- 不動産を売却すると「譲渡所得税」と「その他の税金」の2種類が課税される
- 譲渡所得税は譲渡益に対してかかるもので、税率は不動産の所有期間によって異なる
- 不動産所得に関する特例を使うことで、譲渡所得税の減額ができる
不動産売却時にかかる税金の種類
さまざまな事情により、相続によって所有した不動産の売却を検討することもあるでしょう。不動産の売却では複数の手続きが発生すると同時に、税金の支払いも必要になります。
不動産売却にかかる税金は、大きく分けて「利益に対して課税されるもの(譲渡所得税)」と「その他の税金」の2種類になります。
不動産を売却した際に得た利益を「譲渡所得」と言い、この譲渡所得にかかる税金が、「譲渡所得税」です。 なお、「譲渡所得税」は所得税と住民税、復興特別所得税を合わせた税金の総称であり、不動産購入時より高い価格で売却できた場合の差額に課税されます。(以下の内容は、2021年11月時点)。
譲渡所得税
所得税
個人の所得に対して課税されるのが所得税です。売却した翌年の2~3月に納税します。
住民税
地方自治体に納める税金で、「道府県民税」(東京都は都民税)と「市町村民税」(区市町村民税)の総称です。売却した翌年の6月ごろに納税します。
復興特別所得税
2011年に発生した東日本大震災の復興に必要な財源を確保するための税金です。2013年1月1日~2037年12月31日の間に生じる所得について課税されます。
その他の税金
印紙税
契約書や領収書に貼る収入印紙代です。売却金額(売買契約書に記載している金額)によって金額が異なります。契約書を売り主・買い主それぞれで保管する場合は、2通分の印紙税が必要です。
登録免許税
名義変更をはじめとする登記手続きに際して支払う税金です。抵当権を抹消する場合などに必要で、不動産1点あたり1,000円かかります。
消費税
商品や製品を購入したり、サービスを受けたりする際に支払う税金です。不動産会社へ支払う仲介手数料や、融資手続きの手数料などに発生します。
譲渡所得税を正しく理解しよう
譲渡所得税は、「譲渡所得×税率」で算出できます。以下では、譲渡所得と税率についてそれぞれ見ていきましょう。
譲渡所得の計算方法
不動産を売却すれば、もれなく譲渡所得税が発生するというわけではありません。譲渡所得税は、いわゆる譲渡益(購入費より売却費が上回ったときの差額)に対して課税されるものです。譲渡益は、売却価格から取得費用と売却にかかる経費を差し引いた額を指します。
譲渡所得の計算方法は次のとおりです。
売却価格-(取得費用+売却時の経費)
=譲渡所得
たとえばあなたが、5,000万円で購入した土地を7,000万円で売却したとします。売却にともなう仲介手数料は、250万円でした。この場合の譲渡所得は以下のようになります。
7,000万円-(5,000万円+200万円)
=1,800万円
つまり、この「1,800万円」に対して譲渡所得税が課税されることになります。
譲渡所得税の税率は所有期間で異なる
譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって異なるという特徴があります。短期の場合は高く、長期になると低くなるので覚えておきましょう。
・短期譲渡所得(5年未満):
所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%:合計39.63%
・長期譲渡所得(5年以上):
所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%:合計20.315%
所有期間によって税率が異なるのは、短期間で土地の売買を繰り返し、利益を得るようなケースを避けるためです。
所有期間は「その年の1月1日時点」が起点となります。もし、2016年6月1日に購入した土地を2021年6月1日に売却した場合、2021年1月1日時点で計算することになるため、所有期間は4年となります。5年を超えるか否かで税率が大きく変わるため、売却時期には注意しましょう。
覚えておきたい、節税に有効な特例とは
譲渡所得税には、税負担を軽減するための特例がいくつかあります。上手に活用できれば節税につながるので、売却物件が条件に当てはまるかチェックしてみましょう。
所有期間が10年以上のマイホーム軽減税率の特例
長期譲渡所得について、居住用財産の所有期間が10年を超える場合で、かつ譲渡所得が6,000万円以下の部分は、「マイホーム軽減税率の特例」を受けることができます。
譲渡所得6,000万円以下の部分 | 譲渡所得×14.21% (所得税10%+住民税4%+復興特別所得税0.21%) |
---|---|
譲渡所得6,000万円超の部分 | 譲渡所得×20.315% (所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%) |
6,000万円を超える場合の税率は20.315%ですが、6,000万円以下なら14.21%に抑えられます。
居住用財産は3,000万円の控除
自宅土地のような居住用の財産は、3,000万円の控除を受けることができます。つまり、譲渡所得が3,000万円以下であれば非課税になる、ということです。この特例は所有期間が5年以下でも適用されます。
ただし、過去2年の間にマイホームの買い替えに関する特例を利用している場合は、適用不可です。また、住宅ローン控除との併用もできません。買い替えをして住宅ローンの利用を考えている場合は、3,000万円控除と比較して減税効果が高いほうを選ぶとよいでしょう。
買い替えをする場合は、「繰りのべ」特例あり
2021年12月31日までにマイホームなどの買い替えをした場合に適用されるのが、「特定の居住用財産の買換えの特例」です。もとの住宅を売却した価格より高額な住宅を購入すると、譲渡所得への課税を次の売却時まで繰りのべることが可能。つまり、売却価格より買い替えた資産の価値が高い場合は税額がゼロになる、ということです。
ただし、「売却代金が1億円以下」「買い替える建物の床面積が50㎡以上」「土地面積が500㎡以下」「売り主の居住期間が10年以上」といった適用要件を満たすことが必要です。以前住んでいた家や土地であれば、住まなくなった日から3年経過する日が属する年の12月31日までに売却した場合に適用されます。
あくまで「繰りのべ」なので、次に買い替えをする際にはその繰りのべ分を含めて課税されることを覚えておきましょう。
マイホームの譲渡損がある場合は、損益通算と繰越控除が可能
5年以上所有しているマイホームを売却し、購入金額が売却金額を上回った場合で、かつ新たにマイホームを購入した場合に適用されるのが、「譲渡損失の損益通算」と「譲渡所得の繰越控除」です。譲渡損が大きいほど有効で、譲渡損への不安から売り控えするのを抑えることを目的として設計されています。
「損益通算」とは、ある所得で損失が出た際に、他の所得から損失を差し引くことを指します。もしその年の所得から完全に差し引けない場合は、売却した年を含めて最長4年間の繰り越しが可能です。課税される所得が少なくなれば支払う税金が少なくなるため、節税につながります。
たとえば、5,000万円で購入した不動産を3,500万円で売却、譲渡費用(売却時の経費)200万円のケースにおける譲渡所得は次のとおりです。
3,500万円-(5,000万円+200万円)
=▲1,700万円
譲渡所得をその他の所得、たとえば給与所得(例:500万円)と損益通算する場合は、次のような計算になります。
500万円-1,700万円
=▲1200万円
損益通算は最長で3年間の繰り越しが認められているため、2年目以降の損益通算は次のとおりです(その他の所得は給与所得のみで金額は変わらないと仮定)。以下の例では3年目で終了となりますが、損益通算しきれない場合は、4年目から通常の課税となります。
売却年 | 500万円-1,700万円=▲1,200万円 |
---|---|
1年目 | 500万円-1,200万円=▲700万円 |
2年目 | 500万円-700万円=▲200万円 |
3年目 | 500万円-200万円=0円 |
「譲渡所得税」は賢く節税しよう
額が大きいだけに、慎重な判断が求められる不動産売却。実際に売却を検討する際は、所有年数によって税率が異なることを覚えておきましょう。譲渡所得税の金額は、今回ご紹介した計算式に当てはめることで正しく計算できます。不動産が居住用財産である場合や、買い替えをする場合には、特例処置を受けることが可能です。特例を上手に活用し、節税につなげましょう。
不動産売却にともなう譲渡所得税についてさらに詳しく知りたい方、不動産売却で損をしたくない方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
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