- 現行の住宅ローン控除は、2025年末までに入居した住宅が対象
- 2026年以降の制度内容は、2025年8月時点で未公表
- 制度は継続する可能性が高いが、内容縮小の可能性あり
住宅ローン控除は2025年で終了するの?
住宅ローン控除は、一定要件を満たすことで、住宅ローン年末残高の0.7%分を所得税や住民税から控除できる制度です。 例えば、住宅ローン年末残高が3,000万円であれば、年間で21万円の控除を受けられるため、住宅購入者にとって大きなメリットとなる税制優遇制度といえます。
ただし、住宅ローン控除には入居期限が設けられており、現行制度では2025年12月31日までに入居することが適用条件です。 つまり、この期限を過ぎて入居した場合、現行の住宅ローン控除は利用できません。
もともと住宅ローン控除は2021年末で終了予定でしたが、2022年の税制改正により2025年末まで延長されました。 そのため、今後の税制改正によっては再延長される可能性があります。
とはいえ、これまでの改正では借入限度額の縮小など制度内容の見直しも行われています。 したがって、2026年以降も現行制度がそのまま続くとは限りません。
現行の住宅ローン控除を確実に利用したい場合は、期限内にローン契約や入居ができるよう、できるだけ早めに準備を進めることが大切です。
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合、住宅ローン残債に応じて一定額を所得税・住民税から控除できる税制優遇制度です。
もとは住宅購入額の一部を減税する「住宅取得控除制度」でしたが、1978年に住宅ローン残高に応じて控除額を算出する「住宅ローン控除」として改められました。 それ以降、制度内容は適宜改正され、現行の住宅ローン制度へと至っています。
現行制度(2024~2025年度)のポイント
住宅ローン控除は直近では2022年と2024年に税制改正があり、現行制度は2024年改正後の内容です。 2024年度の主な変更ポイントは、以下の4つです。
- 借入上限額の縮小
- 子育て世帯・若者夫婦世帯の借入上限額縮小の見送り
- 新築住宅での省エネ基準の義務化
- 新築住宅における要件緩和措置の建築確認時期延長
現行の住宅ローン控除では、「年末時点の住宅ローン残高×0.7%」を、新築・買取再販住宅で13年間、既存住宅で10年間控除可能です。 ただし、控除対象となる借入残高には住宅性能や世帯条件に応じた上限があります。
新築/既存等 | 住宅の環境 性能等 |
借入限度額 (令和6・7年入居) |
---|---|---|
新築住宅・買取再販 | 長期優良住宅・低炭素住宅 | 子育て世帯・若者夫婦世帯:5,000万円 その他の世帯:4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 子育て世帯・若者夫婦世帯:4,500万円 その他の世帯:3,500万円 |
|
省エネ基準適合住宅 | 子育て世帯・若者夫婦世帯:4,000万円 その他の世帯:3,000万円 |
|
その他の住宅 | 0円 | |
既存住宅 | 長期優良住宅・低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 |
3,000万円 |
その他の住宅 | 2,000万円 |
出典:国土交通省 「住宅ローン減税」
2024年の改正では、住宅性能ごとの借入上限額の引き下げが行われました。 例えば、新築長期優良住宅は、以前5,000万円だった上限が、4,500万円に引き下げられています。
ただし、子育て世帯・若者夫婦世帯については、上限額の引き下げが見送られています。
また、新築住宅では「その他の住宅」は省エネ基準に満たさない場合、控除対象外となりました。
ただし、2023年度中に建築確認を受けた住宅や、2024年6月30日までに工事が完了する住宅は例外として適用可能です。
さらに、住宅ローン控除を受けるには床面積50㎡以上が条件です。 ただし、合計所得1,000万円以下の世帯が新築を購入する場合は、床面積40㎡以上でも控除対象となります。 この緩和措置は当初2023年末まででしたが、改正により2024年末まで延長されています。
これまでの住宅ローン控除【傾向】
今後の住宅ローン控除の改正を予測するうえでは、これまでの改正の傾向を把握しておくことが大切です。
主な傾向は、以下の通りです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
経済情勢が悪いときは控除期間や金額が拡充される傾向
そもそも住宅ローン控除は、住宅取得の促進や、内需拡大を目的としています。 そのため、経済状況が悪化すると、住宅取得を支援するために控除期間や金額の拡充が行われる傾向があります。
たとえば、バブル崩壊後の景気対策として1999年の改正では、控除期間が6年から15年に延長され、借入限度額も3,000万円から5,000万円に大幅拡充されました。 また、2009年にはリーマンショック後の経済対策として、借入限度額や控除率の上乗せ措置などが行われています。
省エネ住宅や長期優良住宅が優遇される傾向
2022年の税制改正により、住宅ローン控除は住宅性能によって借入上限額が異なるようになりました。 さらに、2024年の改正では、新築で省エネ基準に適合しない住宅は控除対象外となっています。
これは、地球温暖化をはじめとする環境問題への対策強化が背景にあります。 2050年カーボンニュートラルの実現に向けた国の環境対策強化によるもので、住宅分野でも省エネの推進が進められています。 例えば、2025年4月からすべての新築住宅で省エネ基準適合が義務化され、2030年にはZEH水準まで基準が引き上げられる予定です。
そのため、住宅ローン控除でも、省エネ性能の高い住宅ほど優遇を受けやすい傾向があります。
低金利による逆ザヤを是正するための修正が行われた
日本では、2020年前半まで超低金利政策が続き、住宅ローンの金利が1%を下回ることもありました。 このため、控除額が住宅ローンの利息支払い額を上回る「逆ザヤ」が発生するケースがありました。
特に2021年までの控除率1%の住宅ローンでは、0.5%の変動金利で借入した場合、控除額が利息を上回ることが問題視されていました。 そこで、2022年の税制改正により控除率は0.7%に引き下げられ、借入上限額も調整されるなど、逆ザヤ是正の修正が行われています。
2026年以降の住宅ローン控除はどうなる?

これから住宅ローンの利用を検討している方にとって、2026年以降の住宅ローン控除の動向は気になるところです。
ここでは、現時点での情報や予測を整理して解説します。
2025年8月時点では公表されていない
2025年8月時点では、2026年以降の住宅ローン控除に関する公式な発表はありません。
例年通りであれば、2025年末に公表される「令和8年度税制改正大綱」で明らかになると予測されるため、今後の動向を注視することが重要です。
今回も延長される可能性は高い
現時点では未確定ですが、住宅ローン控除制度自体は50年以上続いており、2025年度で終了する可能性は低いと考えられます。 実際、現行制度の適用期限も2021年末から延長されており、国としても住宅市場の安定を重視していることがうかがえます。
ただし、注意すべきは「延長=現行のまま」ではない点です。
これまでの改正では控除率や借入限度額の縮小、省エネ基準の強化など制度内容の見直しが繰り返されてきました。したがって、2026年以降も制度は存続しても優遇幅が縮小される可能性は十分あるといえます。
住宅に関する法改正は住宅需要に大きく影響します。
たとえば、2025年4月から導入された新築住宅の省エネ基準適合義務化では、国土交通省の統計によると3月の着工数は89,802戸(前年比+39.6%)と急増した一方、4月は前年比-26.6%、5月は-34.4%と大幅に減少しました。
もし住宅ローン控除が2025年末で終了すれば、駆け込み需要の反動で2026年以降の住宅需要が大幅に減少する可能性があります。 住宅市場はGDPの約3%を占めるため、国としても需要の急減は避けたいはずです。
ただし、延長されたとしても控除額の縮小や適用条件の変更が行われる可能性はあります。 そのため、これから家の売却を検討しているなら、現行の住宅ローン控除が適用できるうちに売却を進めることをおすすめします。
まとめ
2025年末までが適用期限となっている住宅ローン控除について解説しました。
現行制度では2025年末までが入居の適用期限ですが、2025年8月時点では2026年以降の制度は公表されていません。 しかし、50年以上続いてきた制度であることから、控除自体は継続される可能性が高いと考えられます。
一方で、控除額や優遇条件が縮小される可能性もあります。 売却を検討している場合は、現行の住宅ローン控除が適用できるうちに売却を進めることで、有利に進められる可能性があります。 年内での売却も選択肢の一つとして検討するとよいでしょう。

宅建士・2級FP技能士(AFP)・相続管理士
逆瀬川 勇造
大学卒業後、地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より不動産会社に入社。不動産会社では住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。2018年より独立し、2020年合同会社7pocketsを設立。
金融や不動産分野におけるコンテンツにおいて、現場での経験を活かし、読者の方が悩みやすいポイントを分かりやすく解説することを心がけている。
⇒逆瀬川 勇造さんの記事一覧はこちら
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