- サブリース契約とは、転貸による管理方式のこと
- サブリースでも、家賃収入は完全に保証されるわけではない
- 「家賃の減額禁止期間」が守られずに減額されるトラブルもある
サブリース契約とは?
サブリースとは、転貸による賃貸管理方式のことです。 サブリース会社が建物オーナーと賃貸借契約を締結し、一棟全体を借り上げた上で、各入居者と転貸借契約を結びます。 これにより、オーナーは入居者との直接的なやり取りをせずに賃貸経営を行えます。
建物オーナーには、管理手数料相当額を差し引いた賃料がサブリース会社から家賃収入として支払われます。
サブリースの種類
サブリースには、パススルー型サブリースと家賃保証型サブリースの2種類が存在します。
- パススルー型サブリース
空室状況に応じて、サブリース会社からオーナーに支払われる賃料が変動する方式です。 入居率が低いと収益が下がるリスクがありますが、市場に応じた柔軟な賃料設定が可能です。 - 家賃保証型サブリース
空室の有無に関係なく、サブリース会社からオーナーへ一定の賃料が支払われる方式です。 毎月の収益が安定しやすい一方、契約期間中に家賃が減額されるリスクもあるため、契約内容を十分に確認する必要があります。
本記事では、家賃保証型サブリースを前提に、その仕組みや注意点を解説します。
賃貸借契約との違い
サブリースでは、建物オーナーとサブリース会社が締結する賃貸借契約のことをマスターリース契約(一括借り上げ契約)と呼びます。
マスターリース契約は基本的に通常の賃貸借契約と同様ですが、サブリース会社は借り主として借地借家法による保護を受ける立場となる点が特徴です。
通常の賃貸借契約との主な違いは、以下の3点です。
- サブリース会社は居住者ではない
一般的な賃貸借契約では借主が実際に居住しますが、マスターリース契約ではサブリース会社が借主となり、物件に住むわけではありません。 - 転貸(また貸し)が前提
通常の賃貸借契約では転貸が禁止されていることが多いですが、マスターリース契約ではサブリース会社による転貸が認められています。 - 賃料発生の免責期間がある
サブリース契約では、契約開始後すぐにオーナーへ賃料が支払われるわけではなく、一定期間(通常3〜6ヶ月程度)は免責期間として賃料が発生しないケースがあります。これは、サブリース会社が入居者を確保するための準備期間に相当します。
修繕費は原則として貸し主(建物オーナー)が負担する
サブリース契約でも、一般的な賃貸借契約と同様に修繕費は原則として貸し主(建物オーナー)が負担します。 具体的には、以下のような修繕費用がオーナー負担となります。
- 大規模修繕(外壁の補修、屋根・共用部分の修理 など)
- 寿命による設備の故障(給湯器・エアコン・配管設備 など)
- 経年劣化による内装の修繕(クロスの張り替え、床の補修 など)
ただし、例外として居住者の故意・過失による破損については、入居者の負担となります。 例えば、故意に壊した設備や過失による汚損・破損があった場合は、その修繕費用を請求できるケースもあります。
サブリース契約のメリット
この章では、サブリース契約のメリットについて解説します。
収入が安定している
サブリースの大きなメリットは、収入の安定性です。 通常の賃貸経営では、空室が発生するとその分の家賃収入が減少しますが、サブリースでは原則として空室の有無に関わらず一定の賃料が支払われます。 これにより、収益の見通しを立てやすく、ローン返済を計画通りに実行しやすいといえます。
管理の手間がほとんどかからない
サブリース契約では、管理の手間がほとんどかからない点もメリットです。
建物オーナーはサブリース会社と1本の賃貸借契約を締結するだけで済み、入居者が入れ代わる度に新たな賃貸借契約を結ぶ必要がありません。 さらに、入居者募集やクレーム対応などの管理業務もサブリース会社が担当するため、本業が忙しい方や遠方に住んでいるオーナーにとって大きなメリットとなります。
相続税の節税効果が最大化される
サブリース契約は、相続税の節税効果が最大化される点がメリットです。
相続税の評価額は、満室状態の方が低く算定されるため、空室が少ないほど節税効果が高まります。 サブリースでは一括借り上げのため、実際に空室があったとしても評価上は満室とみなされるケースが多く、結果的に相続税の負担を軽減できる可能性があります。
サブリース契約のデメリット
この章では、サブリース契約のデメリットについて解説します。
収益性が低い
サブリース契約の収益性は、他の管理方式に比べて低くなる傾向があります。
サブリース会社が差し引く管理手数料相当額は、家賃収入の10~20%程度が相場です。 管理委託やパススルー型サブリースの管理手数料の相場は家賃収入の3~5%程度であるため、ほかの管理方式よりも収益性は低くなります。
家賃は完全に保証されるわけではない
「家賃保証型サブリース」といっても、必ずしも家賃が一定のまま保証されるわけではありません。
空室が増えると、サブリース会社から賃料減額の要請が入ることがあり、貸し主側はそれを受け入れざるを得ないケースもあります。 さらに、法律上の立場ではサブリース会社は借り主とみなされ、最高裁判例でもサブリース会社の賃料減額請求権が認められています。
契約を解除しにくい
サブリース契約は一般的な賃貸借契約と同様に、借り主(サブリース会社)との契約を解除しにくい点がデメリットです。 サブリース会社側は比較的簡単に契約を解除できますが、貸し主(建物オーナー)からの契約解除は困難となっています。
貸し主から契約解除するには、正当事由(立ち退かせるために正当な理由)と立ち退き料の支払いが必要です。
サブリース契約のトラブル

この章では、サブリース契約で発生しやすいトラブルについて解説します。
サブリース会社が倒産する
サブリース契約では、契約期間中にサブリース会社が倒産するというトラブルが存在します。 倒産する前には、家賃の不払いが数ヶ月続くことが多く、建築に要した借入金を返済できなくなり、建物オーナーが自己破産に陥ってしまうこともあります。
家賃の減額禁止期間が守られずに減額される
サブリース契約では、家賃の減額禁止期間が守られずに減額されるトラブルもあります。
多くのマスターリース契約では、賃料減額の防止策として「契約から10年間は賃料を減額しない」といった特約を締結することも多いです。 このような特約は「不減特約」と呼ばれますが、不減特約は借地借家法で無効とされており、実はマスターリース契約に不減特約を盛り込んでも法的な効力はありません。
サブリース会社は不減特約に効力がないことを知っているため、不減特約を無視し、契約1年目から賃料減額請求を行ってくるケースもあります。
サブリース契約で信頼できる不動産会社の選び方
サブリース契約を検討する際は、管理実績が豊富で、会社の規模も相応に大きい信頼できる会社を選ぶことが重要です。
▼信頼できる不動産会社の選び方
- 実績豊富な会社を選ぶ
サブリース会社の実績が豊富であれば、適切な家賃設定ができるため、空室が発生しにくく、賃料の減額リスクも抑えられます。 過去の運用実績や管理戸数を確認し、長期間安定した管理を行っている会社を選ぶとよいでしょう。 - 会社の規模が大きいか確認する
規模が大きい不動産会社であれば、経営基盤が安定しており、倒産リスクが低いため、安心して契約を結ぶことができます。 サブリース会社の財務状況や経営の健全性を確認し、過去にトラブルを起こしていないかなども事前に調査することが大切です。
サブリース契約は長期にわたるため、信頼できる不動産会社を慎重に選ぶことが、安定した賃貸経営を実現する鍵となります。
まとめ
この記事では、サブリース契約について解説しました。
サブリース契約のメリットには、「収入が安定している」や「相続税の節税効果が期待できる」などがありました。 一方でデメリットは、「家賃が完全に保証されるわけではない」や「契約を解除しにくい」などが挙げられます。 また、サブリース契約に関連するトラブルとして、「サブリース会社の倒産」、「家賃の減額禁止期間が守られない」といったリスクがあります。
サブリース契約を検討する際は、信頼できる不動産会社を選ぶことが重要です。 契約内容をしっかり理解し、慎重に判断することで、安定した賃貸経営を実現しましょう。
サブリース契約についてのご相談は、下記よりお気軽にお問い合わせください。

不動産鑑定士
竹内 英二
不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。
⇒竹内 英二さんの記事一覧はこちら
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