- キャップレートとは、収益物件の価格を評価する際に用いる還元利回りのことである
- 一般的に、キャップレートはNOI(純収益)利回りと同義で使用されている
- 金利が上昇すれば、キャップレートも上昇する可能性がある
キャップレートとは?
キャップレート(Cap Rate)とは、「Capitalization Rate(資本化率)」の略語であり、一期間の純収益(NOI)から不動産価格を直接求めるために使用される利回りのことです。 Capitalizationは「投資」、Rateは「率」を意味することから、キャップレートは「投資利回り」と訳されることもあります。
キャップレートは一般的に、還元利回りや期待利回りと同じ意味で使われることが多く、収益物件(たとえば賃貸マンションやオフィスビルなど)の収益価格を求める際に重要な役割を果たします。
還元利回り・期待利回りとの違い
- 還元利回り
物件が実際に生み出す年間の純収益を、投資額(または物件価格)で割った利回りのこと - 期待利回り
投資家が将来的に得られると見込む純収益を、投資額で割った利回りのこと
どちらも投資判断や価格評価に用いられる指標であり、キャップレートと同様の意味合いで使われます。
キャップレートを使った収益価格の計算式
キャップレートを用いることで、収益物件の適正な価格を簡潔に算出することが可能です。
基本となる計算式は、以下のとおりです。
収益価格
= 純収益 ÷ 還元利回り
= 純収益 ÷ キャップレート
この計算式は、不動産が年間で生み出す純収益に対して、どれだけの利回りを期待するかを反映したものです。 収益価格は、不動産が生み出す純収益を還元利回りで割ったものであるため、純収益をキャップレートで割ったものも収益価格と言い換えることができます。
キャップレートと金利の関係とは?仕組みと求め方
キャップレートは、不動産投資における価格評価の基準として重要な役割を果たす指標ですが、その水準は金利と密接に関係しています。
キャップレートの概念的な求め方は、以下の通りです。
キャップレート
= 金利 + リスクプレミアム
この式から分かるように、キャップレートは主に2つの要素で構成されています。
- 金利
一般的には、10年国債利回りのような安全資産の利率を指します。 国債利回りは市場金利と連動するため、金利が低下すればキャップレートも低くなる傾向があります。 - リスクプレミアム
投資対象となる不動産のリスクを反映する数値です。 たとえば、立地が悪い、築年数が古い、空室リスクが高いなどの要素がある場合、リスクプレミアムは高くなります。
金利は景気や金融政策など、経済全体の動向によって変動するマクロ的な要因ですが、一方でリスクプレミアムは、立地条件や築年数、管理状況といった物件ごとの特性によって決まるミクロ的な要因です。 つまり、金利は経済状況に応じて上下する一方で、リスクプレミアムは経済動向とは無関係に、物件の条件によって変化します。
キャップレートはこうした二つの要素によって構成されるため、時期によって数値が変動しますが、変動の主な要因は金利の変化にあります。
実際、2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除して以降、金利は少しずつ上昇傾向にあります。 そのため、今後も金利が上昇を続ければ、キャップレートもそれに連動して上昇することが予想されます。
キャップレートと表面利回り・NOI利回りの違いとは?

不動産投資において収益価格を算出する際には、表面利回りやNOI利回りと呼ばれる利回りも存在します。
表面利回りとは?
表面利回りは、年間の家賃収入を物件価格(投資額)で割った利回りを指します。 運用コストなどを考慮しないため、実際の収益とは差がでるケースもあります。 計算式は以下の通りです。
収益価格
= 年間家賃収入 ÷ 表面利回り
あくまで物件の大まかな収益性を把握するための目安として使われますが、実際の運用における収益とは乖離がある点に注意が必要です。
NOI利回りとキャップレートの関係
一方、NOI利回りは年間の純収益(NOI:Net Operating Income)を投資額で割った利回りのことで、キャップレートと同義として扱われることが一般的です。 NOIとは、家賃収入から管理費や固定資産税、保険料、小修繕費、入居者募集などの運用コストを差し引いた利益を指します。
NOI利回りによる収益価格の計算式は、以下のようになります。
収益価格
= 年間純収益 ÷ NOI利回り
= 年間純収益 ÷ キャップレート
= 年間純収益 ÷ 還元利回り
このように、キャップレート・NOI利回り・還元利回りは、基本的に同じ意味で使われています。
表面利回りとの違いは「費用の考慮」にあり
表面利回りとNOI利回り(=キャップレート)の大きな違いは、費用(運用コスト)を考慮しているかどうかです。 表面利回りでは費用を無視しますが、NOI利回りでは以下のような運用コストを差し引いて純収益を算出します。
- 公租公課(固定資産税、都市計画税)
- 損害保険料(火災保険、地震保険)
- 管理委託料(管理会社に支払う費用)
- 小修繕費(クロスの張替え費用などの大規模修繕以外の修繕費)
- 入居者募集費用(仲介手数料や広告宣伝費)
NOIを算出する際には、借入金の元本返済額が含まれない点が大きな特徴です。 これは、NOIが「自己資金100%で不動産に投資した場合に得られる純粋な収益」を示す指標であり、金融機関からの借入や返済計画に左右されない客観的な数値だからです。
実際、借入金の返済額は、投資家ごとに異なるため、NOIには含めず、物件自体の収益性を正確に測るために、運用に直接かかる費用のみを差し引いて算出します。
このように、NOIは投資家の資金力や借入条件には影響されず、物件そのものが生み出す収益力を表すため、収益物件の評価において非常に重要な役割を果たします。
そして、NOIを基に投資額で割って算出されるキャップレートは、投資家の個別事情を排除した中立的な利回りといえるでしょう。
キャップレートは低い方がいい?不動産価格への影響
キャップレートは、不動産の価格に大きな影響を及ぼします。 賃貸物件の収益価格は「純収益をキャップレートで割ったもの」であることから、キャップレートが低いほど不動産価格は高くなり、逆にキャップレートが高いほど価格は低くなる傾向があります。
キャップレートは、投資リスクを織り込んだ数値です。 立地が良好で築浅などといったリスクの低い物件ほどキャップレートは低くなるため、一般的には「キャップレートが低い=安全性が高い優良物件」と評価されやすくなります。
しかし、キャップレートが低い物件が常に良いとは限りません。 特に借入金を利用して不動産投資を行う場合には注意が必要です。キャップレートは借入返済を含まない純粋な収益ベースで計算されるため、利回りが低すぎると借入金の返済に対応しきれなくなるリスクがあります。
このため、ローンを活用して不動産投資をする際には、物件のリスクを抑えつつ、ある程度のキャップレートが確保されていることが望ましいといえます。
キャップレートと不動産価格の推移
不動産価格の動向を理解するうえで、キャップレートの推移は重要な参考材料となります。
以下は、東京都城南地区におけるワンルームマンションの期待利回り(キャップレート)と、全国平均の地価の変動を示したデータです。

出典:
一般財団法人日本不動産研究所 「不動産投資家調査」
国土交通省 「地価公示」
このデータを見ると、不動産価格とキャップレートは反対方向に動く傾向があることがわかります。 キャプレートが下がると、純収益を割り戻して求める不動産価格は上昇し、逆にキャップレートが上昇すれば不動産価格は下がるという関係です。
不動産市場を読み解くうえで、キャップレートと地価の相関関係を把握しておくことは、投資タイミングや価格判断のヒントになります。
まとめ
以上、不動産投資における重要な指標「キャップレート」について解説してきました。
キャップレートとは、収益物件の価格を算出する際に用いられる利回りのことで、NOI利回り(純収益をベースとした利回り)と基本的に同じ意味で使われることが一般的です。 また、キャップレートは物件の投資リスクや金利環境を反映する数値であり、安全性の高い物件ほどキャップレートは低くなる傾向にあります。 このため、不動産投資では「キャップレートが低い=リスクが低い」と評価されるケースが多く、投資判断の際には非常に重要な要素となります。
今後、金利や市場動向に応じてキャップレートも変動していくため、その仕組みを理解しておくことで、より精度の高い不動産投資判断ができるようになります。
収益物件の選定や価格査定にキャップレートを活かしたいとお考えの方は、下記よりお気軽にご相談ください。

不動産鑑定士
竹内 英二
不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。
⇒竹内 英二さんの記事一覧はこちら
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