- レバレッジ効果を得るには、利回りが借入金利よりもある程度高い利率が必要となる
- 投資額に土地を含む場合、利回りの高い物件ほどリスクが高いことを意味する
- マンションの利回りには、表面利回りとNOI利回りがある
不動産投資の利回りの相場
不動産投資を検討する際、利回りの相場を把握することは重要です。
物件の種類別にみる不動産投資の表面利回り※の相場は、下表の通りです。
※表面利回りとは、年間の家賃収入を投資額で割った利回りのことを指します。(第4章 利回りの種類で詳述)
物件の種類 | 全国 | 首都圏 |
---|---|---|
区分マンション | 6.5~7.0%程度 | 6.0~6.4%程度 |
一棟マンション | 7.5~7.8%程度 | 6.6~6.9%程度 |
アパート | 8.0~8.3%程度 | 7.4~7.6%程度 |
※ライター調べ
首都圏は全国の中でも相対的に土地価格が高いことから、全国平均よりも表面利回りが総じて低い傾向があります。
区分マンションは一棟マンションと比較して、利回りが低い傾向にあります。
一般的に区分マンションは、中心市街地の物件が多く取引されており、周辺部に多い一棟マンションと比べると相対的に立地が良いことから、平均すると利回りは低くなっています。
アパートとマンションを比較すると、マンションの方が利回りは低いです。
一般的にマンションは、アパートよりも建物の構造や設備の質が高く、投資リスクが総じて低いことから、利回りも低くなっています。
投資に必要な利回りとは
利回りはリスクを反映していることから、低いほど安全性が高いとされています。 しかし、必ずしも低ければ良いというものではありません。 特にマンション投資では、利回りが一定以上ないと収益を確保できない場合があります。
マンション投資の特徴は、自己資金と借入金を併用し、レバレッジ効果を活用できる点です。
レバレッジ効果とは、借入金を併用することによって自己資金に対する利回りを上げる効果のことを指します。 この「てこ」のような仕組みを最大限に活かすには、マンションの利回りが借入金の金利を一定以上上回ることが条件となります。
たとえば、以下の条件で利回りが異なる2つの物件に投資した場合を比較してみます。
【投資条件】
- 物件価格:1億円
- 自己資金:1,000万円
- 借入金:9,000万円
- 金利:2.5%円
- 借入期間:35年
- 年間返済額:386万円(元利均等返済で計算)
比較するのは、NOI利回り(純収益利回り)が4.5%の物件と4.0%の物件です。
NOI利回りとは、家賃収入から費用を引いた純収益を投資額で割った利回りのことを指します。(第4章 利回りの種類で詳述)
上記の条件では金利を2.5%と設定しているため、NOI利回りが4.5%は「金利+2.0%」、NOI利回りが4.0%は「金利+1.5%」の物件であるということです。
【4.5%の物件に投資した場合】
物件価格は1億円であることから、NOI利回りが4.5%の物件に投資をすると年間収益は以下のようになります。
●年間収益:
1億円×4.5%=450万円
年間返済額は386万円であることから、借入金返済後のキャッシュフロー(CF)は以下の通りです。
(※CF=年間収益-年間返済額)
●キャッシュフロー(CF):
450万円-386万円=64万円
自己資金を1,000万円使って年間64万円のキャッシュフロー(手残り)を生み出したことから、自己資金に対する利回りは以下のようになります。
(※自己資金利回り=CF÷自己資金)
●自己資金利回り:
64万円÷1,000万円=6.4%
次に同条件で4.0%の物件に投資した場合を検証します。
【4.0%の物件に投資した場合】
物件価格は1億円であることから、NOI利回りが4.0%の物件に投資をすると年間収益は以下のようになります。
●年間収益:
1億円×4.0%=400万円
年間返済額は386万円であることから、借入金返済後のキャッシュフロー(CF)は以下の通りです。
(※CF=年間収益-年間返済額)
●キャッシュフロー(CF):
400万円-386万円=14万円
自己資金を1,000万円使って年間14万円のキャッシュフロー(手残り)を生み出したことから、自己資金に対する利回りは以下のようになります。
(※自己資金利回り=CF÷自己資金)
●自己資金利回り:
14万円÷1,000万円=1.4%
上記2つのシミュレーションに違いをまとめると、下表の通りです。
【投資結果の比較】
NOI利回り | 金利との差 | 自己資金利回り |
---|---|---|
4.5% | +2.0% | 6.4% |
4.0% | +1.5% | 1.4% |
4.5%の物件(金利との差2.0%)に投資をした場合、自己資金利回りは6.4%となり、4.5%よりも上昇したため、レバレッジ効果を得ることができました。
一方で、4.0%の物件(金利との差1.5%)に投資をした場合、自己資金利回りは1.4%となり、4.0%よりも下落したため、逆レバレッジ効果が発生しています。
4.5%の物件は借入金を使って自己資金を効率よく運用できましたが、4.0%の物件は借入金を使うことで逆に自己資金を非効率に運用してしまったことになります。 レバレッジ効果は金利や借入期間などの条件にもよりますが、35年のローンを組んだ場合、マンションのNOI利回りが金利よりも+2.0~2.5%以上あることが望ましいです。
マンション経営における利回りとは

マンション経営では「利回り」が重要な指標となります。 しかし、その意味は投資額に土地価格を含むか否かで大きく異なります。
この章ではその違いと、物件の特徴による利回りの関係について解説します。
投資に土地を含むか否かで意味が異なる
マンションの利回りは、投資額に土地を含むか否かで意味が異なります。
土地価格を含む場合
区分マンションや出来上がりの一棟マンションを購入する場合は、投資額に土地価格が含まれることが通常です。 投資額に土地価格が含まれる場合の利回りは、ハイリスクハイリターン、ローリスクローリターンの関係になります。
土地価格を含まない場合
一方で、土地持ちの人が土地活用でマンションを建てる場合には、投資額に土地価格は含みません。 投資額に土地価格が含まれない場合の利回りは、ハイリスクローリターン、ローリスクハイリターンの関係になります。
物件の特徴と利回りの関係
投資額に土地価格が含まれる場合、利回りは物件のリスクを反映しています。 下表の様な関係になることが一般的です。
利回り | 高い | 低い |
---|---|---|
立地 | 悪い | 良い |
築年数 | 古い | 新しい |
利回りの高い物件は条件が悪い物件が多く、高過ぎると空室が生じやすく、賃貸経営が難しくなっていきます。
そのため、区分所有や中古の1棟を購入するケースにおいては、高過ぎる利回りの物件は極力避けることが適切です。
利回りの種類
この章では、利回りの種類について解説します。
表面利回り
表面利回りとは、年間家賃収入を投資額で割った利回りのことです。 初歩的な収益指標として用いられることが多いですが、運用コストを考慮していない点には注意が必要です。
▼表面利回りの計算式
表面利回り=年間家賃収入÷投資額
NOI利回り(実質利回り)
NOI(Net Operating Income:エヌオーアイ)利回りとは、家賃収入から所定の支出を差し引いた運用益を投資額で割った利回りのことです。NOI利回りは「実質利回り」とも呼ばれ、運用コストを差し引いた後の利回りを算出するため、より現実的な収益を把握できます。
▼NOI利回りの計算式
NOI利回り
=(家賃収入-支出)÷投資額
=NOI÷投資額
NOIを求める際に考慮される主な支出には、以下のようなものが挙げられます。
- 固定資産税および都市計画税
- 損害保険料
- 管理委託料
- ビルメンテナンスコスト
- 共用部の水道光熱費
- 修繕費
- 入居者募集費用
これらの支出は、年間家賃収入の約15~30%が目安とされています。 そのため、NOI利回りは表面利回りの70~85%程度に収まることが一般的です。
まとめ
以上、マンション投資における利回りについて詳しく解説してきました。
マンションの表面利回りの相場は、区分マンションで6.5~7.0%程度、一棟マンションで7.5~7.8%程度です。 レバレッジ効果を得るには、NOI利回りが「金利+2.0~2.5%以上」あることが望ましいといえます。 投資額に土地を含む場合、利回りはハイリスクハイリターン、ローリスクローリターンの関係になります。
マンション投資は、利回りを正しく理解し、バランスの取れた投資判断を行うことが成功の鍵となります。 効果的な投資計画を検討中の方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。

不動産鑑定士
竹内 英二
不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。
⇒竹内 英二さんの記事一覧はこちら
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