高齢化が進む日本では、認知症や身体的な理由から「本人が銀行の手続きを行えない」ケースが増えています。その対策として、銀行によっては代理人が預金の入出金などを行える「代理人制度」を設けています。 本記事では、代理人制度の仕組みやメリット・注意点、家族カード(代理人カード)との違いについてわかりやすく解説します。
- 家族カード(代理人カード)は、名義人が認知症と判断されると銀行口座が凍結される
- 認知症発症後も家族が口座の出し入れを続けられる「代理人制度」の登録がおすすめ
- 銀行によってサービスの有無・手続きや条件が違うため注意が必要
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認知症になると銀行口座は凍結される?
銀行口座は法律上あくまで「名義人本人の資産」であり、原則として家族であっても勝手に引き出すことはできません。
しかし、本人が認知症になった後でも、家族が本人の代わりにキャッシュカードや暗証番号を使って預金の出し入れを行うことはよくあるケースです。 つまり、認知症になったからといって、すぐに銀行口座が凍結されるわけではありません。
銀行口座が凍結されるのは、口座名義人が認知症になって判断能力を失っていることを銀行が把握したときです。
一方、認知症になってしまった本人の銀行口座が凍結されていなくても、以下のような理由で預金が引き出せなくなることはよくあります。
- 本人が通帳や印鑑、キャッシュカードを紛失してしまう
- キャッシュカードはあるが暗証番号を忘れてしまう
- キャッシュカードの再発行や暗証番号の再設定など、本人の意思確認が必要な手続きができない
このように、口座が凍結されていなくても、認知症によって資産管理や現金の出し入れが困難になるケースは非常に多いのが実情です。
家族カード(代理人カード)とは
家族カード(代理人カード)とは、口座名義人本人がATMを利用できない場合に、その代理人(一般的には契約者本人と生計を共にする家族)が、代わりに入出金や振込などの取引を行えるように発行されるキャッシュカードのことです。 原則として、銀行のATMで行える取引のみに限定されています。
また、家族カードは本人のキャッシュカードとは別の暗証番号を設定できるため、セキュリティ面でも安心して利用できます。

申請手続きと必要書類
家族カード(代理人カード)の申請には、一般的に以下の書類が必要です。
- 本人確認書類
- 通帳またはキャッシュカード
- 届出印
ただし、銀行によって必要書類が異なる場合があるため、手続き前に取引銀行に確認し、必要なものを揃えてから来店することが大切です。
認知症判明後の利用制限
家族カード(代理人カード)は、「足が不自由で外出が難しい場合」「入院している場合」などに、家族が代わりにATMで入出金や振込を行えるため、非常に便利な制度です。 現実的には、本人が認知症になってからも家族カードを使ってATMで取引できるケースがあります。
しかし、名義人本人が認知症で判断能力を失っていると銀行が把握した時点で、口座は凍結され、家族カードも利用できなくなるため、注意が必要です。
銀行の代理人制度とは
前述のとおり、家族カード(代理人カード)を作っていても、口座名義人が認知症を発症していることを銀行が把握した時点で、口座は凍結され、家族カードも利用できなくなります。
こうした問題に対応するため、一部の銀行では「代理人制度」を導入しています。
銀行の代理人制度とは、預金者本人が事前に指定した代理人が、本人に代わって預金の入出金などの取引を行える制度です。 代理人を登録した後でも、本人に判断能力があるうちは通常どおり本人の取引も可能です。
本人が銀行取引を行うことが難しくなった場合に、代理人が医師の診断書などを提出することで、代理人による取引が正式に可能になります。
なお、代理人制度は銀行によってサービス内容や条件・費用が異なります。
また、制度そのものを導入しない銀行もあるため、事前確認が必要となります。


代理人制度でできること
代理人制度を利用すると、本人に代わって以下のような銀行取引を行うことができます。
- 普通預金・貯蓄預金の入出金、振込
- 定期預金の解約および入出金
- 各種届出(住所変更・電話番号変更など)
- 残高照会・証明書の発行
- 外貨預金・投資信託・株式などの売却や解約 など
ただし、銀行によって取引可能な範囲は異なるため、必ず事前に確認するようにしましょう。
代理人になれる人
代理人になれる人は、以下のようないずれかの親族が対象となります。
- 配偶者
- 2親等以内の血族(子、父母、兄弟姉妹、孫、祖父母など)
- 3親等以内の親族(曽祖父母、ひ孫、叔父・叔母(伯父・伯母)、甥・姪)
※銀行によっては、それ以外の親族が認められることもあります。
このように、誰が代理人になれるかは銀行によってルールが異なるため、必ず取引銀行に確認しておきましょう。
申請手続き
代理人制度の申請手続きは、一般的に以下の流れで行われます。
本人が手続きを行う
ほとんどの銀行では、口座名義人本人が窓口へ来店して申請手続きを行う必要があります。
代理人が同席する必要があるかどうかは銀行によって異なるため、事前に取引銀行へ確認しておくとスムーズです。
必要書類を準備する
申請時には、以下の書類が必要となるのが一般的です。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 届出印
- 通帳・キャッシュカード
- 代理人の本人確認書類(銀行によって必要な場合あり) など
銀行ごとに異なる場合があるため、来店前に必ず問い合わせて必要な書類を揃えておきましょう。
代理人登録の完了
代理人登録が完了しても、代理権が発効するまでは名義人本人が通常どおり口座を利用できます。
本人の判断能力が低下し銀行が定める条件を満たした段階で、代理人による取引が可能となります。
代理人制度のメリット

代理人制度のメリットは次の通りです。
本人が認知症になっても口座の入出金・管理が継続できる
代理人制度を利用しておけば、認知症の進行や入院、身体が不自由になって本人が銀行窓口へ行けなくなった場合でも、代理人が生活費や医療費など必要な資金を引き出すことができます。
判断能力があるうちから準備できる
口座が凍結された場合、事情説明を行えば銀行の判断で出金できるケースもあります。
しかし多くの場合、成年後見制度の利用を検討せざるを得ない状況になります。
その点、代理人制度は本人に判断能力があるうちに手続きを済ませておける点が大きなメリットといえます。 「将来の備え」として事前に登録しておくことで、家族も安心して資産管理を行えるようになります。
ATMで使える代理人カードを発行している銀行もある
銀行によっては、代理人がATMで引き出しできる専用のキャッシュカード(代理人カード)を発行している場合があります。 窓口に行く時間が取りづらい家族にとって、ATMで手続きできるのは大きな利点です。
代理人制度の注意点
代理人制度を利用する際には、以下の点に注意しましょう。
認知症が進んだ後は登録できない
代理人制度は、「本人の意思確認ができること」が前提条件です。
認知症が進行し始めて名義人本人の判断能力が低下した後は、代理人制度の新規登録はできません。
そのため、将来の備えとして本人がしっかり判断できるうちに手続きを行うことがとても重要です。
代理人制度では対応できない取引がある
代理人制度では、本人に代わって多くの銀行取引が可能になりますが、以下のような取引は代理人制度だけでは行えません。
- 口座名義の変更
- 資産の移転
- 家族への贈与
- 口座の解約を伴う大きな財産移動 など
このようなケースでは、成年後見制度や家族信託の利用が必要になる可能性があります。
また、成年後見人が選任された場合は、成年後見人の権限が優先される点にも注意が必要です。
銀行ごとに取り扱い範囲・上限が異なる
代理人制度の内容は、以下のように銀行によって大きく異なります。
- 誰が代理人になれるか(親族範囲の違い)
- 必要書類
- 代理人カードの発行の有無
- 1日の出金上限
- 代理人が可能な手続きの範囲
そのため、必ず事前に取引銀行へ詳細を確認しておくことが非常に重要です。
税務リスクや相続人との揉め事に注意
代理人が引き出したお金の使い道によっては「贈与」とみなされ、贈与税が課される可能性があります。
また相続発生後に、「何に使ったのか」「引き出した金額が適切だったか」などを巡り、相続人の間でトラブルになるケースもあります。
そのため、引き出した金額の記録や支払いに関する領収書、利用目的を記したメモなどは必ず保管しておきましょう。 これらを保管しておくことで、税務リスクの回避だけでなく、相続時の“使い込み疑惑”を防ぐ効果もあります。
まとめ
銀行の代理人制度は、本人が認知症を発症した後でも口座管理を継続できる重要なサポート手段であり、家族にとっても安心につながるサービスです。 たとえ家族カード(代理人カード)を持っていたとしても、口座凍結への対策として代理人制度の利用も検討する価値があります。
ただし、銀行によって条件が異なることや認知症リスクに十分対応できない場合もあることなどを理解しておく必要があります。 将来に備え、本人の判断能力がしっかりしているうちに、取引銀行とよく相談して準備を進めることをおすすめします。
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