- 不動産オーナーの多くは、相続人が継続して不動産経営できるかどうかが不安
- 不動産管理や運用のプロに不動産経営を任せる不動産信託という方法がある
- 不動産信託を活用すれば、相続時のもめごとを回避したり節税につながったりすることもある
不動産オーナーの悩みとは?
まずは、不動産オーナーが抱える相続に関する悩みについて、ピックアップしました。どういった悩みを抱えがちなのか、具体的に見てみましょう。
子どもに不動産経営の経験がない……
親や親族が行っている不動産経営の全容を把握して、不動産経営の仕組みを学んでいる相続人であれば、スムーズな相続が行えます。しかし、一般的には、不動産経営を行っている本人のみが把握しているケースがほとんどでしょう。
そのため、「不動産経営とはどういうものか」という基本的なことを理解できていない相続人が多いのも事実です。不動産経営では、不動産の管理だけでなく入退去の手続き、利用者の募集や確定申告など、さまざまな手続きや管理を行わなければなりません。
まったく不動産経営に関わっていない子どもなどの相続人が、急に不動産経営を任されても、「何から手をつけたらよいのかわからない」と困惑してしまうでしょう。
遠方に住んでいるため不動産経営や管理ができるか不安……
相続人に不動産経営の知識があったとしても、相続した物件がある地域に住んでいるとは限りません。たとえば、不動産経営をしている物件は九州にあり、相続人は北海道に住んでいるとします。
先述したとおり、不動産経営ではさまざまな手続きが必要となるため、状況に応じて不動産経営をしている物件のチェックなどをしなければならないケースもあるでしょう。
その場合、交通費や時間がかかり、相続人がほかに仕事をしている場合は、かなり負担になることが考えられます。こういったことから、相続人が相続した不動産を継続して管理できるのか不安に思う不動産オーナーもいるはずです。
子どもや親戚同士がもめないか不安……
不動産経営を行っている不動産が多い場合でも少ない場合でも考えられることが、相続人同士のもめごとでしょう。多い場合は「誰がどれだけ不動産を引き継ぐのか」、少ない場合は「誰が引き継ぐのか」などで、もめる可能性があります。
また不動産によって収益状況が異なっていたり、相続人のなかに不動産経営の知識が豊富な方がいたりすると、もめる原因になりかねません。なぜなら、せっかく相続するのであれば、収益のよい物件や資産価値の高い物件がよいと誰しも思うからです。
また、まったく不動産経営の知識がない方にとっては、不動産経営の知識がある方が相続するほうがスムーズなのは理解できるものの、知識があるかないかだけで資産を多めに取得する可能性があることには納得がいかないでしょう。
不動産信託という選択肢
不動産オーナーが抱える悩みに対する解決策の一つとして、「不動産信託」がおすすめです。不動産信託とは、不動産を信頼できる第三者に託して、自分の考えに基づいた方法で不動産の管理や運用をしてもらう仕組みを言います。運用で得た収益は、配当として受け取ることが可能です。
不動産信託の仕組み
不動産オーナーは「委託者」と呼ばれ、専門家である信託会社に自己所有の土地や建物を預けて運用してもらう信託契約を締結します。この信託会社は「受託者」と呼ばれ、不動産オーナーと締結した不動産の管理や運用を実施します。
そして受益者は、受託者が運用によって得た利益を受け取る権利「信託受益権」を持ちます。この受益者とは、委託者である不動産オーナーもしくは、委託者が指定した家族もなることが可能です。
受託者は、信託法や信託業法などの法律にそって不動産管理を行い、監督官庁がチェックしているため、委託者は安心して財産を預けられます。とくに注目したい受託者の義務とは、「善管注意義務」「忠実義務」「分別管理義務」の3つです。
「善管注意義務」とは、取引や運用にあたり、一般的かつ客観的に要求される注意を払わなければならないという義務を指します。次に「忠実義務」とは、他人の財産管理や運用を任された者は、自分の利益ではなく受益者の利益のために行動しなければならないという義務です。
最後に「分別管理義務」とは、受託者は受託者名義の財産と信託財産を分別して管理しなければならないという義務です。また受託者には、「管理型信託会社」と「運用型信託会社」の二つのタイプがあります。
管理型信託会社と運用型信託会社の違い
「管理型信託会社」は、委託者の指示にしたがって管理・運用を行います。一方、「運用型信託会社」は、受託会社が自らの考えで管理や運用を行っていくというものです。いずれの場合も委託者は、受託者に信託報酬という管理や運用に伴う報酬を支払わなければなりません。
以上のように、不動産信託を活用すれば、不動産経営の知識がなくても、その道のプロが管理・運用してくれるため、安心して預けられるでしょう。
不動産信託のメリットと注意点
不動産信託を利用すれば、不動産経営のプロに管理や運用を任せられますが、そのほかにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、不動産信託のメリットや注意点についてご紹介します。
節税効果が期待できる
信託している物件であっても、委託者が所有している場合と同じように評価されます。そのため、信託会社が支払う固定資産税や借入金利などは、委託者の経費として確定申告することが可能です。
また不動産の売買を考えている場合には、印紙税を節税できるでしょう。たとえば、通常のケースで2億円の物件を売却したとします。2部書類作成するため、「10万円×2部の20万円」の印紙税が必要です。それが不動産信託での売却であれば、400円で済みます。
なぜなら、信託の場合は書類1通につき200円の印紙税と決められているからです。つまり「200円×2部」となり、大幅な節税ができるでしょう。
資産承継をスムーズに行える
法定相続では相続人が限定されており、数世代先まで受取人を指定することは不可能です。しかし不動産信託であれば、「子どもに相続させたあとに孫に引き継ぐ」などの数世代にわたる受益者の指定ができます。
また、不動産信託されている不動産に関しては、遺産分割協議が不要のため、ほかの相続人ともめる可能性が少なくなるでしょう。さらに、相続したあとも不動産信託を利用すれば、信託会社が管理や運用を行うため、不動産経営の知識がない相続人でも安心して相続できるはずです。
自分で運用するよりもコストがかかる
先ほど紹介したように、信託会社に不動産信託を依頼すると、信託報酬を支払わなければなりません。そのため、自分で管理や運用を行うよりもコストがかかるでしょう。
また、不動産管理のプロに任せているからといって、すべてうまくいくわけではありません。運用益が低下したり空室がずっと続いたりすることもあり得るでしょう。そういった場合には、配当金を受け取れない可能性があります。
必ず不動産信託できるといった保証はない
実は、不動産によっては信託を受けられない可能性があります。信託会社も利益を得られる確証がなければ、不動産の管理や運用を引き受けてくれません。そのため、対象となる不動産の立地や広さが条件を満たしていること、需要があることが前提条件となるでしょう。
また、信託期間中であっても、収益が大幅に低下し赤字が続くようなことがあれば、不動産を売却される可能性もあります。不動産信託の契約締結時には、そういった万一の際の動向についても確認しておきましょう。
不動産オーナーの悩みは尽きないものの対策はできる
不動産オーナーの悩みは多岐にわたりますが、相続など少し先の話であれば、備えることができます。相続人との話し合いを行ったり、不動産信託について学んだりするなど、一つずつ悩みの種を取り除いていきましょう。
不動産の継承に関して詳しく知りたい方は、ぜひ下記よりお気軽にお問い合わせください。
あわせて読みたい
この記事をシェアする
お部屋を探す
特集から記事を探す
記事カテゴリ
おすすめ記事
物件をご所有されている方、
お住まいをお探しの方
売りたい
土地活用・相続の相談がしたい
売るか貸すかお悩みの方はこちら