- 24時間換気システムは「改正建築基準法」で設置が義務付けられている
- 屋内で生活するうえでシステムだけに頼らず自身で換気を行うことも大切
- 住宅性能表示制度を理解しておき、物件を探すときに安全性をチェックしよう
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今では賃貸物件に導入されていることが多い「24時間換気システム」ですが、以前までは義務付けられているものではありませんでした。しかし、改正建築基準法が施工されてからは、24時間換気システムの導入は賃貸物件では当たり前になっています。
では、なぜ24時間換気システムが導入されるようになったのでしょうか。24時間換気システムが導入されたことで、賃貸物件の室内の空調環境は整えられてきています。今回は24時間換気システムが導入された背景や、物件を選ぶ際のポイントなどを解説していくので、参考にしてみてください。
24時間換気システムの設置は改正建築基準法によって定められている
これまでは、24時間換気システムの設置は義務付けられていたわけではありませんでした。きっかけは、平成15年7月1日に施工された「改正建築基準法」によって、すべての建造物に24時間換気システムを導入することが定められたこと。ここでは24時間換気システムについて、法律の概要を含めて解説していきます。
24時間換気システムが導入された理由
24時間換気システムが導入されるようになったのは、改正建築基準法でシックハウス症候群の対策を行うことが義務付けられたためです。
シックハウス症候群は、建材や家具などから発生する有害物質が原因とされています。とくに気密性の高い住宅で引き起こされる可能性があるため、賃貸住宅などで24時間換気システムを導入する建造物が増えたのです。
24時間換気システムの仕組み
改正建築基準法で導入することが義務付けられた「24時間換気システム」は、1時間で換気回数0.5回分以上の換気ができる機能性が求められます。
仕組みとしては、外気を屋内にある給気口から取り込んで、部屋をキレイな空気でいっぱいにしてくれるのが特徴です。その後、洗面所やトイレなどにある天井排気口から室内の空気を排出して、屋内の換気を行ってくれます。
24時間換気システムには3つの換気方式が用意されている
24時間換気システムは屋内の空気を換気する性能を持っていますが、システム自体は3種類あり、それぞれ特徴が異なります。
空気の流れをコントロールしやすい「第1種換気方式」
3種類ある換気方式のなかでも、空気の流れをコントロールする性能などが安定しているのが「第1種換気方式」です。機械を使用しているため、動作的な問題が起きにくいタイプと言われています。ただし、換気をすべて機械で補っていることから、ランニングコストなどの費用面が高くなる傾向にあります。
給気だけを機械で行う「第2種換気方式」
賃貸住宅などに導入されることは少ないですが、給気を機械で行い、排気は自然に行うのが「第2種換気方式」です。主に手術室やクリーンルームで利用されることが多い換気方式で、汚染した空気が入ってこない仕様になっています。
排気のみ機械が行ってくれる「第3種換気方式」
給気は自然に行い、排気のみ機械が行うのが「第3種換気方式」です。ほかの換気方式とは異なり、給気口をさまざまな部屋に取り付ける必要があるのが特徴です。ランニングコストが比較的かからない方式で、結露などが発生しにくいと言われています。気密性が高くなりやすい賃貸住宅などで、住みやすい環境を整えてくれる換気方式です。
24時間換気システムが義務付けられた背景
改正建築基準法によって、導入が義務付けられた24時間換気システム。ここからは、導入されることになった背景について詳しく解説します。
「シックハウス症候群」
24時間換気システムが導入された背景には、「シックハウス症候群」があります。シックハウス症候群は、揮発性の有機化合物が身体に影響を与え、目がチカチカする・喉が痛いなどの症状を引き起こします。人によってはめまいや吐き気、頭痛がひどくなることもあるので注意が必要です。
シックハウス対策として、「ホルムアルデヒドに関する建材・換気設備の規制」「クロルピリホスの使用禁止」などが定められています。
改正建築基準法で定められているホルムアルデヒド対策
シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドは、木質建材などに使用されていることがあります。そのため改正建築基準法によって、内装仕上げの制限を実施してホルムアルデヒド対策を行っているのです。
改正建築基準法で定めている建築材料の区分によっては、内装仕上げに使用できない建材もあります。また、家具からもホルムアルデヒドが発散されることもあるので、対策として24時間換気システムが導入されることになったのです。
居室を有する建物ではクロルピリホスの使用は禁止されている
改正建築基準法によって、居室を有している建物ではクロルピリホスの使用は禁止されています。クロルピリホスは有機リン系の駆除剤で、シロアリを駆除する際に使用されることが多い薬剤です。クロルピリホスもシックハウス症候群の原因になることもあるので、対策として使用が禁止されることになりました。
24時間換気システムだけではシックハウス対策は不十分?
シックハウス対策として、24時間換気システムの義務化が決定されましたが、自身で注意しないといけない点もあります。シックハウス症候群のリスクを抑えるためにも、生活するうえでどのようなことに注意すべきなのか見ていきましょう。
屋内の換気は適切に行うことが大切
24時間換気システムにより屋内の換気は正しく行えていますが、環境によっては化学物質をすべて排除できていない可能性があります。たとえば、新しく購入した家具や防虫剤などには化学物質が発生していることもあるので、自身で適切な換気を行うことが必要です。
窓を開けて換気するときは1つの窓だけを開けるのではなく、複数の窓を開けたほうが空気の逃げ道ができて効果的です。
24時間換気システムを正常に動かすには、定期的な清掃も大切です。フィルター交換や清掃をしっかり行って、正しく換気できるように対応していきましょう。
化学物質はワックス類や化粧品から発生することも
シックハウス症候群の原因になる化学物質は、さまざまな物から発生することがあります。たとえば、新しく購入した家具やカーテンから化学物質が発散されるリスクもあるため、換気は適切に行っていきましょう。
ほかにもフローリングにツヤを出すために塗ったワックスなどからも、化学物質が発散する可能性があります。化粧品や香水なども影響することがあるので、ニオイが発生していたり使用したりした後は、換気を行うようにしましょう。
タバコやストーブのニオイが屋内に残らないように換気する
日常的にタバコを吸っているという方は、屋内でタバコを吸わないことが大切です。煙が室内に滞留してしまうと、化学物質によって身体に悪影響を及ぼすことが懸念されます。
また、ストーブなどで排気が屋内に溜まってしまう暖房器具は、化学物質の影響で屋内の空気が汚染されてしまう可能性も。煙などが滞留するものは、屋内での使用を避けることが大切です。
住まいの安心を確認できる「住宅性能表示制度」とは?
シックハウス対策として、「住宅性能表示制度」についてもいくつか改正されています。詳しい内容を解説します。
住宅性能表示制度は住宅の性能が数値で確認できる
平成12年10月にスタートした「住宅性能表示制度」は、地震や火災に対する強さなどを数値で表示する制度のことです。9つの項目に分別して表されており、住宅の性能についてチェックすることができます。
どれくらい住宅の強さや耐久性を持たせるのか、住宅性能表示制度を参考にして、どの程度の数値に仕上げるのかを指定することも可能です。住宅性能表示制度の評価は、国土交通省から指定を受けている第三者機関が務めているので、数値データの信用性は高いでしょう。
建設住宅性能評価書の交付を受けていれば、万が一住宅にトラブルが起きてもアフターフォローしてくれるので安心です。
既存住宅についても住宅性能表示制度で評価してもらえる
住宅性能表示制度は、新しく設計や工事を行った住宅に対する制度ですが、既存住宅を評価する制度も加わっています。既存住宅については、評価機関により新築住宅で適応される9つの項目から6つまでを評価。劣化状況は評価書にまとめられます。
住宅を購入・探すときには9つの項目に対する評価を確認
住宅性能評価制度について理解しておけば、住宅を購入・探すときにどれくらいの評価を受けている物件なのかを事前に把握できます。
9つの性能項目
1:地震などに対する強さ
2:火災に対する安全性
3:柱や土台などの耐久性
4:配管の清掃や取り替えのしやすさ
5:省エネルギー対策
6:シックハウス対策
7:窓の面積
8:遮音対策
9:高齢者等への配慮
制度が改正されたのは、このうち6つ目の「シックハウス対策」についてです。ホルムアルデヒドの等級が改正されたり評価の対象となっている建材が追加されたりしているので、より安全性の高い住宅づくりが実現できるでしょう。
「24時間換気システム」と「換気」で過ごしやすい環境へ
改正建築基準法によって、24時間換気システムを導入することが賃貸物件などで義務付けられるようになりました。十分な換気が可能となるシステムですが、環境によっては自身で換気を行わないと不十分なケースもあります。
また、住宅性能表示制度を理解しておけば、賃貸物件を探すときに安全性の高さを数値で確認できます。快適で健康に過ごせる物件を選ぶためにも、24時間換気システムや住宅性能表示制度について知っておきましょう。
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