- 遺産分割は正しい手順で行うことが早期円満解決につながる
- 遺産分割が協議で決定しなければ、調停・審判へと進んでいく
- 分割方法は大きく4つあり、相続人が納得できる方法を選ぶことが大切
遺産分割で必要になる3つの手続き
遺産分割の手続きの場は、「遺産分割協議」「遺産分割調停」「遺産分割審判」の3つのステージがあります。それぞれを詳しく見てみましょう。
相続人みんなで話し合う遺産分割協議
遺産分割を相続人みんなで話し合って決める場を、「遺産分割協議」と言います。
- 遺言書がない
- 遺言書に遺産すべての分割方法が記されていない
- 遺言書の内容に納得していない相続人がいる
上に記した3つのいずれかに当てはまる場合は、遺産分割協議が必要です。遺言書にすべての遺産分割方法が記されており、相続人が納得しているときは協議する必要はありません。
遺産分割協議は相続人全員で行い、対面での話し合いだけでなく電話やメールなどの方法も選択可能。話し合いの自由度が高く、柔軟な解決が可能で、費用もかからない点がメリットと言えるでしょう。
一方、参加に強制力がないというデメリットもあります。相続人の誰かが参加しないとなると遺産分割協議とはみなされず、遺産分割は決定できません。
話がまとまらなかったら遺産分割調停へ
遺産分割協議で話し合いがうまくまとまらなかった場合、話し合いの場は遺産分割調停へと移されます。遺産分割調停とは、家庭裁判所に申立てを行い、意見が違っている双方の話を聞いた調停委員が解決の手助けをしてくれる場です。
意見が違っている人同士が、顔を合わせることなく話し合いが進んでいくので、お互い冷静になりやすく、中立な立場である調停委員の助言や解決案で、トラブルが解決しやすいというメリットがあります。
一方、デメリットは手間と時間がかかり、お互いの譲り合いが必要になるので、自分の主張がすべて通ることは難しいということです。また、調停では全員の合意をもって解決とするので、合意が得られないと次は遺産分割審判へと移ることになります。
調停でも決まらなければ遺産分割審判
遺産分割審判は、遺産分割調停での話し合いや提出資料、双方の希望などをもとに、裁判所が審判を下す場です。審判は、調停や協議のような話し合いの場ではなく、強制的な決定をもって解決となります。
不服申立ては可能ですが、一度裁判所の審判が確定すると、自分にとって有利・不利であっても、絶対守らなければならないということを覚えておきましょう。
遺産分割審判のメリットは、話し合いの場で決着がつかなかった事案を、強制力を持って解決してくれる点です。一方で、審判には3ヶ月から8ヶ月ほどの期間と審判にともなう費用がかかるうえ、審判の内容が必ずしも自分が納得できるものとは限らないという点がデメリットと言えるでしょう。
遺産分割で必要になる4種類の分割方法
遺産には、分けやすい現金だけでなく、土地や家屋、車などの分けにくいものもあります。遺産分割は大きく分けて4つ。それぞれの分割方法についてメリットとデメリットに触れながら詳しく見てみましょう。
現物を分ける現物分割
現金、不動産、株など遺産をそのまま分ける方法を「現物分割」と言います。不動産を売却するなどの手間が省け、手続きが簡単な点がメリットです。相続人が納得していれば、きちんとした資産評価をする必要もありません。
しかし、とくに不動産はすべての相続人に同じ価値のものを分配することは難しいことが多く、公平性に欠ける点はデメリットと言えるでしょう。
相続財産をお金に換えて分ける換価分割
現物分割では納得する分割ができない場合は、不動産や車などの分けられない遺産をお金に換えて分ける遺産分割方法「換価(かんか)分割」があります。
遺産をすべて現金にしてしまえば、公平に分割することができ、トラブルに発展しにくいというメリットがあります。一方で、遺産の売却に手間がかかり、売却を急ぐあまり資産が減ってしまうということがあるかもしれません。
現物を受け取った人がほかの相続人に代償を支払う代償分割
「遺産を現物のまま受け取りたいが、財産はみんなで公平にしたい」という場合に有効なのが、「代償分割」です。相続人1人が現物で遺産をもらい受け、ほかの相続人と遺産の金額が合うように現金を渡して帳尻を合わせます。
たとえば、遺産が1,000万円の不動産のみで、兄弟二人で分ける場合、兄が1,000万円の不動産を受け取り、兄が弟に500万円を現金で渡すと公平な代償分割になります。現物を売却せずに残し、現金で調整できるというメリットがある一方で、現物を受け取る人に資金が必要で、評価額をきちんと調べなければならないという煩わしさもあるでしょう。
相続財産を相続人みんなで共有する共有分割
不動産や株など分けにくい遺産を、複数の相続人で共有の財産にしようというのが「共有分割」です。相続人同士で公平に分割できる点がメリットと言えるでしょう。しかし、相続人の1人が亡くなると、共有分割された遺産の権利は新しい相続人に移り、年月が経つにつれ、名義が複雑になっていきます。
名義が複雑になると、将来売却するときの手続きが困難になるケースが多いです。共有分割を行うときは、先のことまで考えて慎重に行いましょう。
遺産分割協議に参加する人の範囲
遺産分割協議に参加する人は、すべての相続人です。では、どんな人が相続人になりうるのか見てみましょう。
法定相続人
「法定相続人」とは、民法で決められている相続人のことです。民法では、故人の配偶者や子、親、兄弟姉妹などが相続人になれると定めており、相続人になる優先順位や遺産の割合にルールが決められています。
まず配偶者は必ず相続人になり、次に子、親、兄弟姉妹が優先順位です。たとえば、亡くなった人に「配偶者」「子」「親」「兄弟姉妹」がそろっている場合、相続人は「配偶者」と優先順位が一番高い「子」のみです。
包括遺贈を受ける人
包括遺贈を受ける人も、遺産分割協議に参加しなければならない相続人となります。遺贈とは、遺言で財産を譲ることを言い、「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。包括遺贈は遺産を受け取る割合のみが指定されている遺贈で、特定遺贈は譲る財産が特定されている遺贈のことです。
特定遺贈は、受け取る財産が定められているため遺産分割協議の参加は不要です。しかし、包括遺贈は遺産の配分が決まっているだけで、何を受け取るかは話し合いで決定しなければならないので、協議への参加が必須となります。
遺産分割の5つのステップ
遺産分割を行うには、どんな遺産があり、誰が相続し、どう分けるのかというさまざまな情報が必要です。最後に、遺産分割のステップをご紹介しましょう。
ステップ1 遺言書があるかどうか確認する
初めに、亡くなった人が遺言書を残していないかどうか確認しましょう。なぜなら、遺言書の内容は優先度が高く、法定相続人以外の相続人が載っていることもあるからです。
遺言書があった場合
遺言書が見つかったら、遺言書に効力があるかどうか確認しましょう。遺言書に不備があるときは、書かれている内容は無効となります。前述の通り、遺言書にすべての財産と分配方法が記載されていて、すべての相続人が納得している場合は、相続人同士の遺産分割協議などは必要なく、ステップ5の「決定した遺産分割を行う」までのステップをカットできます。
遺言書がなかった場合
遺言書がない場合は、ステップ2に進みましょう。
ステップ2 相続人が誰なのかを確定する
遺産分割を行うときは、相続人すべての同意を得なければなりません。そのために、相続人が誰なのかを早いうちに確定しておきましょう。もしかしたら、家族が知らない相続人が存在することもあるので、戸籍謄本などで確認することをおすすめします。
ステップ3 財産目録を作る
遺産を公平に分けるには、すべての遺産を知る必要があります。遺産は資産だけでなく負債も含まれます。預貯金や土地や建物といった固定資産、債務などをすべて調べ、財産目録を作りましょう。
ステップ4 遺産をどのように分けるか話し合う
遺産について話し合う方法を二つ紹介します。
まず行うのが遺産分割協議
まずは相続人全員で遺産分割協議を行いましょう。相続人全員の同意が得られた遺産分割方法が決定したら、決定内容を遺産分割協議書にまとめます。最後に、相続人の署名と押印をしたら完成です。
話がまとまらなければ遺産分割調停、もしくは遺産分割審判
上の章で紹介したように、遺産分割協議で話がまとまらなかった場合、遺産分割調停、遺産分割審判へと移行していき、遺産分割の内容を決定させます。
遺産分割方法が決定したらステップ5に移ります。
ステップ5 決定した遺産分割を行う
決定した遺産分割に基づき、遺産を分配しましょう。ここで初めて預金口座の払い戻しや不動産の相続登記、各種名義変更が可能です。
このように、遺産分割は順序立てて行うことで、円滑に進めることが可能です。
ときには専門家の手を借りて円滑に進めよう
遺産分割は、遺言書の有無や相続人や遺産の確定、遺産分割協議などを経てようやく行うことができます。遺産分割協議で遺産の分配方法が決まらなかった場合は、遺産分配調停・遺産分配審判へと移行しなければなりません。「手続きが難しい」「話し合いがまとまらない」ということになったら、専門家の手を借りるのもひとつの方法でしょう。
あわせて読みたい
この記事をシェアする
お部屋を探す
特集から記事を探す
記事カテゴリ
おすすめ記事
物件をご所有されている方、
お住まいをお探しの方
売りたい
土地活用・相続の相談がしたい
売るか貸すかお悩みの方はこちら