つ - 社会的な交流:
人との会話や趣味活動を通じて、脳を活性化させる - 生活習慣病の管理:
高血圧・糖尿病・脂質異常症などの予防・治療も認知症予防に直結
これらの習慣は、軽度認知障害(MCI)や認知症の進行を抑える効果が期待されています。
認知症の方との接し方のコツ
認知症の方と接する際は、安心感を与える対応が何よりも大切です。
以下のポイントを意識しましょう。
- 怒らない:
間違いや失敗に対して感情的にならず、穏やかに対応する - 否定しない:
本人の言動を否定せず、受け入れる姿勢を持つ - 急かさない:
ゆっくりとしたペースで接し、焦らせないようにする
これらの対応は、認知症の方の不安や混乱を軽減し、信頼関係を築くうえで非常に効果的です。
介護者の負担を軽減するために
認知症の介護は、身体的・精神的に大きな負担がかかることがあります。
介護者自身が無理をしすぎないよう、以下のようなサポートを活用しましょう。
- 地域包括支援センター:
介護や医療の相談窓口として、情報提供や支援を受けられる - 介護サービスの利用:
デイサービスや訪問介護など、専門的な支援を取り入れる - 家族や周囲との協力:
一人で抱え込まず、周囲と連携して介護を行う - 一時的な距離の確保:
介護疲れを防ぐために、休息やリフレッシュの時間を持つ
介護者が心身ともに健康でいることは、認知症の方の生活の質を守るためにも不可欠です。
まとめ|認知症と向き合うために大切なこと
認知症は、種類によって症状や進行の仕方が異なりますが、早期発見と適切な対応によって、進行を遅らせることが可能です。 特に、軽度認知障害(MCI)の段階で気づき、予防的な生活習慣や医療的サポートを取り入れることが、認知症の発症リスクを下げる鍵となります。
認知症の方と接する際には、「怒らない」「否定しない」「急かさない」を意識することが大切です。 これらの対応は、本人の不安や混乱を和らげ、穏やかなコミュニケーションにつながります。
また、介護をするご家族や支援者の心身の健康も非常に重要です。 一人で抱え込まず、地域の支援機関や専門家に相談することで、介護の負担を軽減し、より良いケアが可能になります。
認知症は誰にでも起こり得る身近な病気です。 正しい知識を持ち、早めの対応を心がけることで、本人も家族も安心して暮らせる環境を整えることができます。
老後や介護について少しでもお悩みがある方は、下記よりお気軽にご相談ください。
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