- 相続税対策に有効なのは、現金を評価額の低い不動産に変えること
- 生前にできる相続税対策には、不動産を購入し賃貸経営をするのがおすすめ
- 相続をしてから講じられる相続税対策もあるが、必ず適用できるとは限らない
不動産が相続税対策に有効な理由
財産を現金として保有しているよりも、不動産として保有しているほうが、相続税対策には有効です。それはいったいなぜか、理由について解説します。
不動産が相続税対策に有効とされる理由とは
不動産が有効な相続税対策になるとされている理由は、不動産のほうが現金よりも相続税を算出する際の評価額が低いからです。不動産は、以下の4つの方法で評価が算出されます。
時価 | 売買されている実際の価格。 実勢価格や市場価格とも表現される |
---|---|
公示価格 | 売買の目安価格。 時価とほぼ同額になる |
路線価 | 相続税や贈与税の 算出基準となる価格。 公示価格の80%程度になる |
固定資産税評価額 | 固定資産税の算出基準となる価格。 公示価格の70%程度になる |
相続財産の価値を計算する際、土地の場合は路線価や固定資産税評価額、建物の場合は固定資産税評価額を参考にします。これが時価の70%から80%ほどの評価額になるため、「時価とのキャップ」が生じるのです。
1億円の現金を相続すると、評価額はそのまま1億円となり、1億円に対する相続税が算出されることになります。それに対して、1億円相当の不動産であれば7,000万円から8,000万円ほどの評価額に相続税がかかることになります。これが、「不動産が相続税対策に有効」とされる主な理由です。
賃貸物件にすることでさらに相続税評価額が下がる
同じ不動産であっても、賃貸物件の経営はより相続税対策に効果的です。賃貸物件であれば、自分で思うように使用したり処分したりしにくくなるなど、活用の選択肢が限られるため、その分不動産の相続税評価額が低くなります。これを「借家権割合」といい、全国どこにおいても一律30%と定められています。
また、賃貸用として扱う土地は「貸家建付地」となり、土地の相続税評価額も建物と同様、割り引かれる決まりです。これを「借地権割合」といい、利用価値の高い土地は借地権割合が高くなるため、繁華街や駅に近いなど、エリアの条件によって借地権割合には差があります。
生前にできる相続対策
不動産での相続税対策は、基本的に現金を収益物件に組み替えることです。どんなパターンがあるのか、まずは、生前にできる相続税対策から見ていきましょう。
不動産を購入し、一軒家(一戸建て)の賃貸物件にする
不動産による相続税対策の一つ目の選択肢として、「賃貸」として貸し出す方法があります。狭い土地の場合は、一軒家(一戸建て)がおすすめです。一軒家なら30坪から40坪ほどの土地があれば賃貸経営をスタートすることが可能で、アパートやマンションに比べて売却や転用がしやすいというメリットもあります。
集合住宅の競争が激しいエリアであれば、マンションやアパートよりも一軒家が有利な場合もあるでしょう。ある程度の自己資金が必要になるため、貯金などに回している現金が多い方は検討してみてください。ただし、一軒家の賃貸物件はマンションやアパートなどの集合住宅とは異なり、空室になると収入がゼロになってしまうリスクがあります。その点には注意が必要です。
マンションやアパートを購入する
マンションの購入も、相続税対策となります。自己資金でまかないきれない場合は借入も視野に入れる必要がありますが、基本的には家賃収入から返済していく 収支プランを設計できるでしょう。マンションの一棟買いはもちろん、自己資金が少なくてもできるワンルームマンション投資でも同じ効果が得られます。
マンションを購入した場合は、相続税評価額は時価の1/3ほどに下げることができるでしょう。入居希望者の多い人気のマンションなら、時価と評価額の差が大きくなるため、節税効果もさらに高くなります。
相続時精算課税制度により贈与する
財産を不動産に組み替えたら、「相続時精算課税制度」を使って贈与することでも節税効果が得られます。60歳以上の父母や祖父母が20歳以上の推定相続人に財産を贈与した場合、限度額である2,500万円になるまで何度でも贈与税を控除できるというのが、相続時精算課税制度です。課税額は、贈与時の時価で換算されます。将来的に価値が高くなると見込まれる不動産の贈与には、節税効果の高い制度です。
相続時精算課税制度の特徴は、贈与したタイミングでは贈与税がかからないこと。相続する際にほかの相続財産と合算され、「相続税」として課税される仕組みです。基本的に相続税よりも贈与税の負担のほうが大きいため、相続時精算課税を使って生前贈与をすれば節税につながります。
最終的に相続税として課税される額は、贈与時の時価で計算されます。つまり、価値が上がることが見込まれる不動産を贈与すれば、大幅な節税も可能です。
相続してからでもできる対策とは
相続後にできる相続税対策について押さえていきましょう。
減価要因を見つけて評価額を引き下げる
土地の評価額は、減価要因によって下がることもあります。たとえば「不整形地である」「間口が狭い」「騒音が激しい」「高低差がある」「墓地の隣である」といった場合、土地の評価額が減額されることになるでしょう。
こうした減価要因が見つかれば土地の評価額が下がるため、相続税を抑えることにつながります。机上調査だけで終わらせず、不動産鑑定士や税理士などに依頼し、相続した土地に減額要因がないか確認しましょう。
土地を分筆する
土地の分筆も、相続が行われた後に取り組める節税対策です。土地の分筆とは、登記簿上ひとつの土地を複数の土地として登記することを指します。相続税法において、土地の評価単位は利用単位ごとと定められているため、遺産分割協議により土地を分筆し別の人が相続することが決まれば、「2つの土地」として評価することが可能です。分筆により、一人あたりの相続税課税額を減らすことができるでしょう。
分筆することで不整形な土地になるなどすれば、評価額が下がることにもなり、さらに相続税も少なくなります。ただし、実際の土地の利用状況と異なる分筆は税務署に認められないので、注意が必要です。
特例を利用する
相続税の特例措置のなかには、相続開始後に利用するかどうか検討できる制度もあります。たとえば、配偶者の税額の「軽減制度」です。これは、財産総額1億6千万円以下の相続の場合、配偶者が全財産を継承するのであれば相続税が課されないという仕組みです。ただし、この制度を利用した場合、二次相続時の課税額が大きくなり、子どもの負担となってしまう可能性もあります。
ほかにも、被相続人の自宅や個人事業に使われていた土地の評価額を最大80%減額する「小規模宅地等の特例」という制度もあります。配偶者が相続する場合は特別な要件なしに認められ、配偶者以外が相続する場合にはいくつかの要件を満たす必要があります。
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相続後よりも相続前のほうが対策の幅は広い
相続をした後に講じられる相続税対策にはいくつか選択肢がありますが、そのすべてが適用されるとは限りません。「いくつか検討してみたものの、条件を満たせず、手の打ちようがなくなってしまった……」というケースも起こり得るでしょう。そうならないよう、生前からしっかり相続税対策を講じておくことをおすすめします。
相続税対策は生前に行っておくのがベスト
現金よりも不動産を保有しているほうが、相続税対策に有効です。しかし、不動産経営を継続するための維持管理なども必要になり、場合によってはリスクとなることもあります。
相続税対策として不動産経営を検討している方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
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