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【不動産活用】テナントビル賃貸経営~テナントビルの基本からマンションとの比較まで解説~

更新日:2024.06.18

【不動産活用】テナントビル賃貸経営~テナントビルの基本からマンションとの比較まで解説~

不動産活用(土地活用)と聞くと、一般的にはアパートやマンションの賃貸経営が思い浮かびますが、立地によってはオフィスや店舗などとして貸し出すという活用方法もあります。 テナント賃貸には、小規模店舗、テナントビル、ロードサイド型店舗、大型商業施設など、さまざまなスタイルがあります。 今回は、特に都市部での活用方法としてニーズが高いテナントビルを取り上げて、そのしくみやメリット、注意点などについて解説します。

  • テナントビル賃貸経営は賃料、収益性が高くメリットが大きい活用方法
  • テナントビル賃貸経営は立地が最も重要で、立地選択を誤ると失敗することも
  • マンションなど他の活用方法と比較することも必要

もくじ

  1. テナントビル賃貸経営のキホン

    1. テナントビルとは

    2. テナントビルの種類

  2. テナントビル賃貸経営のメリットとデメリット

    1. テナントビル賃貸経営のメリット

    2. テナントビル賃貸経営のデメリット

  3. テナントビルとマンションの比較

  4. テナントビル賃貸経営の始め方

    1. テナントビル賃貸経営の流れ

    2. テナントビルのビジネススキームの種類

  5. まとめ



テナントビル賃貸経営のキホン

テナントビル賃貸経営のキホン

テナントビルとは

テナントビルとは、オフィス(事務所)や店舗など、主に事業活動を行う法人や個人事業主が賃借して入居するビルのことをいいます。
よくテナントビルとオフィスビルは異なるものと捉えられることがありますが、「テナント」の本来の意味は、土地や建物の賃借人のことです。つまり、テナントビルという大きな枠組みの中に、オフィスビル、商業ビル、複合ビルといったさまざまなタイプのビルが含まれていることになります。 整理すると、オフィスビルもテナントビルの一形態ということです。

テナントビルの種類

立地や敷地の広さ、法令などによる制限、建物の規模などによって、入居するテナントの業種や業態も異なります。 テナントの種類や組合せによって、テナントビルは次のような種類に分けられます。

①オフィスビル

主に企業や個人事業主が事務所(オフィス)として入居しているビルです。 駅近やオフィス街にあり、1棟のビルに複数の事務所が入居するケースや、1社が全てのフロアに入居するケースがあります。

②商業ビル(店舗ビル)

主に飲食店、ファッション、その他小売業やサービス業などの店舗が入居します。多くは駅前や繁華街など、歩行者の通行量が多い立地にあります。

③飲食店ビル

商業ビルの一形態で、レストラン、居酒屋などの飲食店が専門に入居します。 商業ビルと同様、駅近などの通行量が多い立地が条件になります。

④メディカルビル

複数のクリニック(=医院)や薬局が専門に入居しているビルです。 駅近の立地に多く、ひとつのビルにさまざまな診療科のクリニックが集まっているため、通勤・通学者も便利に利用ができます。 早朝・夜間に診療しているクリニックもあります。

⑤複合ビル

オフィス、店舗、その他さまざまな形態のテナントが入居します。 比較的大規模な建物が多く、低層階が店舗、中高層階が事務所や住居になっているタイプもあります。

その他にも、立地や広さに応じて、テナントビルには保育所、学習塾、介護サービス、貸し会議室などさまざまな業種・業態のテナントが入居しています。

テナントビル賃貸経営のメリットとデメリット

テナントビルの賃貸経営を計画する際には、あらかじめメリットとデメリットを押さえておく必要があります。 マンションなど他の活用方法との比較も行い、最も立地に適した活用方法を選ぶことが大切です。

テナントビル賃貸経営のメリット

①賃料が高い

テナントビルはマンションよりも1坪あたりの賃料を高く設定できるため、収益性も高くなります。 同じ立地のテナントビルとマンションの賃料を比較すると、2倍以上になるケースも少なくありません。 たとえば、東京23区内の都心5区のマンションの平均賃料は1坪あたり1.5万円~3万円と高い相場ですが、同エリアのオフィスビルの平均賃料は1坪あたり6万円以上の相場となっており、テナントビルの賃料水準の高さが分かります。

②設計の自由度が高い

テナントビルは、商業地域など建ぺい率や容積率などの制限が緩い立地にあることが多く、マンションなどの住居系建物と異なり採光などの居住性を考慮しなくても良いため、比較的自由度の高い設計が可能です。
また、立地や規模・外観のデザインなどによっては、ランドマークとして地域のシンボル的な建築物になるケースもあり、不動産オーナーとしてのステータスが上がることも期待できます。

③相続税の節税対策になる

テナントビルが建っている土地の相続税評価は、マンションと同様「貸家建付地」として評価されます。 例えば、相続税評価額が1億円の土地にテナントビルを建築すると、土地の相続税評価額は約7,900万円になり、2割以上評価額を下げることができます。
建物についても「貸家」として評価されます。 時価1億円のテナントビルを建てた場合、相続税評価額は約4,200万円と6割近く下がります。

(※土地は借地権割合70%、借家権割合30%、賃貸割合100%で計算。 建物は、固定資産税評価額を時価の60%、借家権割合30%で計算)

テナントビル賃貸経営のデメリット

①立地を選ぶ

アパートやマンションは比較的広いエリアで賃貸経営が可能ですが、テナントビルは駅前や繁華街、オフィス街など、賃貸経営可能な立地が限られます。オフィスや店舗の入居需要がない立地にテナントビルを建築してしまうと、入居が埋まらず、最悪の場合賃貸経営が破綻する恐れもあります。 そのため、テナントビルを検討する際に市場調査は必要不可欠です。

②空室リスクがある

入居者であるテナントは事業者のため、景気や社会情勢の変化の影響を受けやすく、業績の悪化や事業転換により退去してしまうリスクがあります。 特に全体の貸出面積に占める割合が高い大型テナントが退去した場合、テナントビルの空室率が一気に高くなります。 また一度テナントが退去すると、次のテナントが入居するまで長期間にわたり空室が続くこともあります。

この数年、コロナ禍でのテレワーク普及により、オフィスの退去や縮小が多く見られました。 このような不測の事態によって、テナントビルの需要が悪化する可能性もあります。 さらに入居需要が減退すれば賃料の下落にもつながります。

③融資審査が厳しい

マンション建築と同様、テナントビルの建築にあたっても銀行などから資金を借り入れて建築費に充てるケースがほとんどです。 しかし、テナントはマンションと比較して空室リスクが高いとされていることと、建築費が高額になるため借入額も多額になるケースが多いことなどから、金融機関の審査が厳しく、融資自体が受けられないケースもあります。 このような場合、テナントビル経営を断念せざるを得なくなります。

④固定資産税が高い

マンションが建っている土地は、小規模住宅用地の軽減により、1戸当たり200㎡まで固定資産税の課税標準が6分の1、都市計画税が3分の1に軽減されます。
しかし、テナントビルは居住用ではないため、小規模住宅用地の軽減が受けられず、「土地の固定資産税」が高額になります。 「建物の固定資産税」についても、テナントビルは鉄筋コンクリート造のような堅固な構造が多いため、木造や軽量鉄骨の建物と比較して高額になります。

テナントビルとマンションの比較

不動産活用の代表格といえるマンション賃貸経営とテナントビル賃貸経営ですが、それぞれの比較をまとめると下表のようになります。

▼テナントビルとマンションとの比較

比較項目 テナントビル マンション 備考
建築コスト ○ ~ ◎ スケルトンのテナントビルはコスト抑えられる
賃料 マンションは立地により大きな差
利回り △ ~ 〇 同上
立地 テナントビルは立地限られる、
マンションはより広範囲
原状回復の負担 テナントビルは原則テナント負担
マンションは原則オーナー負担
融資 テナントビルは金融機関の審査が厳しい
安定性 テナントビルはテナントの業績、
経済情勢などによる影響大
空室リスク テナントビルはテナント退去後の空室期間が
長期化することも
固定資産税(土地) マンションは課税標準が6分の1
(テナントビルは7割程度)
相続税節税 どちらも『貸家建付地』
比較項目 テナントビル マンション 備考
建築コスト ○ ~ ◎ スケルトンのテナントビルはコスト抑えられる
賃料 マンションは立地により大きな差
利回り △ ~ 〇 同上
立地 テナントビルは立地限られる、マンションはより広範囲
原状回復の負担 テナントビルは原則テナント負担、マンションは原則オーナー負担
融資 テナントビルは金融機関の審査が厳しい
安定性 テナントビルはテナントの業績、経済情勢などによる影響大
空室リスク テナントビルはテナント退去後の空室期間が長期化することも
固定資産税(土地) マンションは課税標準が6分の1(テナントビルは7割程度)
相続税節税 どちらも『貸家建付地』

※筆者作成

右にスクロールできます→

テナントビル経営、マンション経営それぞれにメリットとデメリットがあります。 特に市場調査や事業計画の検証を慎重に行いながら選択することが大切です。



テナントビル賃貸経営の始め方

テナントビルの賃貸経営の流れ

テナントビルの賃貸経営は次のような流れで進めます。

テナントビルの賃貸経営の流れ

特に重要なのは、パートナー選びです。
テナントの賃貸経営はマンションの賃貸経営よりも専門性が高いため、不動産オーナーだけで計画を進めるのは難しいと言われています。 また、一般的にテナントビルの賃貸経営は、計画段階から経営開始までに2年程度、規模によってはさらに数年かかることもあり、多くの手続きも必要です。 そのため、信頼できるデベロッパーをパートナーに選択することは、テナントビルの賃貸経営を成功させるためには必須の条件と言えます。

デベロッパーは事前の調査から、設計施工、リーシング(テナント募集、管理運営などの賃貸支援)をワンストップで対応してくれる会社をお勧めします。

テナントビルのビジネススキームの種類

テナントビルによる土地活用には、いくつかの手法があります。

①事業受託方式

テナントビルの賃貸経営において、最も多く行われているスキームです。 不動産オーナーが所有地にテナントビルを建設しますが、企画、設計、建築、テナント募集、管理は全て建築会社や不動産会社などのデベロッパーが受託します。 資金調達は、不動産オーナーが銀行からローンを借入れて行ないます。

次に紹介する「土地信託方式」や「定期借地権方式」と比較すると、収益は大きいですが、空室リスクや賃料下落リスクは不動産オーナーが負うことになります。 全てのスキームに共通しますが、信頼できるデベロッパーを選んで事業を進めることが重要です。

②土地信託方式

土地信託とは、土地を信託銀行や信託会社(以下、信託会社)に預け、運用を任せる方法です。 不動産オーナーを委託者、信託会社を受託者、不動産オーナー(または不動産オーナーの家族など)を受益者とする信託契約を締結し、信託会社が土地にテナントビルを建設して運用します。

受益者である不動産オーナーなどは、信託会社から配当金を受け取ります。 信託期間は10年から30年間が一般的です。 不動産オーナーは土地を信託することで、資金を拠出することなく収入を得ることができます。 ただし、立地条件は厳しく、高収益が期待できるような立地であることが条件になります。

③等価交換方式

不動産オーナーが土地を、デベロッパーがテナントビルの建築費を拠出し、土地と完成したテナントビルをそれぞれの出資比率に応じて所有するという方法です。 不動産オーナーは、テナントビルの一部を所有するので、テナントに貸し出して収入を得ます。
不動産オーナーの最大のメリットは、建築費を拠出しないでテナントビルの一部を取得できることです。 その代わりに、不動産オーナーは土地の一部を手放すことになるため、しくみの十分な理解が必要です。

④定期借地権方式

不動産オーナーは、デベロッパーと定期借地権契約を締結し、土地を貸します。デベロッパーが借地上にテナントビルを建築・運営し、不動産オーナーには地代を支払います。
一般的には契約期間を50年未満とする事業用定期借地契約になりますが、50年を超える場合は一般定期借地権契約にします。 不動産オーナーは土地を貸すだけなのでリスクを負いませんが、自らテナントビルを建築してテナントに賃貸するよりも収入は低くなります。

▼テナントビル活用の手法

  事業受託方式 土地信託方式 等価交換方式 定期借地権方式
事業推進者 デベロッパー デベロッパー デベロッパー デベロッパー(借地人)
所有者
(活用時)
土地 土地所有者 信託銀行
(信託期間終了後は
土地所有者に戻る)
土地所有者と
デベロッパーで
共有
土地所有者
建物 土地所有者 信託銀行
(信託期間終了後は
土地所有者に引渡し)
土地所有者と
デベロッパーで
区分所有
借地人
資金負担者 土地所有者 信託銀行 デベロッパー 借地人
メリット デベロッパーが
企画・建設・運営
一切を請け負う
資金負担なし
(信託銀行が資金調達から
一切行う)
資金負担なし 資金負担なし
デメリット ・事業報酬が必要
・立地重要
・信託報酬が必要
・立地重要
土地の
一部譲渡が必要
収益が少ない
  事業受託方式 土地信託方式 等価交換方式 定期借地権方式
事業推進者 デベロッパー デベロッパー デベロッパー デベロッパー(借地人)
所有者
(活用時)
土地 土地所有者 信託銀行
(信託期間終了後は
土地所有者に戻る)
土地所有者と
デベロッパーで共有
土地所有者
建物 土地所有者 信託銀行
(信託期間終了後は
土地所有者に引渡し)
土地所有者と
デベロッパーで
区分所有
借地人
資金負担者 土地所有者 信託銀行 デベロッパー 借地人
メリット デベロッパーが
企画・建設・運営
一切を請け負う
資金負担なし
(信託銀行が
資金調達から一切行う)
資金負担なし 資金負担なし
デメリット ・事業報酬が必要
・立地重要
・信託報酬が必要
・立地重要
土地の
一部譲渡が必要
収益が少ない

右にスクロールできます→

まとめ

所有している土地の立地によっては、テナントビルの賃貸経営は土地の潜在能力を最大に活かすことができる手法といえます。 ただし、デメリットやリスクも十分に理解した上で、本当にテナントビル経営が最適な選択かを判断する必要があります。 そのためには、マンションなど他の活用方法との比較をしたほうが良いケースもあります。
信頼できる専門家や建築会社に相談しながら適切な選択をすることが成功につながります。

これからテナントビル賃貸経営を含む不動産活用を検討されている方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。



ファイナンシャルプランナー・終活アドバイザー・不動産コンサルタント

橋本 秋人

1961年東京都出身。早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。
30年以上、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当、その後独立。
現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続・終活などを中心に相談、コンサルティング、セミナー、執筆などを行っている。また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。
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