「メゾネット」とは？メゾネットタイプの特徴やメリット・デメリットを解説

メゾネットに対して、おしゃれなイメージや憧れを持っている方も少なくないはず。しかし、実際に住んでみるとなると、いいことばかりではありません。借りる前にメリットとデメリットをそれぞれ理解しておくことで、より満足度の高い生活が実現するでしょう。

この記事では、メゾネットタイプの物件が持つ特徴や、暮らすことで見えてくる問題点、部屋探しの注意点などについて掘り下げます。賃貸でメゾネットタイプに住みたいと考えている方は、参考にしてみてください。

「メゾネット（maisonnette）」は「小さな家」や「小屋」を意味するフランス語で、二つの以上の階層が独立した内階段でつながっている物件を指します。メゾネットとは異なり、ワンフロアのみで構成された物件を「フラットタイプ」と言いますが、なかにはメゾネットタイプとフラットタイプの物件が混在している集合住宅もあります。

部屋探しをしていると、「ロフト」や「テラスハウス」といった、メゾネットと似たタイプの物件に出会うことがあります。以下では、それぞれの違いをご説明します。

メゾネットと混同しやすい物件の一つに、「ロフト付き物件」があります。ロフトとは、床から天井の間に一つの床を設けて二層式にした中二階風の空間のこと。ハシゴなどを使って、昇り降りできるようになっている形が一般的です。構造上ロフトは「屋根裏部屋」に該当し、床面積や高さに制限があるため居室とは認められません。一方のメゾネットは、上階が「居室」に該当するため、ロフトに比べて天井が高く広々としているのが特徴です。

「テラスハウス」もメゾネットと似た印象を持つ建物ですが、テラスハウスは2階建て以上の長屋（複数の住戸が壁を共有する形で存在する集合住宅）に該当します。テラスハウスタイプの建物はメゾネット物件と言うことができますが、メゾネット物件が必ずしもテラスハウスであるとは限りません。

「メゾネットと2階建ての一戸建て住宅は同じでは？」と思うかもしれませんが、メゾネットはあくまで集合住宅の一部です。つまり、他に住む方の部屋と一部がつながっている、または共有部分の区域が建物内に存在するのが、メゾネットと一戸建ての違いと言えます。

メゾネットでは、水回りなどの配置に指定や制限がありません。よって、「キッチンが1階にあってバスルームが2階にあるタイプ」や「どちらも1階にあるタイプ」など、物件によって間取りも大きく異なります。メゾネットでは家事動線に「上下の動き」が入ってくるため、間取りによって家事の利便性が変わってくる点は考慮しておきましょう。

階段を何度も昇ったり降りたりするのは負担が大きく、家事などを億劫に感じでしまうこともあります。各設備の場所を中心に間取りは細かくチェックしておき、内見などの際に実際の暮らしをシミュレーションしておきましょう。

「メゾネットがいいな」と思っていても、借りるのは難しいと諦めている方もいるでしょう。実際、数は多いとは言えないものの、メゾネットタイプの賃貸物件は存在します。

物件検索サイトで検索する際には、「メゾネット」というキーワードやカテゴリーで調べられる場合もあれば、「テラスハウス」「タウンハウス（隣と壁がつながっている一戸建て風の住宅）」などと合わせて分類されているケースもあります。

メゾネットには、フラットタイプの物件にはないメリットがある一方、実際に住んでみるとわかるデメリットなどもあります。検討段階でしっかり考慮しておきましょう。

まずは、カップル・夫婦の世帯や子どもがいる世帯がメゾネットに住む場合のメリットを見ていきます。

メゾネット物件は2階建て以上なので、「上階の音が響いて下で暮らす別の世帯に迷惑をかける」といった心配がありません。子どもの足音などに気を使わず生活できるのは、大きな安心材料と言えるでしょう。

仲が良いカップルや夫婦でも、ずっと一緒にいると疲れてしまうでしょう。メゾネットなら上下で二人の空間を分けることも可能なので、プライバシー空間を大事にしたいという方に向いています。ワンフロアの物件よりも話し声が気になりにくいので、自宅を仕事場にしている方、来客が多い方にもぴったりです。

メゾネットはフラットタイプよりも空間が開放的になりやすく、広々とした部屋に住みたい方に適しています。上階の日当たりが良好な物件も多く、物件選びの際に室内の明るさや日差しを大事にしたい方にも向いていると言えます。

続いて、カップル・夫婦や子育て世帯が住むデメリットを見ていきましょう。

間取りによっては、風呂やトイレなどを使う際に、階段を昇り降りしなければならない点がデメリットになります。「洗濯物を干すベランダは2階にあるけど、洗濯機を設置する場所は1階にある」といった物件もあるでしょう。階段を昇り降りは、意外に大きな負担となります。

メゾネット物件には一人暮らし向けのものも存在します。カップルや家族とではなく、一人でメゾネット物件に住む場合には、どんなメリットとデメリットがあるのでしょうか？

単身世帯で住む主なメリットは、以下の5つです。

最大のメリットは、なんと言っても生活空間が広いことです。下階と上階で必ず2部屋以上ある構造のため、目的に合わせて自由に使い分けることができます。「来客は多いが自分のプライベートな空間は見られたくない」という方は、2階を生活空間にし、1階を来客スペースにすることも可能です。

寝室とリビングを上下階で分けることができるメゾネットなら、宅配便などの対応でドアを開けた際に、第三者に生活スペースをのぞかれる心配もありません。ワンルームタイプの物件で生活している方は、のれんなどで目隠しをしているケースもあると思いますが、メゾネットなら目隠しも不要です。

ワンフロアのフラットタイプとは異なり、移動に階段を挟むだけで気持ちを切り替えやすくなるのもポイントです。家へ仕事を持ち帰ることが多い方、リモートワークをする時間が長い方、自宅と職場を兼ねている方も少なくないでしょう。仕事の空間とリラックス空間を簡単に分けられるので、生活にもメリハリが生まれます。

階段下を収納スペースとして利用できる物件も多く、ワンフロアより収納スペースが充実している点も魅力です。ただし、階段下がデッドスペースになっていることもあるので、下見の際にきちんとチェックしておきましょう。

フラットタイプの集合住宅では別部屋と玄関が向き合っている構造が多くありますが、メゾネットタイプの場合は、比較的玄関が対面になっているケースが少ない傾向にあります。「朝出るときに向かいの住人と目が合ってしまい、少し気まずい思いをしている」といった方にも安心です。

単身世帯で住むデメリットには、費用面やセキュリティなどがあります。

メゾネットタイプには複数の部屋があり、面積も広いため、家賃がかなり高くなる傾向があります。設備が整っている集合住宅は管理費も高く設定されていることが多いため、事前に確認しておきましょう。

間取りによっては家事のために別の階に移動しなければならない場合もあり、一人暮らしではとくに面倒に感じることもあるでしょう。掃除をする際、上下階に重い掃除機を持ち運ぶのは大変です。

マンション高層階のメゾネット物件なら心配ありませんが、テラスハウスのような横並び形式のメゾネット物件では、玄関は基本的に1階にあります。セキュリティ面で1階の玄関を心配する方は、選択肢が少なくなってしまう点も意識しておきましょう。

単身用の賃貸物件として探す場合、そもそも件数が少ない点は考慮しておくべきです。エリアによっては、一戸建住宅を含めても「複数階に分かれた物件」がほとんど見つからないことも……。「見つかったタイミングでいずれ住もうかな」などとゆとりを持って考えておき、継続的に探して好みの物件が出てくるのを気長に待つのもいいかもしれません。

「メゾネットの家賃は高い」と聞いたことがある方もいるでしょう。実際、賃貸物件全体から見てもメゾネットは件数が多くなく、「貸し手側が有利」な点もあって家賃は高くなりがちです。部屋探しの際は、フラットタイプと同条件でも家賃が高くなってしまうことを覚えておきましょう。

ただし、一戸建てよりはリーズナブルな家賃に設定されている傾向があります。あくまで「一戸建て住宅を探す一環」としてメゾネットタイプも検討しているなら、家賃面は大きな問題になりにくいでしょう。

なお、家賃以外にも注意すべき点はいくつかあります。以下では、メゾネット物件を探す際に考慮しておくべきポイントをご紹介します。

縦（上下階）に複数のメゾネット物件が並ぶ集合住宅の場合、「下の物件の2階」では一般的なフラットタイプのマンションなどと同じように、「上の物件の1階」で生じた騒音を感じることがあります。また、テラスハウスのように横方向に物件が並んでいる場合には、こちらも一般的な集合住宅と同じように、壁を通して音が響いてしまう可能性もあるでしょう。

上下階に分かれて二つ以上の居室があるメゾネットは、フラットタイプに比べて冷暖房効率が悪いため、光熱費が高くなる傾向にあります。夏の暑い空気は上階にたまり、冬の冷気は下階の足元にたまりやすいので、エアコンなどを使って冷やしたり暖めたりするのにも時間がかかるでしょう。

内階段があるメゾネットは、階段下の部分がデッドスペースになりやすい点も見逃せません。収納スペースとして有効活用できる物件を選べば気になりませんが、間取り図上の面積より狭く感じてしまうケースも多くあります。

メゾネットタイプにはおしゃれなイメージもありますが、デメリットがないわけではありません。憧れだけで選ぶと、思わぬ負担に悩んだり、後悔したりするおそれもあるでしょう。メリットとデメリットの両方をふまえて、自分や家族のライフスタイルに合っている間取りかどうかをじっくり検討してみてください。

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