- 特優賃はお得なファミリー向け物件だが、入居条件は一般的な賃貸物件より厳しい
- 「補助には支給期限がある」「古い物件が少なくない」といったデメリットも
- 申し込み条件は地域によって異なるため、詳細は自治体に確認すると安心
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毎月の出費において、家賃が占める割合は少なくありません。また、「これから賃貸物件へ入居する(引越す)」という場合も、敷金、礼金、仲介手数料といった初期費用が重くのしかかってきます。これらの費用をできるだけ軽減したいと考えている方も多いでしょう。
そのような方は、「特優賃(とくゆうちん)」と呼ばれる選択肢を検討してみてはいかがでしょうか?この記事では、特優賃の特徴やメリット・デメリット、事業の仕組みや申し込みの流れなどについて、幅広く解説します。
特優賃(特定優良賃貸住宅)とは
特優賃(とくゆうちん)とは、どのような住居なのでしょうか。特優賃と一般的な賃貸住宅には明確な違いがあります。まずは、以下の3点を押さえておきましょう。
特優賃の定義
「特定優良賃貸住宅(特優賃)」は、公的な補助を受けて少ない金銭負担で借りられる賃貸住宅です。「公的賃貸住宅制度」にもとづいて運営されており、特優賃の入居者は家賃の一部を補助でまかなうことができます。補助が受けられるのは、土地の所有者が国・自治体からの補助や住宅金融公庫などの資金を利用して住宅を建てているためです。
特優賃は、基本的に「家族向け」です。公的賃貸住宅制度の根拠となっている「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」は、ファミリー層の家賃負担軽減を目的としたもの。この法律が施行された2000年以降、特優賃は「メリットの多い住宅」として注目されるようになりました。
特優賃の事業システム
上述したとおり、特優賃はその土地の所有者が国や自治体から資金援助(補助)を受けて建てた賃貸物件です。この補助には、国から支給される「国家補助」や県・市町村から支給される「家賃補助」が含まれます。この資金によって、物件の所有者にもメリットが生じる仕組みとなっているのです。
特優賃は「国や自治体から補助を受ける」という点で一般的な賃貸物件とは明確に違うものの、その他の点で明確な違いはあまりありません。認定を受けた不動産会社が仲介となって入居者を募集する点や、不動産会社と賃貸契約を結ぶ点などは、通常の賃貸と同様です。
特優賃を選ぶメリット
特優賃と一般的な賃貸物件は、メリットにおいても違いが見られます。特優賃を利用することで得られる主なメリットには、以下のものがあります。
家賃が安い
入居者にとって、特優賃を選ぶ最大のメリットは家賃が安いという点です。特優賃を利用すると家賃の一部に補助が適用されるため、その分だけ入居者の負担は軽減されます。現在一般的な賃貸物件に住んでいる場合は、同額の家賃で今より広い物件に住むことができる可能性が高くなるでしょう。
初期費用が抑えられる
賃貸物件を借りる場合、敷金や礼金、仲介手数料などの初期費用として数十万円もの出費が発生するケースがあります。一方の特優賃では、一部の例外を除いて礼金、仲介手数料、更新料といった費用が発生しません(駐車場契約では発生することがあります)。家賃だけでなく、入居時の金銭的負担もまた大幅に軽減できるのです。
ゆったりとしたつくりになっている
国や自治体の補助を受けて建設されている特優賃は、一般的な同規模の物件と比べて室内が広いつくりになっています。入居者からすれば、室内での生活にゆとりを持てるという点もまた大きな魅力となるでしょう。広いというのは、家族が増えた場合や、子どもが成長した際にもメリットとなります。
周囲に同じようなファミリー世帯が多い
特優賃は基本的にファミリー層向けの物件であることから、同じ建物には同じような家族構成の世帯が住んでいます。たとえば子どもがいる場合、子どもが同世代の友人を作ったり、その親同士で交流が生まれたりすることも期待できるでしょう。「良好な近所付き合い」がしやすい点も、特優賃のメリットと言えそうです。
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「UR賃貸」や「公営住宅」とは何がどう違う?
一般的な賃貸物件よりお得に暮らせる賃貸物件は、特定優良賃貸住宅(特優賃)だけではありません。UR賃貸住宅や公社住宅、公営住宅などもまた、入居者の費用負担に配慮された住居です。
続いては、UR賃貸住宅、公社住宅、公営住宅と特優賃(とくゆうちん)の違いを見ていきましょう。
「UR賃貸住宅」と「特優賃」の違いや共通点
UR賃貸住宅もまた、通常の賃貸物件と比べて家賃や初期費用などの負担が少ない住居です。UR賃貸住宅は2004年に設立された「UR都市機構」によって運営されている賃貸住宅で、比較的新しい仕組みと言えます。
そもそもUR都市機構は、市街地の整備やその周辺における賃貸住宅の安定供給を目的に設立された経緯があります。そのため、賃貸経営においては必ずしも利益を上げることだけを目的とはしていません。UR賃貸住宅が家賃の負担を抑えているのは、「多くの方に入居してもらい、その地域を活性化してもらいたい」という狙いがあるからです。
一方、特優賃はあくまでも「入居者の家賃負担軽減」を目的としているため、そもそもの目的が異なります。また、UR賃貸住宅がUR都市機構という行政法人によって運営されているのに対し、特優賃は指定を受けた民間の不動産会社などがオーナーとなっているケースが多いというも明確な違いです。
「公社住宅」と「特優賃」の違いや共通点
公社住宅は、各自治体の外郭団体である住宅供給公社が運営している賃貸住宅です。この住宅供給公社の名称は都道府県や自治体によって異なり、たとえば東京都では「東京都住宅供給公社(JKK東京)」と呼ばれています。特優賃と公社住宅を比較してみると、こちらも運営団体(オーナー)が異なるという点で明確な違いがあります。
また、公社住宅は必ずしもファミリー層だけを対象としておらず、基準を満たした一定以上の収入がある方なら誰でも入居が可能です。「家族構成を理由に入居を断られる可能性が低い」という点もまた、特優賃とは違った部分と言えるでしょう。
両者の共通点としては、家賃だけでなく初期費用も少ないという点が挙げられます。特優賃と同じく、公社住宅も礼金、仲介手数料、更新料といった費用が発生しないところがほとんど。敷金も1ヶ月分のみ、というケースが珍しくありません。
「公営住宅」と「特優賃」の違いや共通点
公営住宅は、「公営住宅法」にもとづいて運営されている賃貸住宅です。公営住宅には都営住宅・市営住宅・町営住宅などがあり、各自治体が運営しています。
公営住宅は、収入や年齢などを理由に一般の賃貸物件を借りられない方の利用を前提とした住まいです。ファミリー層の入居も可能ですが、基本的には極端に収入の少ない方に限られます。ある程度の収入がある世帯にとって、公営住宅は「特優賃以上に入居するのが難しい」と言えるかもしれません。
特優賃と公営住宅との共通点は、家賃や初期費用が安い点。しかし、公営住宅への入居は原則的に生活に余裕がない世帯などが優先されるため、根本的な部分で特優賃とは異なる点のほうが多いと言えます。
いいことばかりではない?特優賃のデメリット
特定優良賃貸住宅(特優賃)は家賃や初期費用の負担が少なく、ファミリー層にとってメリットの多い物件ですが、その一方でデメリットもいくつかあります。入居を検討する際は、その両方をよく比較することをおすすめします。意外に見逃されがちな、特優賃(とくゆうちん)のデメリットを押さえておきましょう。
入居条件が厳しい
特優賃には、「入居条件が厳しい」というデメリットがあります。とりわけ収入に関しては、世帯年収が各自治体の定める条件を下回っていなければなりません(条件や金額は自治体によって異なります)。十分な収入がある共働き世帯などは、入居条件を満たせないケースも少なくないでしょう。
また、仮に収入面での条件を満たして入居できたとしても、後に収入が多くなると退去を余儀なくされることもあります。将来的に収入が増える見込みがある場合は、あくまでも「一時的な住まい」と考えるほうがよいでしょう。これらに加え、毎年所得調査をされるという点も、人によってはデメリットと感じるかもしれません。
ファミリー世帯しか入居できない
特優賃には、原則としてファミリー世帯しか利用できないという制約もあります。これは、特優賃の制度自体がファミリー層の経済的負担軽減を目的としているためです。単身者の場合は、そもそも特優賃が選択肢に入らない形になります。
ファミリー世帯以外で特優賃に入居できる例外的なケースが、「婚約をしているカップル」です。しかし、この場合も「入居から1ヶ月以内に入籍する」といった条件が付くため、やはりファミリー世帯以外の入居は基本的にハードルが高いと言えます。ちなみに、特優賃は友人同士の利用も原則不可なので、ルームシェア目的の場合も選択肢から外しましょう。
補助金に支給期限がある
特優賃の入居者にとっては、補助金を受け取れる点が最大のメリットの一つです。しかし、この補助金に「支給期限がある」というデメリットは見逃せません。
補助金の支給期限は、物件が特優賃として認定されてから20年と定められています。この支給期限を過ぎた物件は一般の賃貸物件と同じ扱いとなり、家賃補助などを受けられなくなるので注意が必要です。
また、特優賃の補助金には「フラット型」と「傾斜型」の2パターンがあり、後者の場合はもらえる補助金が徐々に少なくなっていきます。長期的に入居する場合、この点もまたデメリットとなるでしょう。
抽選が行われることもある
特優賃は一般的な賃貸物件に比べてメリットが多く、入居希望者数が部屋数を上回ることもよくあります。入居希望者数が定数を超過した場合は抽選で入居者が決定されるため、意向に反して契約できない点も特優賃ならではのデメリットです。
また、抽選が多くなる理由として、「そもそも特優賃の認定を受けている物件の絶対数が少ない」という状況も大いに関係しています。都市部では倍率が10倍を超えるケースもあり、抽選結果が出るまで引越しの準備などを進められない点もデメリットとなるでしょう。
ただし、なかには先着順で入居者が決まる物件もあります。募集情報はこまめにチェックするのが後悔しないポイントです。
設備が古いことがある
特優賃はすべての物件が新築というわけではなく、建ってから数十年が経過しているものも少なくありません。そのため、なかには設備が古い物件も少なからず存在します。
設備が古い物件は、その分抽選倍率が下がる可能性もあります。しかし、そのような部屋に入居した場合は、実際の生活で不便を感じる機会も多くなるでしょう。そういった不安がないように、内覧時には設備を細かく確認しておいてください。
特優賃はどうやったら借りられる?
一般的な賃貸物件と異なる特定優良賃貸住宅(特優賃)は、この種類の物件に特化した方法で借りる必要があります。探し方や主な条件(申し込み資格)、申し込みから入居までの流れにおいて、一般的な賃貸物件とは異なるポイントを押さえておきましょう。
探し方
まずは該当する物件を探すことが、入居への第一歩です。特優賃(とくゆうちん)は認定を受けた不動産会社などが取り扱いを行っており、募集状況はその会社を通して確認できます。
入居者の募集状況を確認したいなら、各社へ直接問い合わせて資料を送ってもらうとよいでしょう。また、会社によってはWebサイトなどで募集状況を公開しているところもあります。特優賃を探す際には、まずその地域で特優賃を取り扱っている会社を探してみるのがおすすめです。特優賃にもさまざまな間取り・設備の物件があるので、これらの点に細かな希望がある場合は複数の物件を比較・検討してみましょう。
主な条件(申し込み資格)
特優賃には、申し込みに際して条件が設けられています。主な申し込み条件を見てみましょう。
【特優賃の主な申し込み条件】
・申し込み者が成年に達していること
・入居者全員が日本国籍、または特別永住者証明書・在留カード(永住権)を所持していること
・申し込み者が自ら居住するための住宅を必要としていること
・家族や親族との同居を前提としていること
・収入基準を満たしていること
・連帯保証人をたてられること
・入居者が法律に触れる反社会的勢力に属していないこと
・現在特優賃に住んでいないこと
・住民税の滞納歴がないこと
ただし、これらの条件を満たせないからといって、特優賃への入居をあきらめる必要はありません。申し込み条件は地域によって異なるケースがあるため、詳細は自治体へ確認することをおすすめします。自治体や不動産会社によっては、連帯保証人がいなくても賃貸契約を結べるケースがあるようです。
申し込みから入居までの流れ
申し込みから入居までの流れに関しても、自治体や特優賃を取り扱う不動産会社によって違いがあります。しかし、随時募集している特優賃の場合は、大まかに以下のような流れでやり取りが行われているようです。
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問い合わせ
気になる特優賃が見つかったら、まずは取り扱っている会社へ問い合わせを行いましょう。問い合わせ後に案内書が届いたら、記入した書類と必要書類をそろえて返送します。
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内覧
続いて、内覧の申し込みをしましょう。内覧では実際の部屋の広さや各種設備の状態などを確認してください。チェックするポイントは、あらかじめリストアップしておくとよいでしょう。
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申し込み
内覧の結果、問題がなければ申し込みを行います。申し込み時には申し込み書類だけでなく審査書類を提出する必要もあるので、早めに準備をしておくと安心です。
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審査
申し込みをしたら、審査が行われます。収入や家族構成といった条件を満たしていないと入居できないおそれがあります。事前に確認できることはしっかり確認しておきましょう。
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契約・鍵渡し
審査に通過したら、契約・鍵渡しとなります。契約後は、引越しの準備に合わせて都合のよい日時に入居可能です。
特優賃を検討する際は、デメリットも理解しておきましょう
特定優良賃貸住宅(特優賃)は、「家賃補助が出る」「初期費用が抑えられる」といった特徴から、広い部屋を安く借りられる点がファミリー世帯にとって大きなメリットとなります。しかし一方で入居条件がやや厳しく、「物件の絶対数が少ない」「人気がある」といった状況から抽選になることも。こうしたデメリットも理解しつつ、希望の物件が見つかった場合は申し込みを検討してみましょう。
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