- 事業計画書とは、主に返済計画を示すシミュレーション表のことである
- 事業計画書を作成すると、適正な借入額を把握できる
- 事業計画書は、必要な経費をしっかり見込んで作成することがポイント
不動産投資の事業計画書とは
不動産投資の事業計画書とは、収益物件の事業の見通しを記載した計画書のことです。
具体的には、家賃収入から必要経費を差し引き、利益の中から借入金を返済できることを示すシミュレーション表のことを指します。
事業計画書は、適切な想定であれば想定値を使用しても構いませんが、実際の数値を用いた方が説得力は増します。 不動産投資の場合、事前に売り主から家賃収入や固定資産税、損害保険料などの計画書に必要な数値をヒアリングし、可能な限り実際の数値を用いることが適切です。
自分で事業計画書を作成するメリット
この章では、自分で事業計画書を作成するメリットについて解説します。
手残りを知ることができる
自分で事業計画書を作成すると、手残りを知ることができるという点がメリットです。
手残りとは、家賃収入から固定資産税などの費用および借入金の返済額を差し引き、最終的に手元の残る金額のことを指します。
不動産投資の場合、購入物件のチラシには家賃収入だけしか記載されておらず、実際の手残りがわからないことがよくあります。 投資の可否を見極めるためにも、シミュレーション表は自分で作成できることが望ましいです。
適正な借入額を把握できる
適正な借入額を把握できる点も、メリットとなります。
不動産投資では、家賃収入から必要経費を控除した後の利益の中から借入金を返済していくことが必要です。 事業計画書を作成すれば、借入金をいくらで抑えなければいけないかを判断することができます。
銀行に対して合理的な説明ができる
自分で事業計画書を作成すれば、融資をお願いする銀行に対して、合理的な説明ができる点がメリットです。
自信を持って必要な資金の根拠を説明できることで、融資審査も通しやすくなります。 また、銀行は保守的な事業計画書を好む傾向にあるため、1つ1つの数字の根拠を示せると説得力が増します。
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事業計画書の作成ポイント
この章では、事業計画書の作成ポイントについて解説します。
空室を考慮した家賃収入
事業計画書に記す収入に関しては、空室を考慮した家賃収入を計上することが適切です。
空室は、満室の賃料をそのまま計上するのではなく、計画上は一定の空室損失を想定した賃料を計上します。 一般的に健全な不動産投資における空室率は5%程度ですので、事業計画書では5%の空室率を見込んでおくことが望ましいです。
たとえば、1年間ずっと満室の家賃収入が1,000万円とした場合、5%の空室率を控除すると計上すべき家賃収入は950万円となります。
満室時の家賃収入は、現状が満室であれば、原則として今の賃料をそのまま採用します。
空室部分があれば、家賃相場を十分に調べ、無理のない家賃を設定することが適切です。
固定費
この章では、不動産投資で生じる固定費について解説します。
固定費に関しては、購入前に売り主にCA(秘密保持契約)を差し入れることで実数を教えてもらえることが多いです。CAとは、取引を行う際に知り得た個人情報などを他人に開示しないことを約定する契約のことです。 事業計画書の信頼性を高めるためにも、数値はなるべく実数を用いることをおすすめします。
固定資産税および都市計画税
不動産投資では、固定資産税および都市計画税が生じます。
固定資産税および都市計画税は、極力売り主から実際の税額を聞き出し、実数を計上することが望ましいです。
損害保険料
不動産投資では、火災保険料や地震保険料といった建物の損害保険料も発生します。
損害保険料は、売り主から実数をヒアリングし、とりあえず事業計画書は実数をそのまま記載する形で構いません。
ただし、損害保険料は契約期間やオプション内容によって保険料が異なることから、購入後に契約内容を見直すことで圧縮できる可能性はあります。
管理委託料
管理を委託する場合には、管理委託料を計上します。
投資物件を購入後、管理を委託する会社が決まっており、新たな管理料も判明している場合には、予定している管理委託料を計上することが望ましいです。
管理を委託する会社が決まっていない場合には、売り主が支払っている実数か、もしくは管理委託料の相場(家賃収入の5%程度)を計上しておきます。
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一棟の場合は共用部の水道光熱費
投資物件が一棟マンションなどの場合は、共用部の水道光熱費も発生します。
共用部の水道光熱費は、厳密には変動費です。
ただし、大きくは変動しないため、数年分の実績の平均値を固定値で計上して構いません。
区分の場合は管理費および修繕積立金
投資物件が区分マンションの場合は、管理費および修繕積立金を計上します。
修繕積立金の増額予定が分かっている場合には、上がる時期に合わせて予定されている金額を計上することが望ましいです。
変動費
不動産投資では、入居者の入れ替えに伴う軽微な修繕費(クロスの張り替えなど)や入居者募集費用などの変動費が生じます。 入居者の入れ替えは、いつ発生するかわからないため、平均回転率とうい考え方を用いて計上します。
平均回転率とは、平均入居期間の逆数のことです。
平均回転率は、「1÷平均入居期間」で求めることができます。
たとえば、平均入居期間が5年の場合、0.2(=1÷5年)が平均回転率になります。
平均入居期間は、ワンルームなら3年、ファミリータイプなら5年程度で見込むことが適切です。
軽微な修繕費
軽微な修繕費とは、入居者の入れ替えに伴うクロスの張り替え費用などのことです。
たとえば、クロスの張り替え費用などが1室8万円かかるとします。
10室あれば総額は80万円かかりますが、平均回転率が0.2であれば1年あたりの金額は16万円(=80万円×0.2)で計上します。
入居者募集費用
入居者募集費用とは、新たな入居者を決める際に生じる仲介手数料およびAD(広告宣伝費)を指します。
ADとは、自分の物件に優先的に借り主をあっせんしてもらうために不動産会社に支払う費用のことです。 たとえば、入居者募集費用が1室14万円(仲介手数料が7万円、ADが7万円)かかるとします。 10室あれば総額は140万円かかりますが、平均回転率が0.2であれば1年あたりの金額は28万円(=140万円×0.2)で計上します。
借入金返済額
借入金返済額は、事前に銀行に金利と融資期間をヒアリングし、毎年の返済額を計上します。
借入金は、利益の中から返済でき、かつ、融資期間で完済できる計画になっていることが必須です。 計画上、借入金を返済できなければ、借入金を減らして再度シミュレーションを行います。
まとめ
以上、不動産投資の事業計画書について解説してきました。
不動産投資の事業計画書とは、賃貸経営の見通しと返済計画を示すシミュレーション表のことです。
自分で事業計画書を作成するメリットとしては、「手残りを知ることができる」や「適正な借入額を把握できる」、「銀行に対して合理的な説明ができる」といった点が挙げられます。 事業計画書では、家賃収入は空室を見込み、支出では固定だけでなく、変動費も計上しておくことが望ましいです。
事業計画を作成するにあたり、参考にしていただければと思います。
不動産鑑定士
竹内 英二
不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。
⇒竹内 英二さんの記事一覧はこちら
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