- 首都圏での初期費用の相場は、家賃の約5ヶ月分
- 契約書をしっかり読み、敷金礼金ゼロの場合は、その理由を把握する
- 入居時には、すでにあった室内の損耗・損傷はチェックし、証拠の写真も撮る
初めて一人暮らしをする際、わからないことが次々に出てきて大変ですよね。物件を探す際に必ず目にする「敷金」「礼金」にはそれぞれ意味があります。これから部屋探しを始めるのであれば、敷金・礼金がどんなものなのか事前に知っておく必要があるでしょう。よく聞く「敷金礼金ゼロ物件」についてもご紹介するので、参考にしてみてくださいね。
敷金礼金の違いとは
敷金礼金は、賃貸の部屋を契約するときに発生する初期費用に含まれます。ここでは、敷金と礼金の違いをご説明します。
敷金とは?
契約期間中に万が一、滞納があった場合の家賃債務や、部屋を損傷させた場合の修理費の担保として、先に預けておくお金のことです。契約が終了して部屋を退去する際、敷金の額から「家賃の滞納分や借主に責任のある損傷の修理費など(賃貸借期間に生じた借主の金銭債務の額)」を差し引いた金額が返ってきます。相場は家賃1ヶ月分ほどです。
民法改正による敷金に関する見直し
2020年の民法改正により、敷金について見直しが行われました。以前は、敷金は退去時の部屋の修繕に充てられるというイメージがあったものの、具体的に賃貸人、賃借人が何をどのくらい負担するのかという明記がされていませんでした。ときにはそれが退去時のトラブルの原因となり、敷金をめぐるトラブルは年々増加傾向にありました。そのようなトラブルを解消するために、民法改正では細かいガイドラインが設定されています。
国土交通省が発行した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、改正後は、通常の使用によって生じた損傷においては、賃借人は原状回復義務を負わないという明記がされました。通常の使用というのは、たとえば家具の設置による床・カーペットのへこみや設置跡、テレビ・冷蔵庫などの電気ヤケ、地震(自然災害)で破損したガラスなどを指します。逆に、ペット飼育による汚れやニオイ、たばこのヤニ・ニオイなどによる損傷は、賃借人の責任となるため、退去時は敷金から修繕費を引いた額が返金されることになります。
改正民法の適用開始日は?
2020年4月に施行された「改正民法」(第622条の2)および改正民法が適用となるのは、原則として「施行日(2020年4月1日)より後に締結された賃貸借契約」となります。それ以前の契約においては、改正前の民法が適用されると定められています。
礼金とは?
部屋を所有し、貸してくれる大家さんにお礼の意味を込めて払うお金で、家賃1ヶ月分が目安です。敷金とは違い、退去時に返金されることはありません。昔は大家さんに対して貸してくれることへの謝礼の意味で支払われており、礼金を払うのは当たり前でした。しかし最近では、礼金としての意味合いは弱まり、礼金ゼロの物件も多く見受けられます。なぜ礼金ゼロの物件が増えてきているのか、その理由は後ほど詳しくご説明します。
地域によって敷金・礼金の相場は異なる
敷金・礼金の相場は、地域によって異なります。ここでは、主に東京やその周辺の「首都圏エリア」と、それ以外の「地方」に分けて解説します。最近は賃貸物件の在り方も多様化していて、すべての物件に当てはめられるものではありませんが、参考までにご覧ください。
首都圏の場合
とくに東京は初期費用が高額になる傾向があります。それぞれ、敷金・礼金の相場は家賃1ヶ月分で、場合によっては敷金2ヶ月以上の物件もあります。引越し代だけではなく敷金・礼金、前払い分の家賃2ヶ月分などを合わせると、初期費用として家賃の5ヶ月~6ヶ月分ほどのお金を払う必要があるケースも。たとえば、家賃8万円の部屋なら、契約時にかかる初期費用は、40万円前後かかる計算に。これはあくまで相場であり、敷金・礼金の有無や、不動産会社に支払う仲介手数料によって異なります。さらに、保証会社を利用する場合は、家賃の0.5ヶ月分ほどの料金がプラスされます。
地方の場合
地方の物件は、首都圏と比べると家賃相場が低いので、敷金・礼金があったとしても比較的初期費用を抑えられる傾向にあります。
ちなみに、関西では「保証金」という名目で家賃6ヶ月分ほどの費用がかかることも。これは敷金とほぼ同じ内容のものです。礼金についても、関西では敷引として家賃の3ヶ月分ほどを払うケースが多くなっています。関東から関西へ引っ越す予定の方は、地域によってこのような違いがあることを念頭に置きましょう。
ペット可能物件の場合
ペット可の物件の場合、飼育によるキズやニオイなどの損傷が予想されるため、地域に限らず敷金2ヶ月分を払うケースもあります。
物件によっては敷金礼金がゼロ
民法改正を受けて、敷金ゼロの物件が増加傾向にあります。現在では、物件によっては敷金・礼金がゼロの場合もめずらしくありません。しかし、初期費用がかからないというわけではありません。とくに「敷金ゼロ」には注意しなければならないポイントがあります。ここからは、敷金・礼金ゼロの物件で気にしておきたい注意点やデメリットについてご説明します。
敷金ゼロの代わりに「クリーニング代」としての請求も
「敷金」という名目の請求がない代わりに、原状回復費用に充てるお金として「クリーニング代」という名目で請求されることがあります。
クリーニング代の目安は、1㎡あたり1,000円ほどです。たとえば、30㎡の部屋であれば、3万円程度のクリーニング代が請求されることに。さらにエアコンがある場合には、一台およそ7,000~8,000円ほどのクリーニング代がかかります。そのため、クリーニング代として結果的に「敷金1ヶ月程度のお金はかかる」と思っておいたほうがよいでしょう。
クリーニング代をめぐるトラブルと対処
ここでクリーニング代をめぐるトラブルに発展しやすい「定額クリーニング代」についてご説明します。これは「定額」とはいうものの、入居前に支払うか退去時に支払うかは物件によって異なります。金額に含まれるクリーニングの内容も物件によって違うので、退去時に想定以上の金額を請求されることがあり、トラブルにつながってしまうことがあります。
そのようなトラブルを避けるためにも、入居前に契約書をしっかり読んで、何がクリーニング代に含まれて、何が含まれないのかを把握しておくことが大切です。また、不明な部分があれば、契約前に確認するようにしましょう。
修繕費用をめぐるトラブル
退去の際の修繕費用をめぐるトラブルは、退去の際に起きやすいトラブルの代表の一つです。多くの場合、その原因は室内のキズや汚れがいつ発生したのか、消耗なのか損傷であるのかがはっきりしないことにあります。入居時に取ったメモや写真などの証拠がないと、発生の時期などの事実関係が証明されません。そのため賃借人の責任か、そうでないかの判断がしにくく、退去時の敷金を返金する際のトラブルを引き起こしやすくなります。
トラブルを防止するために
ここからは、先述した退去時の修繕費用をめぐる問題を起こさないための事前対策について見ていきましょう。
契約内容をしっかり把握する
まず、入居時に退去時の原状回復についてなどの賃貸借契約書の内容をよく読んで、契約事項をしっかりと確認することが大切です。契約書をよく読まなかったことが原因で、後から原状回復の内容をめぐってトラブルになる事例は多くあります。基本的に、契約書は貸主側で作成するのが通常ですが、貸主側は契約の内容を理解してもらうことに努め、借主側は自分の希望を明確にしたうえで、契約の内容を十分に理解して契約を締結することが重要です。
入居前にキズや汚れを確認する
賃貸人・賃借人の両者が立ち会って、キズや汚れについてチェックリストを作成するようにしましょう。さらに写真を撮って、その物件の入居時の状態を確認し、証拠を残しておくことも大切です。このような対策をすることで、当該損耗・損傷が入居中に発生したものなのか、そうでないのかを明らかにすることができます。それが結果的に、損耗・損傷の発生時期や敷金の返金についてのトラブルを回避することにつながります。
このように、敷金ゼロ物件には、知っておかなければならない落とし穴があります。敷金がないのには理由があることを念頭に置いたうえで、契約前には契約書をしっかり読み、入居時にキズや汚れなどがある場合は、記録しておくといった対策をしましょう。
なぜ礼金ゼロがあるの?
千葉や埼玉などの東京のベッドタウンでは、通学や通勤に時間がかかったり、乗り換えをしたりしなくてはいけないことが多く、都内に比べると借り手が見つかりにくいという原状があります。そのため、敷金・礼金を省いて少しでも部屋を借りてもらいやすくする狙いがあるのです。
実際敷金・礼金ゼロだとデメリットはあるの?
今でこそ増えてきている敷金礼金ゼロ物件ですが、以前までは敷金・礼金を支払うのは当たり前でした。その名残もあって、中年の方や高齢の方は、敷金・礼金を払ったほうが安心と考えている方も少なくありません。しかし、先ほど挙げた敷金トラブルやクリーニング代などの注意点を理解して納得できているのなら、敷金礼金ゼロの物件だからといってデメリットがあるというわけではありません。
一つデメリットを挙げるとすれば、敷金礼金ゼロを条件に部屋探しをすると、どうしても選択肢が狭まってしまうということです。とくに住みたい街として人気のあるエリアでは、借り手不足の心配をする必要がないため、敷金礼金ゼロの物件は少ない傾向にあります。
敷金・礼金の支払いに関して
敷金・礼金をいつまでに準備するのか、いつまでに払うのか気になっている方もいらっしゃるでしょう。ここでは、敷金礼金の支払い時期についてご説明します。
敷金・礼金はいつ支払うの?
敷金・礼金は、入居前の賃貸契約時に不動産会社を通じて支払うのが一般的です。賃貸契約にかかる初期費用は負担が大きく、まとまった貯金がない方にとって不安は大きいところですが、多くの不動産会社は一括での支払いをお願いしているところが多いため、引越しを考える際は、ある程度まとまった費用の捻出も念頭に置きましょう。
敷金はいつ返還されるの?
礼金の返金はありませんが、敷金は契約中に家賃の滞納や、賃借人の責任が課される損耗・損傷がなかった場合に、返金されることになっています。
敷金の返還請求は契約上、別の時期を定めていない場合は、建物の明け渡しを行った後でなければできないとされています。つまり、敷金の返金はいつでも請求できるということではなく、建物を明け渡してはじめて賃借人は敷金返還を賃借人に請求できることになります。
初期費用を抑えるポイント
部屋を借りたい人が集中する1月~3月はハイシーズンと呼ばれ、敷金・礼金がかかる物件が増えます。逆に人が集まりにくい夏などのローシーズンは、敷金・礼金がかからない“ゼロゼロ物件”になっていることもあります。少しでも費用を抑えた引越しを望んでいる方は、部屋探しの時期を少しずらしてみるのもおすすめです。
敷金・礼金の初期費用が抑えられたら、引越しにおける金銭的なハードルも下がります。そろそろ新しい部屋に住んでみたいと考えている方や急な引越しで費用が足りず初期費用を抑えたい方は、敷金・礼金がかからない物件であればその他の初期費用(前家賃や仲介手数料、火災保険料など)だけで済むので、負担はぐっと軽くなるでしょう。
安い理由をしっかり把握したうえで納得のいく引っ越しを
この記事では、賃貸契約時に発生する敷金・礼金についてご説明しました。敷金礼金ゼロ物件が存在する理由や、そのメリット・デメリットなどについてしっかり理解したうえで、よい物件を見つけてトラブルのない賃貸契約を目指しましょう。
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