
ポートフォリオとは、資産の配分のことです。 資産家の多くは、不動産や株式、現金などの様々な資産を有しており、ポートフォリオの概念を取り入れることで資産構成を最適化することができます。 とくに資産の中でも不動産のポートフォリオを意識することで、財産を次世代・次々世代まで承継できるようになります。 では、不動産をポートフォリオに組み込むことでどのようなメリットがあり、理想的なポートフォリオを構築するにはどういった戦略があるのでしょうか。 この記事では「資産家向けの不動産ポートフォリオ」について解説します。
- ポートフォリオとは、保有資産の組み合わせのこと
- 資産家のポートフォリオでは、相続税評価額ベースで不動産が4割弱を占めている
- 不動産ポートフォリオは、戦略的に組み替えていくことが望ましい
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ポートフォリオとは
ポートフォリオ(portfolio)には、元々は英語で「書類入れ」や「書類入れの中の書類」という意味があります。 投資用語としてのポートフォリオとは、保有資産の組み合わせのことです。
たとえば、現金は必ずしも安全な資産とは限らず、インフレに弱いという特徴があります。 近年のようなインフレ環境では、現金だけを保有すると価値が目減りするリスクがあります。 そのため、株式や不動産など、インフレに強い資産も組み合わせて保有することが安全です。
理想的なポートフォリオは、資産をどれか1つに偏らせるのではなく、バランスの良い組み合わせにすることでリスクとリターンを最適化したものとなります。
分散投資との違い
分散投資とは、資産の安全性・流動性・収益性の3つを考慮し、株式や不動産など異なる資産に分散して投資することを指します。
分散投資とポートフォリオの違いは、分散投資が「原因」であるのに対し、ポートフォリオが「結果」であるという点です。
たとえば、現金30%、株式30%、不動産40%で分散投資すれば、現金と株式、不動産の割合が「3:3:4」のポートフォリオ(資産の組み合わせ)となります。
資産家が不動産をポートフォリオに組み込むメリット

この章では、不動産をポートフォリオに組み込むことで得られるメリットについて解説します。
ミドルリスク・ミドルリターンの性質が加わりバランスがよくなる
不動産は現金や株式と比べて、ミドルリスク・ミドルリターンの性格を持つ資産です。
不動産は価値が下がることもあるため現金よりはリスクは高いですが、株式のようにゼロ円になる可能性は低く、比較的安定しています。 また、不動産は賃料収入などの大きなインカムゲイン(運用益)が得られるため、定期預金(現金)の利息よりも高いリターンが期待できます。 一方で、株式のキャピタルゲイン(売却益)よりはリターンは小さいです。
このように、安全性と収益性の面で現金と株式の中間に位置する不動産をポートフォリオに加えることで、資産全体のバランスが向上します。
レバレッジ効果を得やすい
レバレッジ効果とは、借入金を活用して自己資金に対する利回りを高める効果のことです。
レバレッジは英語で「てこ」を意味し、少ない資金で大きな投資効果を得られることを表しています。
不動産は株式よりも安全であることから、銀行から融資を受けて不動産投資を行うことができます。 その結果、保有している借入金を使って自己資金を効率的に運用でき、資産全体の収益性を高められる点が不動産投資の大きな魅力です。
相続税の節税対策になる
賃貸物件を保有すると、相続税の節税対策になります。 理由としては、賃貸物件の相続税評価額は時価よりも低くなるからです。
たとえば都市部の物件では、時価が1億円でも相続税評価額が3,000~4,000万円程度になることもあります。 本来の市場価値よりも低い価格を基準に相続税が計算されるため、資産家がポートフォリオに賃貸物件を組み込むと、相続税負担を大幅に抑えることが可能です。
さらに、相続税を抑えられれば、次世代へと資産を承継しやすくなります。 そのため、不動産をポートフォリオに組み込むことは、長期的に見て資産を守るという「防衛効果」も期待できます。
資産家の平均的なポートフォリオ
相続税は一部の資産家に対して課税される税金であるため、相続税納税者の財産構成比が分かれば、資産家の平均的なポートフォリオが推測できます。
国税庁によると、相続税納税者の資産構成の推移は下図の通りです。


画像出典:国税庁 「令和5年分 相続税の申告事績の概要」
令和5年(2023年)は、土地が31.5%、家屋(建物)が5.0%であるため、不動産の合計割合は36.5%(=31.5%+5.0%)です。
近年の不動産の構成割合は、概ね4割弱で推移しています。
これを相続税評価額ベースで考えると、資産家の平均的なポートフォリオは「不動産4割弱、現金3割強、有価証券2割弱」で構成されているものと推測されます。
ただし、不動産の相続税評価額は時価よりも低いことが一般的です。 そのため、時価で評価した場合には不動産価格の占める割合が大きくなり、場合によっては資産全体の中7~8割を占めることもあります。
戦略的に資産を組み換える3つのポイント
ポートフォリオを最適な状態にするには、戦略的に資産を組み替えていくことが望ましいです。 この章では、資産を戦略的に組み換えるポイントについて解説します。
①物件のエリアは集中させる
不動産投資では、保有物件を一定のエリアに集中させることが望ましいです。
資産全体のリスク分散は、すでに株式や現金など他の資産を組み合わせることで実現しています。 そのため、不動産を東京や大阪といった複数都市に分散させても、同じ不動産というカテゴリー内でのリスク分散効果は限定的です。
むしろ、離れた場所に物件を持つと管理が非効率になりやすく、投資効果が薄れてしまいます。 逆に、近隣エリアに複数棟を持つことで管理効果が高まり、シナジー効果(複数の資産がお互いに作用し合い、効果や機能を高めること)を得やすくなります。
したがって、不動産ポートフォリオでは、リスク分散は「他資産との組み合わせ」で行い、不動産同士は集中投資によってシナジー効果を狙うことが効果的です。
②築古物件は買い替える
不動産は築年数が古くなるほど、賃料水準の低下や修繕費の増加により収益性が落ちることが一般的です。 そのため、ポートフォリオ全体の収益力を維持するには、物件の築年数を若く保つことが理想となります。
複数の物件を持っている場合、築年数が古く収益性が下がってきた物件を優先的に売却し、その資金を活用して築年数の新しい物件へ買い替えることが適切です。 これにより、安定した賃料収入を確保できるだけでなく、将来の資産価値の下落リスクを抑えることにもつながります。
③現金はある程度残しておく
不動産投資は規模が大きく、どうしても現金が不動産という形で固定化されがちです。 しかし、手持ちの現金をすべて投資に回してしまうと、修繕費や突発的な支出に対応できず、資金繰りが苦しくなる可能性があります。
また、資産家は一般的に相続税が発生するため、納税用の現金も残しておく必要があります。相続税は現金納付が原則であることから、相続人に納税用の現金がないと、引き継いだ不動産を売却して現金を作らざるを得ません。
そのため、不動産投資を進める際には、将来の修繕・運営資金や納税資金に備え、現金を一定程度残しておくことが望ましいです。 これにより、資産の流動性を確保し、次世代に安定した資産を引き継ぐことができます。
まとめ
以上、資産家向けの不動産ポートフォリオについて解説してきました。
ポートフォリオは分散投資によってリスクとリターンのバランスを最適化することが大切です。 その中で不動産を組み込むことで、相続税の節税効果や資産価値の安定といったメリットが期待できます。
また、資産を戦略的に組み替えるには、「物件のエリアは集中させる」ことや「築古物件は買い替える」、「納税や運営資金に備えて現金を一定額残す」といったポイントを押さえることが大切です。
不動産ポートフォリオの構築や見直し、最適化でお悩みの方は、下記よりお気軽にご相談ください。
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不動産鑑定士
竹内 英二
不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。
⇒竹内 英二さんの記事一覧はこちら
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