日本の住宅政策の大きな方針を示すものとして、住生活基本計画があります。 住生活基本計画は、国民だけでなく自治体に向けても示される重要な指針であり、今後、自治体が策定する条例や規制にも影響を与える可能性があります。 場合によっては、建築主に新たな制限が加わる懸念もあるため、土地活用をする方は住生活基本計画が示す方針を知っておくことが望ましいです。 では、住生活基本計画では、今後の日本において、どのような住宅の普及を誘導しようとしているのでしょうか。 この記事では、「住生活基本計画と土地活用」について解説します。
- 住生活基本計画には、今後の住宅政策の方向性を決める基本方針が示されている
- 長期優良住宅などの質の高い住宅の価値がますます高まる方向性にある
- 建物を建てるには、規格が適切かを把握することが望ましい
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住生活基本計画とは
住生活基本計画とは、住生活基本法に基づき国が定める住宅政策の基本方針を示したものです。
住生活基本計画は、概ね5年ごとに見直されており、2026年3月27日に新たな住生活基本計画が閣議決定されました。
新たな住生活基本計画は、2026年から2035年までの10年間の住宅計画を示すものです。
戦後の住宅政策は、住宅不足を解消するために「量の確保」に重点が置かれていましたが、近年は人口減少などに伴い「質の向上」に重点が移りつつあります。
今後の日本の住宅は、人口減少や少子高齢化、災害の激甚化、脱炭素社会への対応、空き家の増加などを背景に長持ちする「質の高い住宅」への転換が求められています。
住生活基本計画は、都道府県や市区町村が定める施策の基本的な方針となるため、今後新築される住宅は、住生活基本計画の示す方向性に沿って整備が進められていく可能性があります。
住生活基本計画によって何が変わるのか
この章では、住生活基本計画によって今後住宅がどのような方向に誘導されるのかについて解説します。
高品質な建物性能
住生活基本計画では、耐震性や省エネ性能、バリアフリー性能などの住宅性能の質の向上が求められています。
長期優良住宅や高い省エネ性能を有する住宅などの質の高い住宅に対しては、引き続き住宅ローン控除などの優遇政策の実施が継続していくと読み取れます。
また、高い性能と品質が担保された住宅を消費者が選択できる市場環境の整備を進めていくことも住宅性能を向上させる政策の一つです。
さらに、住生活基本計画では住宅性能表示制度の普及にも言及しており、今後中古住宅市場においては、性能が可視化された質の高い住宅の方が売却しやすくなる傾向が強まると予想されます。
最低住戸面積
住生活基本計画では、住宅の面積規模についても、40平米程度を上回る住宅が適正な水準であるとされています。
理由としては、2050 年に向けて増加が見込まれる単身世帯が、都市居住においてゆとりのある住生活を送れる広さであることや、2~3人世帯が生活できる規模である点が考慮されています。
従来、単身世帯の最低居住面積水準は25平米以上とされていたため、40平米程度を上回る住宅というのは、求められる水準の規模が拡大傾向にあるといえます。
ただし、40平米台の住宅のストック数に関しては、とくに目標とする具体的な成果指標が定められていないため、現時点ではあくまで理想的な方向性を掲げているに過ぎない段階といえます。
建てるべき場所
住生活基本計画の特徴として、建物を建てる場所についても言及されている点が挙げられます。
人口減少や激甚災害の増加を背景に、今後建物を建てるべき場所を適切に誘導していくため、2つの方針を示しています。
1つ目は、郊外型の大規模なニュータウン開発の抑制です。
郊外型の新市街地開発については、生活・交通利便性を備えた良好な居住環境が見込まれるエリアに限定して進めていく方針が示されています。
つまり、今後は従来のようなニュータウン開発などの大規模な街づくりは行われにくくなると考えられます。
2つ目は、居住誘導地区の推進です。
現在、都市部の自治体は、持続可能な都市構造を目指すために立地適正化計画と呼ばれる計画を策定しています。
立地適正化計画の中では、災害の危険性の高いエリアを示しつつ、安全に暮らせる地域へ居住を誘導する仕組みが導入されている点が特徴です。
居住地の誘導が進むことで、今後は居住に適した地域の土地価値が上昇し、反対に居住に適さない地域の土地価値は下落していく可能性があります。
そのため、たとえばハザードマップで土砂災害などの可能性が指定されているような土地では、建物を建てないという判断も重要になってきます。
建物を建築するにあたっての3つの注意点

この章では、建物を建築するにあたっての注意点について解説します。
この土地に建てて良いかを見極める
住生活基本計画を踏まえると、土地活用をする上でまずその土地に建物を建てて良いかを見極めることが重要となっていきます。
従来、土地活用をするにあたっては、周辺に賃貸ニーズがあるか否かを見極めることが必要なポイントでした。 しかし今後は、土地が立地適正化計画における居住誘導区域内に含まれているかどうかを確認する必要があります。
もし対象の土地が居住誘導区域外にあり、かつ土砂災害警戒区域など、何らかの災害被害のリスクがある場所であれば、建物の建築を見送るという判断も選択肢の一つです。
今後は、自然災害リスクの高い土地では、周辺の人口が減っていく可能性があるため、長期的に見ると賃貸経営に不利になる可能性があります。
つまり、今後の土地活用では、賃貸需要だけでなく、「自然災害リスクが低い土地であるか否か」という観点もあわせて見極めることが望ましいです。
適切な建物規格であるかを見極める
住生活基本計画では、住宅の質の向上を高めることが重要な方針として示されているため、適切な規格の建物を建てることが求められます。
また、住宅の質だけでなく、どのような入居者をターゲットにするかも重要となります。
住生活基本計画では外国人の受け入れ拡大にも言及しており、外国人の入居に対応した賃貸住宅は今後ますます求められる可能性があります。
そのため、外国人居住者が増えている地域では、外国人をターゲットとした賃貸住宅を検討することも、有効な選択肢の一つといえるでしょう。
将来の相続に対応しやすいかを見極める
住生活基本計画は、あくまでも社会全体の住宅政策の方向性を示すものですが、個人が土地活用を行う際には、相続といった個別事情も考慮する必要があります。
たとえば、将来的に価値の低い空き家となり、誰も相続したがらない物件になる可能性がある場合には、土地を売却してほかの不動産に買い替えるといった選択もあります。
また、相続人が2人いる場合には、無理に大きな建物を1つ建てるのではなく、2棟のアパートを建てて分割しやすい形にするなど、相続しやすさを意識した設計も有効な選択肢です。
まとめ
以上、住生活基本計画と土地活用の関係について解説してきました。
住生活基本計画は、これからの日本の住宅の目指すべき方向性が示されています。
これから建てられる住宅には、高品質な建物性能だけでなく、最低住戸面積の拡大や建てる場所まで求められる可能性があります。
そのため、建物を建築するにあたっては、立地や建物の企画、相続なども考慮したうえで建てていくことが重要になります。
今後は、住生活基本計画の影響により、土地オーナーに求められる検討事項も増えていくと考えられるため、建築前には専門家に相談し、条件を整理しておくことが重要です。
住生活基本計画を踏まえた土地活用についてお悩みの方は、下記よりお気軽にご相談ください。
資産3億円以上の経営者様へ
不動産鑑定士
竹内 英二
不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。
⇒竹内 英二さんの記事一覧はこちら
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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容には執筆者の解釈や見解が含まれる場合があり、正確性や完全性を保証するものではありません。
具体的な判断や行動にあたっては、必要に応じて専門家へご相談ください。
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