- 代償分割なら不動産などの分け合いづらい財産があっても、比較的スムーズに遺産分割ができる
- 代償分割を行うことで、相続税以外に贈与税や所得税が課せられる可能性がある
- 代償分割の際の各相続人の課税価格は、用いる評価額によって違いが出るため注意が必要
まずは4つの遺産分割方法を知ろう
遺産分割の方法は、「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4種類があります。まずは、それぞれの分割方法について具体例を挙げながら詳しく見てみましょう。
現物分割
「現物分割」とは、相続財産の形を変えることなくそのままの状態で分割する方法です。たとえば、家・現金・有価証券の3種類の相続財産をA・B・Cの3人の相続人で分ける場合、現物分割ではAが家、Bが現金、Cが有価証券というように、家や有価証券を売って現金化せず、そのまま相続します。
代償分割
「代償分割」とは、法定相続分を超える財産を相続した人が、ほかの相続人に自分の財産から現金や財産を渡して公平性を保つ分割方法です。たとえば、6,000万円の不動産をA・B・Cの3人の相続人で均等に分け合う場合、代償分割ではAが6,000万円の不動産を1人で取得し、BとCにそれぞれ2,000万円ずつ現金を支払うというように、公平に相続をします。
換価分割
「換価分割」とは、土地や不動産、有価証券など、複数人で分けにくい相続財産をすべて現金に換えてから相続する方法です。たとえば、3,000万円の不動産を二人の子で均等に分ける場合、換価分割では不動産を売却し、一人1,500万円ずつ相続します。
共有分割
共有分割とは、遺産のすべてまたは一部を複数の相続人で共有する分割方法です。たとえば、相続財産である不動産をAとBの二人の子で均等に分ける場合、共有分割ではAに2分1、Bに2分1の持分割合で共有して取得します。
共有分割は、売却したくない不動産などの財産を公平に分けられる分割方法ですが、共有者同士が対立するリスクも考えなければならないでしょう。
代償分割における相続税の計算方法
ここで、代償分割を行う際の相続税の計算方法を紹介します。
代償分割の基本的な相続税計算方法
代償分割での相続税は、通常の相続税の計算方法と大きくは変わりません。基本的な相続税の計算手順は、以下の通りです。
- 課税遺産総額を算出
- 課税遺産総額から基礎控除額を引く
- 法定相続分により
相続税の総額を算出 - 相続人の課税価格によって
相続税を割り振る
ちなみに、基礎控除額は、以下の方法で算出できます。
基礎控除額=
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
代償分割を用いて遺産分割を行う場合、各相続人の課税価格を決定する際に、代償分割を行った土地の評価額に「相続税評価額」と「代償分割時の時価」のどちらを使うのかを決める必要があります。ここで、それぞれの価格を用いた相続税の計算方法を見てみましょう。
相続税評価額を用いた相続税計算方法と具体例
相続税評価額を用いた場合の計算式は、以下の通りです。
代償金を支払う人の課税価格=
相続税評価額-代償金額
代償金を受け取る人の課税価格=
相続税評価額+代償金額
実際に例を挙げて計算してみましょう。
相続財産:
土地(相続税評価額5,000万円)
代償分割:
Aが土地を相続し、Bに代償金2,500万円を支払う
- 【Aの課税価格】
5,000万円-2,500万円=2,500万円 - 【Bの課税価格】
0+2,500万円=2,500万円
次に、代償分割時の時価を用いた場合の計算方法と具体例を見てみましょう。
代償分割時の時価を用いた相続税計算方法と具体例
代償分割時の時価を用いた相続税の計算方法は、以下の通りです。
代償金を支払う人の課税価格=
相続税評価額-代償金額×
(相続税評価額÷代償分割時の時価)
代償金を受け取る人の課税価格=
相続税評価額+代償金額×
(相続税評価額÷代償分割時の時価)
実際に例を挙げて計算してみましょう。
相続財産:
土地(相続税評価額5,000万円/代償分割時の時価6,000万円)
代償分割:
Aが土地を相続し、Bに代償金2,500万円を支払う
- 【Aの課税価格】
5,000万円-2,500万円×
(5,000万円÷6,000万円)≒2,900万円 - 【Bの課税価格】
0+2,500万円×
(5,000万円÷6,000万円)≒2,100万円
相続税評価額を用いた方法と、代償分割時の時価を用いた方法を見比べてみると、課税価格の合計はどちらも同じですが、AとBそれぞれの課税価格に違いが見られます。
課税価格に違いが出るということは、当然ながら支払う相続税も変わってきます。どちらの計算方法を使うのかは、相続人同士で決定することなので、あらかじめきちんと話し合っておくことが大切です。
代償分割は贈与税や所得税がかかることも
代償分割の代償金に、贈与税が課されることは基本的にありません。しかし、遺産分割協議の内容を書面にした「遺産分割協議書」に、代償財産の種類と金額、代償金の支払期限などをきちんと記し、贈与ではないことを明確にしていないと、贈与とみなされる可能性があります。
また、代償金を現金ではなく所有している不動産で支払った場合、「不動産の譲渡」とみなされ所得税が課せられます。節税のためには、代償金は現金で支払うほうがよいでしょう。
代償分割のメリットとデメリット
最後に、代償分割のメリットとデメリットを見てみましょう。
代償分割のメリット3つ
●公平な遺産分割ができる
代償分割は、法定相続分よりも多く遺産をもらった人が、相続人同士で不公平にならないように自身の現金や財産を分配するため、公平な遺産分割が行えます。不動産のような分けにくい相続財産がある場合、現物分割のように財産をそのまま分けてしまうと、どうしてもきっちり法定相続分で分けることが難しくなります。
代償分割なら損をする人・得をする人が出ないため、トラブルに発展しにくいと言えるでしょう。
●分割がスムーズ
代償分割で遺産を分けると、不動産や有価証券など分けにくい相続財産があっても、そのまま相続するため、スムーズに分割することができます。換価分割のように、不動産などをすべて現金化して分割するとなると時間を要しますが、代償分割なら時間をかけずに相続が完了しやすいでしょう。
●小規模宅地等の特例の適用で節税
「小規模宅地等の特例」とは、故人が住んでいた家や事業を行っていた店、工場など、特定の宅地を相続で取得した場合、評価額が減額されるという特例です。不動産の相続税はそのときの評価額で価値が決まるため、評価額が下がることで相続税の節税につながります。
たとえば、330㎡以内の自宅を相続する場合、評価額は80%減額になります。
代償分割のデメリット2つ
●遺産を多く相続した人に資金力が必要
代償分割では、法定相続分より多く遺産を相続した人は、自身の現金や財産から代償金を支払う必要があるため、資金力が不可欠です。もし代償金が支払えないとなると、相続人同士の間でトラブルになる可能性も高まります。
多額の不動産などを一人で取得する場合は、きちんと代償金の支払いができるか見極めて代償分割を行う必要があるでしょう。
●代償金の算出でもめる可能性も
不動産を代償分割する際の代償金は、相続税評価額や代償分割時の時価など、さまざまな算出方法があります。評価方法は法律で定められていないため、どの方法を選択するかは相続人同士で自由に決定可能です。
算出方法によって代償金額が異なるため、相続人がそれぞれ自分に有利な方法を選択したいとなると、遺産分割協議がまとまらないこともありえるでしょう。
代償分割は公平でスムーズな遺産分割ができる方法
代償金を支払うことで、公平かつスムーズな遺産分割に結びつきやすい「代償分割」。代償金を支払う相続人に資金力があり、代償金の算出方法をきちんと話し合うことができれば、平和な遺産分割ができるでしょう。
相続について相談したい方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
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