- 病院の建設費は年々上昇傾向にある
- 仕様にもよるが、病院の建て替えの現実的な相場は坪230~250万円程度
- 予算は工事費の上振れリスクも見越して計画しておくことが望ましい
医療施設の建設費の動向
病院の建築費は、年々上昇傾向にあります。
独立行政法人福祉医療機構によると、過去12年間の病院の建築費の推移は、下図の通りです。


出典:独立行政法人福祉医療機構 「2023年度 福祉・医療施設の建設費について」の情報を基に、クラモア編集部が作成
※平米単価を坪単価に換算して表示
2023年度における病院の建築費単価は、坪135.9万円(平米41.1万円)です。
建築費が上がっているのは病院だけに限らず、近年はあらゆる用途の建物の建築費が上昇傾向にあります。 主な原因としては、以下が挙げられます。
- 人手不足による人件費の上昇
- 円安による資材価格の高騰
- 働き方改革による残業規制と、それに伴う工期の長期化
さらに、2025年4月からは、全ての新築建物で省エネ基準への適合が義務化されました。
省エネ性能も付加されたことから建物の仕様が引き上げられ、建築費の上昇に更なる拍車がかかっています。
病院の建て替えのタイミング
病院の建て替えのタイミングは、一般的に築30~40年程度とされています。
少し古いデータではありますが、厚生労働省の資料によると、病院の建て替えまでの平均期間は31.0年という記載があります。
2004年に7,710病院を対象とした調査(有効回答2,657病院)によれば、RC造※の病棟建築は、新築から建て替えに至る平均期間は31.0年。
※RC造:鉄筋コンクリート造のこと
実際には、建物は適切なメンテナンスをすることで寿命が延びることから、建て替えは築30~40年程度で行われることが多いと推測されます。 鉄筋コンクリート造の建物は、実際には50年以上は使えるため、築30~40年程度で建て替えとなると早すぎると感じる人もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、病院の建て替えは単に老朽化への対応だけではなく、医療ニーズの多様化や感染症対策、バリアフリー対応などの現代に求められる機能性を備えるために実行されます。 医療ニーズの変化は建物の寿命よりも早く訪れることが多く、たとえ50年以上使える建物であっても、30~40年程度で建て替えが必要となるのが実情です。
病院の建て替え費用の相場
独立行政法人福祉医療機構によると、2023年度の建築費単価は坪135.9万円(平米41.1万円)でした。 ただし、これはあくまで参考値であり、実際の病院建築にかかる費用はさらに高額になるのが一般的です。
病院の建築費は、規模や仕様によって大きく異なるものの、2025年時点における現実的な相場としては、鉄筋コンクリート造で坪230~250万円程度と見込まれます。
建築費高騰の原因である人手不足や円安による輸入資材の高止まり、残業規制による工期の長期化などは、解消の見通しが立っていない状況です。
そのため、今後も建て替え費用は上昇傾向が続くと考えられます。
病院の建て替え方法

病院の建て替えでは、建て替え期間中の仮診療をどうするかという問題があります。
上手くいっているケースで多いのは、今の病棟とは別の敷地で新築し、竣工したら新病棟に引っ越して診療の空白期間を無くすという方法です。
この章では、そのような「別の敷地で新築する方法」について解説します。
保有している遊休地に新築する
すでに別の土地を保有している場合は、その遊休地を活用して新病棟を建てることができます。 とくに郊外の病院では敷地にゆとりがあるため、隣接する駐車場に新病棟を建てるといったケースも見られます。
新たに土地を購入して新築する
余剰敷地がない病院では、新病棟建設のために近隣の土地を新たに取得するケースもあります。
ただし、適切な立地や広さの土地は簡単には見つからず、仮に見つかっても価格が高く購入が難しいことも少なくありません。 このように土地の確保ができない場合、病院の建て替え自体が難しくなるケースもあります。
定期借地権を利用して新築する
新たな土地の購入は資金的にもハードルが高いため、近年は定期借地権を利用して新築するケースも多いです。
定期借地権とは、契約期間満了後に必ず土地を地主へ返還する借地契約のことです。 更新の概念がないため、地主にとっても確実に土地が戻るという安心感があります。
借地人(土地を借りる病院側)は土地を購入せずに済むため、初期費用を大きく抑えられるというメリットがあります。
このように、定期借地権は借地人と地主の双方にとってメリットがあり、土地を購入するよりも条件の良い土地が見つかりやすいという特徴があります。
病院の建て替え手順
ここでは、病院を建て替えるまでの基本的な流れについて解説します。
全体の建て替え計画を立てる
病院の建て替えは、まず全体計画を立てます。
たとえば、次のような点をあらかじめ決めておく必要があります。
- 建て替え期間中の仮診療の体制
- 目標とする竣工時期
- 新病棟の病床数や機能の設計方針
必要に応じて、初期段階から不動産会社をパートナーに加えるのも有効です。
不動産会社は、購入可能な土地の探索や、定期借地契約を希望する地主の紹介など、土地確保に向けたサポートを行ってくれます。
予算を見積もる
全体の計画を立てたら、次は具体的な予算を見積もっていきます。
建築費に関しては、施工会社に相談して具体的な金額を把握することが望ましいです。
大手の施工会社であれば、社内に設計士を抱えているため、簡易な設計図面を作成したうえで現実的な建築費を見積もってくれます。
なお、建築費は当面の間は大きく低下することは考えにくく、むしろ上昇していく可能性もあることから、上振れリスクも見込んで予算化していくことが望ましいです。
施工会社を決定し建て替える
代替地の確保ができ、設計内容が固まったら施工者を決定して建て替えに着工します。
竣工に合わせて、引っ越し計画も綿密に立て、スムーズな移転を目指します。
まとめ
以上、病院の建て替え費用について解説してきました。
病院の建て替えは、多様化する医療ニーズに対応するため、機能性を更新する目的で行われることが多いです。 病院の建築費は年々上昇傾向にあり、現実的な相場は坪230~250万円程度となります。
病院の建て替え方法には、遊休地の利用や新たな土地購入だけでなく、定期借地権の利用もおすすめです。 それぞれの方法にメリット・デメリットがあるため、状況に応じた選択が求められます。
病院の建て替えを検討している方は、下記よりお気軽にご相談ください。

不動産鑑定士
竹内 英二
不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。
⇒竹内 英二さんの記事一覧はこちら
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