更新日:2024.08.08
駐車場・コインパーキング経営で土地活用~種類、メリット、注意点を解説~
土地活用には、マンション経営のように建物を建築する活用方法のほかに、駐車場のように建築はせずに土地の立地を活かすという方法もあります。 今回は、駐車場経営の基本について解説し、そのなかでも、不動産オーナーにとって比較的身近なコインパーキングをピックアップし、そのしくみやメリット、注意点などを分かりやすく解説します。
- 駐車場は、少ない初期費用で経営が始められる
- 駐車場経営のデメリットは税金が高いこと
- コインパーキングは、立地により高い収益が期待できる
駐車場活用のキホン
駐車場経営とは
駐車場経営は、土地に1台ごとの駐車スペース(車室、駐車マスともいいます)を区画し、駐車料金として収入を得るという土地活用の一手法です。
駐車場にはいくつかの分類方法があります。
駐車場を見た目(外形)で分けた場合、青空駐車場(砂利敷き・アスファルト舗装)、コインパーキング、立体駐車場(機械式・自走式)、庭先駐車場などがあります。
また、契約期間の違いでは、月極(つきぎめ)、時間貸し、1日貸しなどがあります。
さらに、管理方法で分けると、自主管理、管理委託、土地一括貸しなどがあります。
このように、駐車場には、外形、契約期間、管理方法の組合せによってさまざまな経営スタイルがあります。
立地、土地の広さ・形、道路との関係、不動産オーナーの考え方などによって組み合わせが選択されます。 そのなかでもよく目にするのは、「アスファルト舗装×月極」と「コインパーキング×時間貸し」の駐車場ではないでしょうか。
駐車場に向いている立地は?
駐車場は比較的広いエリアで需要があります。 ただし、郊外の住宅地など敷地内で駐車スペースが確保できるような地域では借り手が少なくなります。
また、道路の条件も重要です。 ロードサイドや道路幅が6m以上あるなど、目立ちやすく、出入りがしやすい土地は競争力の強い土地といえます。
なお、立地によって借り手のターゲットは異なります。 アパートやマンションが多い住宅地では月極駐車場の需要が高く、駅近・繁華街・オフィス街では時間貸し駐車場の需要が高くなります。
駐車場の需要を把握するためには、計画している土地の周辺を歩いてみることがおすすめです。
駐車場が多いか少ないか、満車か空きスペースが多いかなどは、一般の人でもある程度判断できます。 特に月極駐車場は夜間、コインパーキングは昼間に確かめてみると、よりくわしく運営状況を把握することができます。
具体的な事業計画の際には、駐車場に詳しい不動産会社にニーズ調査を依頼するのがよいでしょう。
駐車場の配置計画
同じ広さの土地であれば、駐車スペースの数が多いほど収入も増えます。 しかし、無理に台数を増やそうとすると、駐車スペースや通路(車路)が狭くなり、停めにくくなるので、かえって稼働率が下がることもあります。
駐車スペースは、普通乗用車の場合、幅2.5~2.7m、長さ5m~5.5mが一般的な寸法です。 単純に計算すると1台あたり約4坪あれば足りるように思えますが、実際には駐車スペースだけではなく、車路、出入口、コインパーキングでは精算機などのスペースも必要です。
そのため、一般的に自動車1台あたりの土地面積は、7坪から8坪必要とされています。
例えば100坪の土地であれば、駐車できる台数は約12~14台になります。 しかし実際には、土地の形や道路との関係、敷地内の車路の取り方などにより、駐車できる台数も大きく変わります。
下の駐車場配置図をみると、ケース①では、約28坪の土地に6台駐車ができます。
ところがケース②では、43坪と1.5倍以上ある土地に同じ6台しか駐車ができません。
駐車場経営を検討する際には、台数と使いやすさのバランスがとれた適切な設計をした上で事業計画を立てることが大切です。
駐車場経営のメリット
①初期投資が少ない
駐車場経営は、マンション経営などと比べて小さな投資額で始めることができます。 建物の建築をする場合、多額の事業資金を調達するために金融機関から借入をして資金を調達しますが、空室時の返済リスク、金利上昇リスクが生じます。 それに対して、駐車場は投資額が少ないため、リスクも小さくなります。
②狭小地や変形地でも経営ができる
駐車場は、自動車が1台以上駐車できれば狭小地や変形地でも経営が可能です。他の活用方法がむずかしい土地でも、安定収入を得られる可能性があります。
③転用や売却がしやすい
駐車場契約では借地権が生じないため、契約者の立退きもしやすく、スムーズに他の活用に転換したり、売却したりすることができます。 また、建物の解体もないため、更地にするための負担も抑えられます。
④管理の手間がかからない
管理会社や駐車場事業会社に管理委託や土地一括貸しをした場合、不動産オーナーは管理の手間がかかりません。
駐車場経営のデメリット
①マンション経営などよりも収益性が低い
駐車場の多くは土地の平面利用のため、一定の高さまで空間を利用できるマンション経営などと比べると、一般的に収益性は劣ります。
②競争相手の登場やクルマ離れで稼働率が下がる
駐車場は手軽に始められる反面、周辺に競争相手も現れやすいという傾向があります。 借り手は、近くに安くて便利な駐車場ができるとすぐに移ってしまうため、駐車料金の値下げ競争が起こるケースもあります。 また、近年は、高齢者の増加や若年層のクルマ離れも増えています。 自動車の保有台数が減れば、駐車場の稼働率も下がり収益の悪化につながります。
③税金が高い
駐車場は更地のため、住宅やマンションなど居住用の建物が建っている土地と比べると固定資産税・都市計画税が大幅に高くなります。 具体的には、更地の税金は小規模住宅用地の約3.6倍にもなるため、特に地価が高いエリアでは、税金負担も含めた収支を確認することが大切です(注:固定資産税率1.4%、都市計画税率0.3%、非住宅用地の課税標準70%の場合)。
また、不動産所得では、駐車場経営はマンション経営と比べて減価償却費や借入金利などの必要経費が少ないので、収入の割に税金が高くなりがちです。 さらに、相続税の評価額についても、マンションのように「貸家建付地」という評価減が受けられないため、評価額が高くなります。
コインパーキングのキホン
時間貸し駐車場では、機械式のコインパーキングが一般的です。
駅近、繁華街、商店街、オフィス街など、立地は限定されますが、時間貸しができ、料金も高く設定できるため、月極駐車場に比べ収益性は高くなります。
コインパーキングの種類
コインパーキングも設備によって、いくつかの種類があります。
①ロック式
駐車スペースに自動車が停まるとタイヤの手前のロック板が上昇し、自動車が出られないようになります。 出庫する際に、精算機で駐車料金を支払うとロック板が下がり自動車が出られます。
②ゲート式
駐車場の出入口にゲートがあり、駐車券をとると踏切のようなゲートバーが上がり、駐車場に入れます。 そのため、各駐車スペースにはロック板がありません。
③ロックレス
近年、「フラップレス」「ロックレス」と呼ばれている、ゲートバーもロック版もないコインパーキングが増えています。 駐車すると、カメラが自動車のナンバーを検知し記録する仕組みで、駐車料金は精算機で精算しますが、ロック板やゲートバーがないため、出し入れがしやすいのが特徴です。 また、ロック板やゲートバーの故障や破損のリスクもなくなります。
コインパーキングの運営方式
コインパーキングの運営方式には、「自主管理」「管理委託」「一括土地貸し」があります。
①自主管理
不動産オーナーが、設備投資から運営まで全て行います。 初期費用は数百万円単位でかかりますが、稼働率が高ければ高収益を見込めます。 反面、機械設備の維持管理やトラブル時の対応など、運営のわずらわしさも生じますが、本格的に駐車場経営に取組みたい不動産オーナー向けの方式です。
②管理委託
運営をコインパーキングの事業者に全て委託する方法です。 自主管理よりも収益は低くなりますが、管理のわずらわしさが避けられます。 なお、機械設備については、買取り方式とリース方式があります。
③一括土地貸し
土地を事業者に一括で貸し、不動産オーナーは土地の賃料を受取ります。 稼働率に関わらず、毎月一定額の賃料が受け取れるため、安定的な経営ができます。 反面、他の運営方法と比べると収益は低くなります。 また、最低2年間など一定の契約期間が決められているため、契約期間内に解約することはできません。
コインパーキング経営では、多く採用されている方式です。
コインパーキング経営のメリット(月極駐車場との比較)
コインパーキングは、月極駐車場と比べて高い収益が期待できます。 月極駐車場は契約台数が変わらなければ賃料は一定額ですが、コインパーキングの場合、稼働率が上がるほど売上が増えます。
また、時間貸しという細やかな方式にもかかわらず、機械によって無人で運営することができるため、手間がかからないことも魅力です。
コインパーキング経営のデメリット(月極駐車場との比較)
自主管理や管理委託の場合、立地の選択や駐車料金の設定を誤ると、稼働率が低くなり、期待したほどの売上になりません。
なお、コインパーキングは機械設備の費用がかかりますが、一般的にリース契約にするケースが多いため、初期費用は低く抑えられます。 ただし、リース契約の場合は毎月のリース料がかかるため、稼働率が下がると収益が大きく落ち込む可能性があります(一括土地貸しの場合を除く)。
まとめ
駐車場経営にはさまざまな種類や運営方法があるため、専門家に相談しながら事業計画を立てることをおすすめします。 また、頭に入れておきたいのは、駐車場は不動産活用の最終形ではないケースが多いということです。 いずれマンション建築を考えている、売却する予定があるなど、将来の計画がある場合、短・中期的な活用ができる駐車場が有効です。 駐車場の検討をする際も、将来の希望もあわせて専門家に相談し、ベストな選択をしましょう。
駐車場・コインパーキング経営を検討されている方、これから何かしらの土地活用をしたいと考えている方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
ファイナンシャルプランナー・終活アドバイザー・不動産コンサルタント
橋本 秋人
1961年東京都出身。早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。
30年以上、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当、その後独立。
現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続・終活などを中心に相談、コンサルティング、セミナー、執筆などを行っている。また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。
⇒橋本 秋人さんの記事一覧はこちら
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