- マンションを一括購入すると、住宅ローンの利息を払わずに済む
- 一括購入の場合、住宅ローン減税などの減税制度が使えない
- メリットと注意点を踏まえて、自分に合った購入方法を選択しよう
マンションを購入するためには、多額のお金が必要です。そのため、ローンを利用するケースがほとんどとされています。しかし、貯金や相続などで手元に資金がある場合、「一括購入したほうがお得なのでは?」と考える人もいるでしょう。
今回は、マンションを一括で購入する際のメリットや注意点、費用を含む一連の流れなどを、ローンを利用するケースと比較しながらご紹介します。ぜひ、マンション購入の際の参考にしてみてください。
マンションを一括購入するメリットは?
マンションを一括購入した場合、主に「費用面」と「手間や時間面」で大きなメリットがあります。
費用面のメリット
住宅ローンを利用しないため金利が発生しない
住宅ローンを利用しないので、当然のことながら金利は発生しません。マイナス金利政策によって、この金利も0.4%から1.5%程度と非常に低くなっていますが、借入金額が大きく長期返済となることが多い住宅ローンの場合、支払う金利の総額も相当な額になることがほとんどです。
たとえば、3,000万円を金利1%で借り、35年で返済した場合には返済総額は約3,550万円。利息分は約550万円になります。
購入時の諸経費が抑えられる
マンション購入時に住宅ローンを利用してしまうと、融資手数料やローン保証料などといったさまざまな費用を支払わねばなりません。しかし、一括購入すれば、これらの諸経費は抑えることができます。
非課税措置を利用すると節税につながる
この記事を読んでいる人の中には、両親などから、資金提供を受ける人もいらっしゃるのではないでしょうか。このときに財産を譲り受けたのであれば、贈与税が課せられます。ただし、1年の間に贈与として受け取った合計金額が110万円よりも下回っているのであれば、課税されることはありません(暦年課税)。
また、両親や祖父母などの身内から住宅を購入するための資金を受け取ることもあるかもしれません。この場合では、消費税10%の物件であれば、最高3,000万円まで非課税となる特例制度が設けられているのです。
つまり、一定基準を満たす住宅の場合、3,000万円に110万円の基礎控除を足した「3,110万円」まで贈与税が発生しない可能性があります。
手間や時間面のメリット
金融機関の審査がない
住宅ローンを組むためには、金融機関からの審査が必要です。審査に必要な書類を揃えるには、大変な労力を要します。また、職種や信用情報によっては、たとえ手元に豊富な資金があったとしても、審査を通過するのは難しいと言われているのです。
実は住宅ローンには、以下の二つの審査があります。
・金融機関が確認する「事前審査」
・金融機関と信用保証会社が確認する「本審査」
収入状況や勤続年数によっては、審査に大幅な時間を要する可能性があるでしょう。また、事前審査に通り購入手続きを進めていても、本審査で落ちてしまって購入できないというケースも少なくありません。これらの審査をクリアしなくてもよいという点は、一括購入のメリットと言えます。
保証人が不要
ローンは、連帯保証人を立てることを条件とされることもあります。しかし、現実的にはその代替え案として、信用保証会社に保証料を支払って保証してもらうことがほとんどです。
一方、一括購入の場合は全額を用意できているため、保証人は不要。保証料を支払わずに済む点もメリットと言えるでしょう。
マンションを一括購入する際に注意したいポイント
マンションを一括購入する際には注意したい点もあります。以下のポイントを把握するようにしましょう。
住宅ローン控除が受けられない
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで住宅を購入する人の金利による負担を減らすための制度です。その年の12月31日時点でのローンの残りの金額、あるいは住宅の取得対価のうち、金額が少ないほうの一部の税金が控除されるというものです。ここでの控除額は最大で40万円で、最長13年まで受けることができます。新築などの長期優良住宅の場合には、最大で50万円までの控除が可能です。
関連: 「住宅ローン控除」の 基礎知識!受けられる条件は?いくら戻ってくる?
住宅ローンを利用せずに一括購入した場合には、控除は適用されません。しかし、総支払額から控除金額を差し引いても、一括購入をしたほうが安い場合もあるので、住宅ローン控除が適応されることがお得とは言い切れない面もあります。(※2021年10月現在)
すまい給付金を受けられない可能性もある
すまい給付金は、消費税率引き上げによって負担となる住宅購入時の費用を少しでも軽減させるために設けられた制度です。ローンを利用したケースでは、一定の条件に当てはまる者に対して最大50万円が現金で給付される仕組みです。
給付条件には「住宅ローンの利用」が挙げられています。また、購入者の年齢や年収などに条件があります。
・引き渡しを受けた年の12月31日時点で購入者が50歳以上
・年収650万円以下
この条件を満たしていないと、給付を受けることはできません。
手元資金が大幅に減る
一括購入すると、手元資金から一度に数千万円を失うことになります。購入後も手元に十分なお金が残る場合は良いのですが、預貯金の大半を支払いにあててしまう場合、問題が発生する可能性もあるでしょう。
マイホームの購入では、「購入後の支出」も考えておくことが重要です。購入後には、税金や管理費などさまざまなランニングコストが必要となります。さらに、長い人生で重要なのは「住」だけではありません。ライフステージが変わるにつれ、教育資金や医療費など費用が必要な場面が続きます。
低金利時代といわれ、経済的な負担をあまり負わずに住宅ローンを組むことができる今、一括購入だけで預貯金を使い果たしてしまい、住宅ローンよりも高利のローンを組むことになるようでは、意味がありません。マンション購入時以外の支出も念頭に置いた資金計画を検討することが重要です。
税務署からヒアリングがおこなわれる可能性がある
税務署は、不動産登記によってマンションを購入の事実を知ることができます。その際、一括購入などで大きなお金が動くと、贈与の有無などを把握するために、税務署が資金の調達方法のヒアリングを行うことがあるのです。
正当に資金調達し適正な申告をしていれば、過剰に心配する必要はありません。ただし、きちんと説明できるよう、関係書類(預金通帳や契約書、申告書類など)を準備しておく必要が生じます。
マンション購入にはどんな費用がかかる?
続いては、マンション購入時にどんな費用が必要になるのか確認しておきましょう。一括購入の場合、ローン利用時と比べると、諸費用においていくつかの費用を抑えられます。
諸費用
一般的にマンション購入にかかる費用
■収入印紙代
売買契約書は課税対象文書です。収入印紙を添付して提出し、印紙税を支払います。契約書は、売り主と買い主が各々1通ずつ作成。各自の契約書に貼る印紙税を負担するのが一般的です。
■登記費用
マンションを購入すると所有権が移るため、司法書士を通じて登記手続きが必要です。一般的に登記費用とは、登録免許税と司法書士への報酬のことをまとめた費用のことを指します。登録免許税額は物件価格にもよりますが、司法書士報酬の相場は2~8万円です。
■不動産取得税
不動産取得者が都道府県に支払う税金で、「課税標準額×4%」で算出されるのが特徴です。マンションの場合、築25年以内で登記簿面積が50平方メートル以上の自己居住用の物件であれば、軽減措置を受けることが可能です。
■火災保険料
この保険料については、ローンを利用する場合には必須であることが多いです。一括購入の場合は任意ですが、万が一のときに備えて加入しておくのがよいでしょう。
中古マンションを購入時に必要な費用
■不動産仲介手数料
売買を仲介した不動産会社に支払う手数料のことであり、新築マンションの場合は不要です。なお、仲介手数料は物件の金額や仲介会社によって異なりますが、物件の売買価格が400万円以上の場合、以下の計算式でおおよその手数料を計算できます。
(売買価格×3%+6万円)+消費税=仲介手数料
たとえば、物件の売買価格が1,000万円だった場合、おおよその仲介手数料は以下のようになります。
(1,000万円×3%+6万円)×1.10=39万6,000円
仲介手数料の計算式を物件の売買価格別にまとめると、以下のようになります。
物件の売買価格(税抜) | 仲介手数料の上限 |
---|---|
400万円超 | 物件の売買価格(税抜)×3%+6万円+消費税 |
200万円超~400万円以下 | 物件の売買価格(税抜)×4%+2万円+消費税 |
200万円以下 | 物件の売買価格(税抜)×5%+消費税 |
■精算金
「固定資産税・都市計画税」「管理費」「修繕積立金」などの日割り分を売り主に支払うことがありますが、これらの費用のことをまとめて「精算金」と呼びます。
一括購入では必要ない住宅ローン利用時にかかる費用
■住宅ローン金利
借入金額に応じて支払う利息で、返済初回から完済まで支払いが必要です。ただし、0.4%から1.5%という超低金利に加えて住宅ローン控除制度がある今は、金利分はあとで取り戻せる可能性があります。
■ローン保証料
やむを得ない状況で、ローンの支払いができない状況に陥ってしまったときに、保証会社に返済を立て替えてもらう保証料のことを指します。支払い方法や回数はさまざまです。ローンの金利に上乗せするというケースも見られますが、支払先は金融機関ではなく保証会社です。借入額の2%前後が相場とされ、住宅ローン関係の諸費用の中で最も高額と言われています。
■団体信用生命保険料
これは契約者が亡くなった、もしくは高度機能障害となったなどの予測することのできない事態が発生したときに、残りのローンを保険会社が金融機関へ支払ってくれる保険のこと。ほとんどの場合加入が必須とされており、毎月の返済金に上乗せされることが多いようです。
マンション一括購入の流れ
マンション一括購入の主な流れは「購入申込」「売買契約」「決済」「登記」の4ステップと非常にシンプルです。
購入申込
購入したいマンションが決まったら、不動産会社などを通じて「購入申込書(買付証明書)」を提示し購入を申し込みます。購入申込書は日程や価格など、購入に関する諸条件を記載するもので、ここで売り主に対して一括払いで購入する旨を宣言します。
ローンを利用するケースでは、この段階から金融機関による審査が始まるため、購入できるかどうかはまだ不透明です。一括購入なら、お互いの売買条件が合えば、この段階で購入権を得られる可能性が高いでしょう。
売買契約
購入申込のあと、売り主と買い主がお互い改めて条件を確認し、合意に達すれば契約が締結されます。売買契約で行われることは以下の通りです。
「重要事項説明書」に基づく説明がおこなわれる
宅地建物取引業法では、不動産会社にいる宅地建物取引士から買い主に対し、「重要事項説明書」を提示することを義務付けています。そのうえで、買い主は登記簿記録内容や私道の負担に関してなどの説明を聞く必要があります。
売買契約書への捺印をしたのち、手付金の支払い
重要事項説明書の内容に納得したら、売買契約書への捺印をします。その後、手付金(売買価格の一部)を支払いましょう。
手付金には、「契約をした証拠」「解約金の一部(仮に解約する場合)」「契約違反があった場合の違約金の一部」という側面があります。相場は売買価格の5%から10%程度と考えておくと良いでしょう。
決済
決済は、買い主、売り主、不動産仲介業者、司法書士が集まって行います。支払額から手付金を引いた残金を支払い、鍵と権利証を引き渡すことになります。
残金の支払い
残金は、現金でも支払えますが、高額なため銀行振り込みを利用する場合がほとんどです。
鍵と権利証の引き渡し
残金の支払いが完了すると同時に、売り主から買い主に鍵と権利証(マンションの登記識別情報)が引き渡されます。買い主はこの時点から、取得したマンションを利用できるようになります。
登記
決済が問題なく完了したことを見届けた司法書士は、ただちに登記所に向かい、登記手続きを行います。名義の変更は、決済日に行われますが、登記簿謄本(登記済みの権利証)は後日郵送されます。
一括購入の手続き期間
手続きにかかる期間は、おおむね1~2週間です。ローンを利用する場合1~2ヶ月かかるとされていますので、マンションが自分のものになるまでのスピードにはかなりの差があります。手続きがスムーズかつスピーディーに進めやすいのも一括購入の強みと言えるでしょう。
マンション一括購入のメリットと注意点を踏まえて自分に合った選択をしよう
マンションの一括購入は、住宅ローン利用時と比べ費用を抑えてスピーディーに進められるのが大きな魅力です。しかし、控除が受けられない可能性があったり、手元資金が大きく減ったりする点には注意しましょう。
マンションの購入を検討している方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
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