- 連帯保証人は親族に頼むのが一般的
- 連帯保証人には入居者とほぼ同じ責任が伴う
- 保証会社を利用すれば連帯保証人なしでも契約できる可能性がある
賃貸物件を借りる場合、契約前に連帯保証人を立てることを要求されるのが一般的です。しかし事情があって連帯保証人を用意できない場合は、ご自身の名義で賃貸契約をすることは不可能なのでしょうか。
実は連帯保証人がいない場合でも、賃貸物件を借りることは可能です。この記事では、賃貸契約を控えた方に向けて、賃貸の連帯保証人はなぜ必要なのか、誰にも頼めないときはどう対処したらよいのかなどを丁寧に解説します。
賃貸契約には連帯保証人が必要なケースが大半
賃貸で物件を借りる際、「実際に家を借りるのは入居者なのだから、連帯保証人を用意する必要はないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。ではなぜ賃貸で連帯保証人を立てる必要があるのでしょうか。
賃貸契約における連帯保証人の役割
賃貸契約における連帯保証人の役割は、「入居者の債務の履行を一緒に保証すること」です。ここでいう債務の履行とは、家賃や共益費をはじめ、賃貸契約に定められた各種費用の支払いを指します。
家の契約時に「万が一滞納があった場合は私が肩代わりします」と保証することで、滞納リスクの軽減につながります。大家や管理会社が賃貸契約をする際の安心にもつながるため、心理的にも部屋を貸しやすくなるのです。
賃貸契約で連帯保証人を要求される理由
連帯保証人がいないと契約できない物件は数多く存在します。大家の立場からすると、初対面の人に自身の資産である部屋を貸す契約をすることになります。しかし、単に契約を結ぶだけでは、家賃やそのほかの費用をきちんと支払ってくれる保証はありません。
当然、契約時に入居者の経済状況などの審査は行いますが、何かあったときに家賃を支払えなくなる可能性はゼロではないのです。そこで、滞納の際に家賃を立て替えてくれる人が必要になります。
連帯保証人なしでの契約は大家にリスクがある
連帯保証人のいない賃貸契約では、滞納リスクを大家や管理会社が負うことになります。滞納による家賃収入の減少もさることながら、問題は「一度滞納したからといって即座に退去させることができない」ことです。
不動産の貸し借りのルールを定めた「借地借家法」の解釈では、一度の滞納では借主と貸主の信頼関係は崩壊しないとされています。強制退去の可否は「賃料の滞納が3ヶ月以上続いているかどうか」が基準です。つまり、仮に入居者が家賃を滞納していても、3ヶ月間は物件から立ち退いてもらうことはできません。
賃貸物件の運用に際し、大家にはローンの支払いや管理会社への報酬など、毎月少なくないランニングコストが発生しています。家賃を滞納され退去してもらうこともできないと、その物件の収支はゼロどころかマイナスとなり、大きな負担になります。こうした背景があることから、家賃の滞納リスクを最小限に抑える対策が不可欠なのです。連帯保証人を立てることで、滞納リスクの軽減が図れます。
連帯保証人と保証人の違いとは
賃貸契約では、多くの場合賃料を保証する人は単に「保証人」と呼ばれることが多いでしょう。しかし、実際の保証形態には通常の保証のほか「連帯保証」が存在します。そして、賃貸契約では連帯保証人を要求されることが一般的です。保証人と連帯保証人は性質の大きく異なる保証契約です。この二つはどんな点に違いがあるのか、比較しましょう。
保証人は債権者に対抗できる権利がある
保証人と連帯保証人は、大家から滞納分の家賃を請求された際、先に借主から回収するよう主張できるかどうかが異なります。連帯保証人ではない通常の保証人は、以下の二つの権利が民法で認められています。
【催告の抗弁権】
債権者(ここでは大家)から賃料の請求を受けた際、先に借主へ請求するように主張できます。
【検索の抗弁権】
借主の財産の存在と、その財産を容易に回収できることを証明できれば、先に借主から賃料を回収するよう主張できます。支払いの請求を受けたあとでも主張可能です。
以上からわかるように、通常の保証人は支払いの請求を受けたとしても、即座に請求に応じなければならないわけではありません。この点が連帯保証人とは違うポイントです。
連帯保証人は「自分が部屋を借りているのと同じ」
債権者からの請求に対し一定の保護が与えられている保証人に対し、連帯保証人の債務はほぼ主たる債務者(ここでは借主)と同じです。※ただし、2020年の民法改正により、賃貸契約における連帯保証人に関して、極度額の設定が必須に。
さらに民法の規定では、連帯保証人に対して「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」は認められていません。つまり、借主が賃料を滞納した場合、大家は一度も借主に賃料を督促することなく、連帯保証人に滞納分の支払いを求めることができます。借主に預貯金などの財産があり、回収見込みがある場合も同じで、滞納時点で連帯保証人には支払い義務が発生します。このように連帯保証人は、保証人と比較して負担する責任が大きいことが特徴です。
不動産の賃貸では連帯保証人をつけるのが一般的
賃貸契約でどちらの保証形態を採用するかは、とくに法律で規定されているわけではありません。しかし、不動産の賃貸契約では連帯保証人をつけることが通例です。これは連帯保証人をつけた方が、より確実に家賃を回収できるためです。リスクを抑えた物件の運用ができるという貸主側の都合に起因する部分が大きいと言えます。
連帯保証人は信頼できる人に頼む
経済状況の悪化などで万が一滞納してしまった際は、連帯保証人に家賃の支払い義務が生じます。そのため、より近しい関係でかつ信頼できる人に連帯保証人になってもらうよう頼みたいところです。
民法改正で保証人の責任に上限が設定
2020年4月に保証人の責任についての内容を追記した改正民法が施行されました。これにより「極度額の定めのない保証契約は無効」とルールが変更されます。極度額とは上限額のことで、すなわち保証人が肩代わりする金額に上限が設けられるようになりました。
仮に極度額を150万円と定めて保証人になった場合、家賃の滞納額が150万円を超えたとしても超過分の支払い義務はなくなります。保証の上限をいくらにするかは、民法にとくに基準は定められていないため、借主と大家の双方の協議で行われます。国土交通省が発表している賃料帯別の滞納による損害額の統計資料が存在するため、契約時はこれを参考に相場を判断するとよいでしょう。
統計資料によると、たとえば月の賃料が8~12万円の物件では、滞納が生じた物件の9割は120万円までの損害に収まっています。そのため120万円前後に上限を定めるのが適正と言えそうです。
身の回りで連帯保証人をお願いすべき人とは
身の回りの人に連帯保証人をお願いする場合、どんな相手に頼めばよいのでしょうか。家賃滞納の際に支払いの義務が生じるという事情もあるため、単なる知り合いに頼むわけにはいきません。そのため、親族に頼む流れが一般的です。
家の連帯保証人は親や親族に頼む人が多い
賃貸物件の連帯保証人は、親や親族など血縁関係のある人に頼むケースが大半です。連帯保証人としての契約を求められるという都合上、親しい間柄の人でなければ頼みづらいという現状があります。連帯保証人を誰にするかについては「親族や家族のみ」というケースから「安定した収入があれば親族以外もOK」など、大家の方針に依存します。
連帯保証人に不安がある場合は、家探しを相談する時点で不動産会社にその点を共有し、事前相談しておきましょう。
連帯保証人になれるかどうかの審査条件
連帯保証人には誰でもなれるわけではありません。基準に適合しない場合は、たとえ連帯保証人として申請しても断られる可能性があるからです。審査の基準は管理会社や大家の意向で異なりますが、一般的に審査基準となるポイントは以下になります。
【連帯保証人の審査基準】
・定期的な収入がある
・家賃に見合った経済力がある
・国内に居住している
・3親等以内(叔父や叔母など)の親族
上記から基本的には血縁関係にあり、相応の経済力を持っている人が連帯保証人として認められやすいと言えるでしょう。
連帯保証人になれないのはどんな人
前述の基準にのっとると、以下の人は連帯保証人になれない可能性が高いと言えるでしょう。
【連帯保証人として認められにくい人】
・無職
・退職済みの親
・学生
・家賃の金額に対して収入が少ない人
・病気療養中などの事情で収入がない人
入居審査で落とされてから慌てないよう、あらかじめ連帯保証人を頼む人の属性をチェックしておきましょう。
連帯保証人を頼む際に提出してもらう書類
賃貸契約の際は、ご自身に加え連帯保証人になる人の分の必要書類があります。一般的に、連帯保証人に用意してもらうのは「住民票」「印鑑証明書」の二点です。そのほか、収入証明書の提出が必要になるケースや、保証の同意書などに直筆のサインを求められる場合もあります。もし連帯保証人が遠方に住んでいるなどの事情がある場合、早めに必要書類を確認し、余裕を持って準備してもらいましょう。
連帯保証人がいない場合は「家賃保証会社」の選択肢を
連帯保証人を頼める人が周囲にいればよいのですが、人によっては連帯保証人を頼める人がいないこともあるかと思います。この場合は連帯保証人に代わって連帯保証を行ってくれる「家賃保証会社」の利用を視野に入れましょう。
連帯保証人なしの賃貸契約は増加傾向にある
「賃貸保証会社の利用」を必須条件にしている賃貸契約は増加しています。大家や管理会社の立場からすると、人に保証を頼むよりも保証会社を利用してもらったほうが、家賃を回収できる確率は高いからです。
また、外国人居住者の増加や入居者の高齢化など「連帯保証人を頼みたくても頼めない」ケースが増えているのも、保証会社の浸透した背景にあります。国土交通省のデータでは、家賃保証会社を利用している賃貸物件は全体の約6割に上っているほどです。
家賃保証会社の役割
家賃保証会社の役割は、入居者が家賃を滞納した場合にオーナーに対して滞納分を支払うことにあります。また、このサービスによって大家や管理会社に安心感を与え、物件を貸しやすくするのも重要な存在意義と言えるでしょう。
入居者にとっても、家賃保証会社を利用することで賃貸物件を借りるハードルが大きく下がります。相応の保証料の負担が発生しますが、賃貸契約でネックになりやすい連帯保証人探しをお金で解決できる点は大きなメリットです。なお、滞納が発生した場合は保証会社が滞納分を立て替えますが、この場合も入居者の家賃支払い義務がなくなるわけではありません。立て替えた分は保証会社から入居者に請求されるので注意しましょう。
家賃保証会社の保証料
保証料をいくら支払うかは、物件の大家や管理会社が利用している家賃保証会社によって異なります。一般的には契約初年度で家賃の0.5~1ヶ月分を徴収し、2年目以降は保証料が下がるパターンが多いでしょう。仮に月の家賃が10万円の物件であれば、5~10万円程度を初期費用として支払う計算になります。
2年目以降の保証料が下がるのは、初年度の家賃の支払いを完遂したことにより保証会社からの信用を得られるためです。なお、家賃保証会社を入居者が自由に選ぶことはできず、物件の管理会社によって異なります。そのため、保証料を確認したい場合は不動産会社に依頼して確認しましょう。
連帯保証人は大家のリスクヘッジ 難しい場合は保証会社も利用できる
賃貸契約の連帯保証人は、大家を家賃滞納の損害から守るためのリスク軽減手段です。万が一に備えて必要になることが多いと覚えておきましょう。ただし、連帯保証人を頼めない場合でも悲観する必要はありません。「保証会社を利用する」「連帯保証人不要の物件を選ぶ」など、連帯保証人がいなくても賃貸契約ができる可能性があるからです。
連帯保証人の面で不安がある場合は、家探しを始める段階で不動産会社に「保証会社を利用したい」と相談することをおすすめします。
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