- 2024年4月1日以降、住宅の省エネ性能ラベルを表示する努力義務が課される
- 個人でもアパートなどの賃貸経営者は、努力義務の対象者となる
- 建築物省エネ性能表示制度では、光熱費の安さもアピールすることができる
建築物省エネ性能表示制度とは
建築物省エネ性能表示制度とは、誰もが省エネ性能で建物を選べるようにすることを目的で設けられた“建物の省エネ性能をわかりやすく示す国の制度”のことです。
建築物省エネ性能表示制度では、住宅や建築物を販売もしくは賃貸する事業者や、アパートなどの賃貸経営をする個人事業主に対し、省エネ性能ラベルを表示する努力義務が課せられます。
背景と目的
現在日本では、地球温暖化対策を背景として、さまざまな施策が並行して実施されています。
住宅・建築物分野は日本のエネルギー需要の約3割を占めるとされており、2050年カーボンニュートラルを達成するためには、住宅・建築分野の省エネ化を加速していくことが不可欠です。
建築物省エネ性能表示制度は、建物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)に基づき、2024年4月1日より施行される制度となります。
建築物省エネ性能表示制度により、広告などに建物の省エネ性能が横幅60mm程度を目安としてラベルが表示されます。
2050年カーボンニュートラルを達成するためには、国民や事業者が省エネ対策の必要性を理解し、意識変化や行動変容が促される仕組みが必要です。
そのため、売買や賃貸の市場において、省エネ性能が高い建物が選べる市場環境の整備が急務となっています。
建築物省エネ性能表示制度は、国民の省エネに対する意識醸成が目的となっており、国が表示する事項や方法のルールを定めたものとなります。
対象となる建物
努力義務の対象となる建物は、原則として2024年4月1日以降に建築確認申請(着工前に行う図面審査)を行う新築建物となり、住宅だけでなく、非住宅も対象です。
住宅で対象となるのは、販売または賃貸することを目的とした住宅であり、具体的には分譲一戸建て、分譲マンション、賃貸住宅、買取再販住宅などです。
非住宅で対象となるのは、賃貸されることを目的とした建物であり、具体的には貸しビルなどが該当します。
対象外となるものは、請負契約による注文住宅や自社ビル、もしくは民泊施設です。
対象となる事業者
努力義務の対象となる人は、販売または賃貸の事業者です。
売り主、貸し主、サブリース事業者が該当となり、個人であっても、アパートや賃貸マンションの貸し主は事業者に該当し、努力義務の対象者になります。
告示に従わない表示をしたときの罰則
建築物省エネ性能表示制度はあくまで努力義務のため、表示をしなくても罰則はありません。 ただし、表示をする場合は告示に従わない表示をすると罰則の対象となります。
国土交通大臣が販売・賃貸事業者が告示に従って表示していないと認めるときは、勧告・公表・命令をすることができます。 また、実際のものよりも優良であると誤認されるような表示や、特定の住宅や住戸にのみ該当する内容がすべての物件に該当すると誤認される表示は禁止されています。
住宅の建築物省エネ性能表示でわかること
住宅の建築物省エネ性能表示では、下図のような省エネ性能ラベルを用いて省エネ性能を表示します。 省エネ性能ラベルとは、建物のエネルギー消費性能と断熱性能を星マークや数字で表示したものです。
画像出典:国土交通省 「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」
エネルギー消費性能
省エネ性能ラベルでは、BEIが星の数で表示されます。 BEIとは、国が定める省エネ基準からどの程度消費エネルギーを削減できているかを見る指標のことです。
再エネ(再生可能エネルギー)設備のない住宅は「30% 以上の削減率」を上限とした5段階評価、再エネ設備がある住宅は「50% 以上の削減率」を上限とした7段階評価で表示され、星の数が多いほど、建築物で使われている設備機器の省エネ性能が高いということになります。
断熱性能
断熱性能とは、「建物からの熱の逃げやすさ」と「建物への日射熱の入りやすさ」の2点を考慮した指標です。断熱性能は家の形のマークで表します。
外皮平均熱貫流率と呼ばれる建物からの熱の逃げやすさを表す指標である「UA(ユーエー)値」と、平均日射熱取得率と呼ばれる建物への日射熱の入りやすさを能わす指標である「ηAC(イータ・エー・シー)値」それぞれについて地域区分に応じた等級で評価し、いずれか低いほうの等級を表示します。
家の形のマークの数が多いほど“断熱性能が高い”ということになり、断熱性能が高いと、冷暖房の空調効率が高まることから、電気代が安くなることが期待されます。
目安光熱費
省エネ性能ラベルでは、住宅の省エネ性能に基づき一定の設定条件の下で想定される年間の光熱費の目安額が示されます。 表示される金額は、1年間でどのくらいの光熱費がかかるかをシミュレーションで計算したものです。
目安光熱費の算出方法は、住宅の省エネ性能に応じて国が定める計算方法で算出された電気・ガスなどの年間消費量に、全国統一の燃料などの単価を乗じて、年間の光熱費を算出しています。 シミュレーションの条件としては、住戸面積30平米当たり 1 人としており、住戸面積が120平米以上の場合は4人という設定です。 売電量に関しては、対象外となります。
自己評価・第三者評価
評価方法(自己評価、第三者評価)が示されます。
自己評価とは、販売・賃貸事業者が自ら国が指定するWEBプログラムまたは仕様基準に沿って、建築物の省エネ性能の評価を行うことです。
第三者評価とは、第三者の評価機関に依頼して、建築物の省エネ性能の評価を受けたことを指します。 第三者評価では、第三者評価を示すBELS(ベルス:建築物省エネルギー性能表示制度)マークも表示されます。
再エネ設備の有無
建物内における“再エネ設備の有無”が表示されます。
再エネ設備とは、太陽光発電や太陽熱利用、バイオマス発電などのことです。
ZEHの状況
ZEHとは、ネット・ゼロ・エネルギーハウスのことを指します。
ZEHは、太陽光発電などによる電力創出と省エネルギー設備の導入や外皮(屋根、壁、床等)の高断熱仕様などにより、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した住宅のことです。 ZEH住宅であれば、ZEHの達成のチェックマークが記されます。
また、エネルギー消費性能が星3つ以上、断熱性能が家の形のマーク5つ以上になると、ZEH水準住宅として表示されます。
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建築物省エネ性能を表示するメリット
省エネ性能ラベルを表示すると、目安光熱費をわかりやすく伝えられる点がメリットとなります。 賃貸住宅の入居希望者は、どれくらい光熱費がかかるかを気にする人が多い傾向にあるため、目安光熱費が少ない賃貸住宅であればアピール材料となり、入居者を募集しやすくなります。
まとめ
以上、建築物省エネ性能表示制度について解説してきました。
建築物省エネ性能表示制度の努力義務の対象となるのは、原則として2024年4月1日以降に建築確認申請を行う新築建物です。 アパートや賃貸マンションの貸し主も努力義務の対象者となり、告示に従わない表示をした際は勧告等を受ける恐れもあります。 しかし、入居希望者が建築物を購入・賃借する際に“省エネ性能の比較”ができることで、大きなアピール材料にもなります。
これからアパートや賃貸マンションの新築や、賃貸経営を検討されている方は、下記よりお気軽にご相談ください。
不動産鑑定士
竹内 英二
不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。
⇒竹内 英二さんの記事一覧はこちら
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