- 「地積規模の大きな宅地の評価」を利用すれば、相続税評価額を下げることが可能
- 「農地の納税猶予の特例」は、相続だけでなく贈与の際にも利用できる場合がある
- 農地の相続では相続財産の評価額を下げる控除などが複数あるため活用したい
その1:地積規模の大きな宅地の評価
「地積規模の大きな宅地の評価」は、課税時期が2018年1月1日以降のケースに適用される評価方法の一つです。この制度を適用すれば、相続財産の評価を下げることができます。課税時期が2017年12月31日以前の場合には、「広大地の評価」を活用することが可能です。ここでは、2021年11月時点で最新の「地積規模の大きな宅地の評価」について解説します。
「地積規模の大きな宅地の評価」の要件とは
「地積規模の大きな宅地の評価」を適用するには、3つの要件があります。
1つ目は一定の面積があるかどうかです。東京・大阪・名古屋を中心とした三大都市圏では500㎡以上の宅地、三大都市圏以外のエリアでは1,000㎡以上の宅地が要件となります。
2つ目は、宅地の地区区分です。路線価地域にある土地では、「普通商業・併用住宅地区」や「普通住宅地区」が適用対象となります。倍率地域にある農地については、「地積規模の大きな宅地」に該当するケースであれば対象です。
3つ目は、「市街化調整区域」「工業専用地域」「容積率400%以上の地域」に該当しないかどうかです。該当しなければ、「地積規模の大きな宅地の評価」を適用できる農地と言えます。
「地積規模の大きな宅地の評価」の計算方法
「地積規模の大きな宅地の評価」に関する計算は、路線価地域にある場合と倍率地域にある場合とで異なります。
土地が路線価地域にある場合
相続する農地が路線価地域にある場合の計算方法は以下の通りです。
評価額=
路線価×奥行価格補正率×
不整形地補正率などの各種画地補正率×
規模格差補正率×地積(㎡)
出典:国税庁 「No.4609 地積規模の大きな宅地の評価」
「規模格差補正率」は三大都市圏かそうでないかで数値が異なるため、国税庁のホームページで確認しましょう。
土地が倍率地域にある場合
相続する農地が倍率地域にある場合の計算では、下の「1」または「2」のいずれか価格が低いほうを適用します。
- 固定資産税評価額に倍率をかけた価額
- 標準的な間口距離や奥行距離がある土地とみなして、路線価地域にある土地の評価額計算にあてはめて算出した価額
出典:国税庁 「No.4609 地積規模の大きな宅地の評価」
いずれの場合も計算には専門的な知識を必要とするため、専門家に相談したほうが確実でしょう。
その2:農地の納税猶予の特例
農地の相続に利用できるもう一つの代表的な特例が、「農地の納税猶予の特例」です。どういった要件や注意点があるのかをチェックしておきましょう。
「農地の納税猶予の特例」の要件とは
「農地の納税猶予の特例」とはその名の通り、農地に対する納税の猶予を受けられる特例のことです。相続はもちろん、贈与の場合でも利用できます。この特例は早期の世代交代を促すために設けられた制度で、相続人や贈与を受けた人が継続して農業を続けることが前提となっています。
相続税の納税猶予に関する要件
相続税の納税猶予の特例を受けるには、下記のいずれかに該当する必要があります。
- 亡くなるまで農業をしていた
- 生前に農地を一括贈与した
- 亡くなる日まで営農困難時貸付や特定貸付をしていた
贈与税の納税猶予に関する要件
贈与税の納税猶予の特例の要件は以下の通りです。
- 農地を贈与した日まで3年以上継続して農業をしている
- 過去に相続時精算課税を適用した農地ではない
- 対象年に今回の農地以外の農地などの贈与をしていない
- 過去に農地等の贈与税の納税猶予の適用を受けられる一括贈与をしていない
このほかにも、受贈者の要件や相続人の要件などがあります。詳細は国税庁のホームページで確認しましょう。
「農地の納税猶予の特例」における税額とは?
相続税の場合では、「通常の方法で算出した相続税」と「農業投資価格をもとに算出した相続税」の差額分が猶予されます。相続税すべてが猶予されるわけではない点には注意が必要です。
贈与の場合は贈与税の全額が猶予され、贈与者または受贈者のどちらかが亡くなれば猶予されていた贈与税は免除されます。また、贈与者が亡くなった場合には、その農地を相続したとみなして相続税の納税猶予特例を受けることも可能です。
「農地の納税猶予の特例」で猶予を受ける際の注意点
相続税の場合でも贈与税の場合でも、3年ごとに納税猶予の継続届出書や農業委員会の証明書などの書類を税務署に提出しなければなりません。また、農業をやめた際には、猶予が取り消されます。その場合は、猶予されていた税金と利子税を含めて納付しなければならないのでご注意ください。
相続や贈与を受けたものの、農業ではなく家庭菜園程度のことしかしていない場合は、農地として認められない恐れがあります。ただし、作物の範囲に詳細な制限はありません。農地や採草放牧地、準農地に該当すれば問題ないため、植木であっても特例は適用されるようです。
農地には評価減になるポイントがたくさん!
農地の相続に際して利用できる2つの特例についてご紹介しました。このほかにも、「宅地造成費の控除」や「市街地周辺農地の評価減」、「生産緑地の評価減」など、評価減につながる要素はあります。こういった“評価減になるポイント”をうまく活用できれば、農地の相続税圧縮につながるでしょう。
また、すでに相続を済ませており、こういった評価減ポイントを活用できていない方の場合でも、相続税申告から5年以内であれば相続税の還付を受けられる可能性があります。農地の相続についてさらに詳しく知りたい方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
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