
賃貸マンション経営は、多額の投資や借入が必要となるため、その分リスクも大きくなります。 「マンション経営は手間要らずで収益が得られる」と思われがちですが、実際には修繕費や空室対策の広告費など、さまざまな経費がかかります。 その結果、支出が増え家賃収入の回収に時間がかかり、「思ったより儲からない」と感じる方も少なくないでしょう。 では、マンション経営で失敗しないためには、どのような工夫や準備が必要なのでしょうか。 本記事では、マンション経営でよく見られる失敗例と、成功するための具体的な対策を詳しく解説します。
- マンション経営の失敗でよくあるのは、空室が埋まらないこと
- シミュレーションが不十分だと想像以上に出費がかさみ、費用負担が大きくなることも
- 空室を防ぐには、市場ニーズを踏まえたマンションを建てることが重要
マンション経営でよくある5つの失敗
この章では、マンション経営におけるよくある5つの失敗を解説します。
①空室がなかなか埋まらない
マンション経営における失敗の多くは、空室がなかなか埋まらないことに起因しています。 空室はマンション経営における最大のリスクであり、あらゆる失敗を引き起こします。 まず、 空室により収入が減少し、その結果として募集家賃を下げざるを得なくなります。 この収益の減少が修繕費用の不足を招き、最終的には借入金の返済が厳しくなることも考えられます。
②サブリースでも家賃が下がることを知らなかった
マンション経営において、「サブリース契約でも家賃が下がることがある」という点を知らずに失敗するケースがあります。 サブリースとは転貸による管理方式の一つで、家賃保証型の場合、たとえ空室があってもサブリース会社から毎月一定額の家賃が支払われます。 しかし、空室が増加すると、サブリース会社から家賃の減額を求められることがあり、結果的に収入が下がることもあるのです。
家賃保証型サブリースは、空室を永久かつ完全に保証するものではありません。 また、家賃保証型サブリースはサブリース会社が差し引く管理委託料が高いため、収益性が元々低い傾向にあります。 この収益性の低さに加えて、家賃が減額されると、将来に向けた大規模修繕費を貯蓄するのが難しくなります。
③貸し主側の出費が想像以上に多かった
マンション経営では、貸し主側の出費が想像以上に多かったという失敗もあります。
空室が発生すると、貸し主には次の入居者を決めるための仲介手数料やAD(広告宣伝費)など、入居者募集にかかる費用が発生します。 ADは業者インセンティブとも呼ばれ、自分の物件に優先的に借り主を紹介してもらうための費用にも充てられます。
また、物件の状態によっては、部屋のクリーニング費用やクロスの張り替えなど、修繕費用が発生します。 これらの入居者募集費用や修繕費用を合計すると、入居者の入れ替えごとに家賃の3~4ヶ月分の支出が発生することも珍しくありません。
④大規模修繕の対応ができなかった
マンション経営では、貸し主が大規模修繕に対応できなかったことが原因で失敗するケースもあります。
建物を長く維持するためには、計画的な資金準備が欠かせません。 適切な修繕を行わないと、建物の劣化が進み、借り主が決まりにくくなり、結果的に空室を助長させる原因となります。
⑤借金の返済ができなくなった
マンション経営では、空室の増加などが原因で借入の返済ができなくなる失敗もあります。
返済不能に陥った場合、物件を売却して残債を返済する必要がありますが、売却価格がローン残高を下回ると、売却後に自己資金で不足分を補わなければなりません。 最悪の場合、返済負担が重なり自己破産に至ることもあります。
マンション経営に失敗しないための対策

この章では、マンション経営に失敗しないための具体的な対策を解説します。
市場ニーズを把握し、戦略的に新築マンションを建てる
新築マンションを建ててマンション経営を始める場合は、市場ニーズを踏まえてマンションの企画をすることが対策となります。
間取りの選定はターゲットのニーズに合わせる
間取りの決定は、ターゲットを選定することと実質的に同じであるため、地域のニーズに合わせて決定することが必要です。 賃貸マンションにおいては、単身者向けのワンルームが人気ですが、地域によっては供給過剰となっている場合もあります。 例えば、ワンルームが供給過剰のエリアでは、若いファミリー世帯をターゲットに切り替え、2LDKなどの間取りを選択することが効果的です。
共用設備を充実させる
市場のニーズを的確に捉えるには、共用施設の充実が重要です。
昨今は物騒な事件が増えてきたことから、セキュリティ対策は以前にも増して求められています。 そのため、エントランスのオートロックや防犯カメラは必須の設備となりつつあります。 また、共働き世帯が増えてきたため、宅配ボックスや24時間利用可能ゴミ置き場も取り入れるべき共用設備といえます。
サブリース契約はリスクを十分に理解して選択する
家賃保証型サブリースを選択する場合は、その仕組みやリスクを十分に理解することが重要です。 家賃保証型サブリースは、収益性が低くなりがちな上、家賃が下落するリスクも抱えています。
このような契約には貸し主にとって決定的なメリットが少ない場合もあるため、必ずしも家賃保証型サブリースを前提に検討する必要はありません。 まずは、空室リスクを自分で負う管理方式を検討し、それでもなお家賃保証型サブリースを選択したい場合は、内容を十分に理解したうえで契約することが適切です。
貸し主が負担する費用を把握する
マンション経営の失敗を防ぐには、あらかじめ貸し主が負担する費用を把握し、計画的に資金を管理することが大切です。 貸し主負担となる主な費用には、下表のようなものがあります。
種類 | 項目 |
---|---|
経常的に 生じる費用 |
・公租公課(固定資産税、都市計画税) ・損害保険料(火災保険、地震保険) ・管理委託料(管理会社へ支払う費用) ・共用部の水道光熱費 ・建物維持コスト(定期点検、清掃費など) |
偶発的に 生じる費用 |
・修繕費(クリーニング、クロス張り替えなどの軽微な修繕) ・入居者募集費用(仲介手数料、広告宣伝費など) |
将来的に 生じる費用 |
・大規模修繕費 |
特に偶発的に生じる費用は、想定外の出費となることが多く、資金計画に含めていない人も多いです。 そのため、賃貸経営を始める際には、こうした費用にも対応できるよう、資金に余裕を持たせることが大切です。
大規模修繕費は計画的に貯蓄する
大規模修繕を適切に実施するには、大規模修繕費を計画的に貯蓄することが対策です。 計画的な貯蓄を行うには、施工者に依頼して長期修繕計画(いつ、どのような大規模修繕を行うか、概算費用も併せて算出した計画表)を作成してもらうことが望ましいといえます。
自己資金の割合を増やす
借入リスクを抑えるには、自己資金の割合を増やし、借入金を減らすことが対策となります。
ただし、自己資金には限りがあるため、無理に資金を用意するのではなく、建物規模を小さくするなど投資額を抑える工夫も有効な選択肢です。 無理のない資金計画を立てることで、返済負担を軽減し、安定したマンション経営を実現できます。
まとめ
以上、マンション経営の失敗例と対策について解説してきました。
マンション経営では、「空室がなかなか埋まらない」や「サブリースでも家賃が下がることを知らなかった」、「貸し主側の出費が想像以上に多かった」などの失敗がありました。 マンション経営の失敗を防ぐには、「市場ニーズを踏まえて新築マンションを建てる」や「サブリースは内容を十分に理解する」、「貸し主負担となる費用を知る」といった対策が欠かせません。
これらのポイントを踏まえ、マンション経営を計画する際の参考にしていただければと思います。
マンション経営を検討される方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。

不動産鑑定士
竹内 英二
不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。
⇒竹内 英二さんの記事一覧はこちら
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