- 中古アパートのほうが新築アパートよりも利回りが高い傾向にある
- 初期だけではなく、中長期的な利回りを確認することが大切
- 利回りも含めた賃貸経営のリテラシーを高めることが、アパート経営の大切なポイント
アパート経営の利回りとは?
アパート経営の利回りとは、アパートに投資した金額に対して年間に得られる収入や収益の割合のことをいいます。 単位は%(パーセント)で表します。
利回りは、アパート経営を始める際の重要な指標の一つになります。 例えば、投資額5,000万円のアパートから毎年500万円の割合で収益が得られる場合、そのアパートの利回りは10%ということになります。
利回りを把握できると、アパートの取得時に支払った資金を何年で回収できるかの目安が判断できます。 上の例では、利回りが10%なので、投資額の5,000万円は約10年で回収できると予測できます。
アパート経営には、大きく2つの手法があります。
- 土地活用型:
既に所有している土地にアパートを建築する方法(遊休地活用) - 不動産投資型:
土地とアパートを同時に購入して経営する方法
どちらも、アパートを取得して賃貸経営を始めることは共通していますが、「不動産投資」はアパートの価格に土地の価格も加わるため、一般的に「土地活用」と比較して利回りは低くなります。
今回のテーマである「アパート経営の利回り」は、どちらの手法にも共通する内容となっています。 ただし、「不動産投資」には、新築アパートだけではなく、中古アパートの取得も含まれるため、解説が中古アパートを指す場合もあることに注意してください。
アパートの利回りは2種類ある
アパートの代表的な利回りには、次の2種類があります。
表面利回り(グロス利回り)
表面利回りは、アパートの取得額に対する「年間の家賃収入」の割合のことです。
表面利回りの計算式は次の通りです。
- 表面利回り
=年間の家賃収入÷アパートの取得価格×100
【例】
毎月の家賃が40万円(=年間の家賃収入480万円)で、アパートの取得価格が6,000万円の場合
この場合、表面利回りは、以下の通りです。
- 480万円 ÷ 6,000万円 × 100 = 8%
一般的に収益不動産の広告に記載されているのが表面利回りです。
表面利回りは、初期の収益性をざっくりと把握したり、他の物件と比較したりするために使われますが、アパート経営における実際の収益性を正確に表すものではありません。
実質利回り(ネット利回り)
実質利回りは、アパートの取得額に対する「年間の純収益」の割合のことです。 純収益とは、アパートの家賃から諸経費(管理費、修繕費、税金、空室率など)を差し引いた残りの手取り額のことです。 手元にどれくらいのキャッシュ(手取り額)が残るかを基に計算しているため、収入のみで計算する表面利回りよりも正確に収益性を示すことができます。
実質利回りの計算式は以下の通りです。
- 実質利回り
=年間の純収益÷アパートの取得価格×100
【例】
年間の純収益420万円(年間の家賃収入480万円-年間の経費60万円)で、アパートの取得価格が6,300万円(物件価格6,000万円+諸費用300万円)の場合
この場合、実質利回りは、以下の通りです。
- 420万円 ÷ 6,300万円 × 100 ≒ 6.67%
実質利回りは、経費やその他のコストを反映した純収益を元に計算されるため、表面利回りよりも低くなりますが、より現実的なアパート投資の判断指標となります。
実はもう一つある利回り!自己資本利回りとは?
アパート経営の利回りとして、表面利回りと実質利回りを紹介しましたが、実は、実務においてよく使われる利回りに、自己資本利回りがあります。
一般的に、アパートへの投資は高額になるため、自己資金(=自己資本)に加え、銀行などからの融資を受けて行います。 その際に、投下した自己資金に対して、毎年いくらの純収益が得られるかが分かれば、自己資金が何年で回収できるかの目安が把握できます。 そのため、自己資本利回りは「自己資金投下利回り」ともいいます。
自己資本利回りは以下の通り、年間の純収益を自己資金で割って算出します。
- 自己資本利回り
=年間の純収益 ÷ 自己資金 × 100
このように、自己資本利回りは、全額自己資金の場合を除いて、アパート全体の収益性を測る指標ではありません。
利回りに影響を与える要因

利回りには、影響を与えるいくつかの要因があります。
立地
一般的に、地方のアパートは家賃が低いですが、それ以上に地価が安いため、都市部のアパートに比べて利回りが高くなる傾向にあります。
例えば、都市部にある坪当たり300万円の土地に建つ2LDKのアパートの家賃が40万円、地方にある坪当たり30万円の土地に建つ同じ間取りのアパートの家賃が8万円だったとします。 この場合、地方の地価は都市部の10分の1ですが、家賃は5分の1となるため、相対的に地方のアパートの利回りが高くなります。
ただし、地方の方が都市部より利回りが高いからといって、必ずしも収益性が高く、安全であるとは限りません。 賃貸市場でみると、都市部では入居需要が高いため入居率が高くなりますが、地方では入居者が少なく、なかなか空室が埋まらないというケースもあります。 また、中長期的には地方の地価が下落する可能性が高く、キャピタルロス(売却により損失が生じること)が発生するリスクもあります。
このように、立地による利回りの差は、アパート経営におけるリスクの差を表しているとも言えます。
新築アパートと中古アパート
一般的に、不動産投資では中古アパートのほうが新築アパートよりも利回りが高い傾向にあります。 建物は築年数が経過すると、新築時より価格が下がっていきます。 その場合、家賃がアパートの価格の下落率よりも下がっていなければ、利回りは上昇します。
一方、新築アパートは新築プレミアムとして家賃を高く設定できる上、新築物件は入居者の人気も高いため、高い入居率を維持できることも期待できます。 また、新築物件は設備や仕様が新しいため、当面の間は大きな修繕費もかからず、安定した経営が可能です。 その反面、中古アパートは入居率の低下や修繕費の負担増加などのリスクがあり、収益が悪化しやすい点に注意が必要です。
このように、立地や新築・中古の区別によって利回りは変動しますが、必ずしも高い利回りと高い安全性が結びつくとは限らないことを留意しましょう。
その他の要因
空室の長期化や予測していない大規模な修繕などは、利回りを大きく低下させる要因となります。 また、自然災害や事件、事故などの発生は、利回りを下げるだけでなく、アパート経営の存続に大きく影響することさえあります。
賃貸オーナーとしては、こうしたリスクを事前に想定し、適切な予防策や対策を講じることで、利回りの維持につなげることが大切です。
利回りの見方と注意点
ここからは、利回りの見方と利回りを見る際の注意点について解説します。
もう一度、実質利回りの計算式を確認しましょう。
- 実質利回り
=年間の純収益÷アパートの取得価格×100
この計算式から、実質利回りとそれぞれの計算項目の関係性が分かります。

例えば、年間の純収益(全体)が増えれば実質利回りは上昇します。 一方で、経費が増えれば年間の純収益が減るため、利回りは低下します。 つまり、これらの計算項目を恣意的に変更することで、利回りをよく見せることもできるのです。
そのため、賃貸オーナーや投資家の立場としては、利回りを見たときに、その利回りが正しい根拠に基づいているかどうかを適切に判断する必要があります。
具体的には、次の点に注意をしながら利回りを確認しましょう。
アパートの価格に諸費用が含まれているか?
一般的に、広告に記載されている利回りは「表面利回り」であることはすでに紹介しましたが、その計算に用いられるアパートの取得価格は、物件価格のみを指します。 しかし、実際にアパートを取得する際には、物件価格以外にも、仲介手数料、登記費用、不動産取得税、印紙税、融資費用などの諸費用が発生します。
本来、利回り計算では、物件価格にこれらの諸費用を加えた価格を取得価格としなければいけません。 物件価格のみで計算した表面利回り【例1】と、物件価格に諸費用を加えた表面利回り【例2】を比較してみましょう。
【例1】物件取得価格に諸費用を含めない場合
表面利回り
= 480万円 ÷ 6,000万円 × 100 = 8%
【例2】物件取得価格に諸費用(300万円)含めた場合
表面利回り
= 480万円 ÷ 6,300万円 × 100 ≒ 7.62%
利回りの計算の分母にアパートの取得時の諸費用を含めると、含めない場合に比べて利回りは低くなります。 この違いに注意し、利回りを計算する際には、広告の利回り表示を鵜呑みにするのではなく、諸費用も含めた「アパートの取得価格」を分母として計算するようにしましょう。
利回りは変動する~当初の利回りだけを信じない
当初提示された利回りが、その時点では正しい根拠に基づいて信頼できる数値だったとしても、利回りはその後も変動します。
利回りが低下する変動要因としては、以下のものがあります。 それぞれの要因をあらかじめ事業計画書に織り込み、初期だけではなく、中長期的な利回りを確認することが大切です。
①家賃の下落
家賃が下落すると、利回りは低下します。 アパートは、一般的に築年数が経過すると家賃も徐々に下落していく傾向があります。 そのため、当初から家賃の下落率を事業計画書に織り込み、「〇年後の家賃」で計算した利回りも確認します。
②空室率の上昇
利回りを満室の前提で計算することは、リスクが高いといえます。
アパート経営で、入居率が最後まで100%ということはあり得ません。 そのため、常にアパートの空室率を見込んで利回りを計算することが必要です。
③借入金利の上昇
昨今のような金利の上昇は、返済額の増加を招きます。 特に変動金利の場合、金利が上がると返済額が増え、純収益が減少し、利回りの低下につながります。そのため、段階的に金利を引き上げて返済額を計算し、事業計画に反映させることが必要です。
④突発的な修繕費
利回り計算において、修繕費を経費として計上することが必要です。 新築アパートの場合、たとえば家賃の3%を修繕費として見積もることが一般的ですが、中古アパートの場合は、想定外の高額な修繕費が発生するケースがあります。 このような予想外の支出が発生すると、当初描いていた利回りが、全くの絵に描いた餅になってしまう恐れもあります。
雨漏りや水漏れは、突発的に発生し、予想以上の費用がかかる場合が多いため、実質利回りを大きく低下させる原因になります。 特に中古アパートの場合は、取得する前に建築士や専門家によるインスペクションを実施し、主要な構造や雨漏りについて問題がないかどうかを確認することが必須です。
アパート経営を始める際には、利回りだけでなく、修繕費やその他の指標も踏まえながら、総合的に判断を行なうことが大切です。
適正な利回りは何%?
アパート経営において、適正な利回りとは何%でしょうか。
実際のところ、正確な「適正利回り」は一概には決められません。 なぜなら、すでに解説してきたように、利回りの高さがそのままアパート経営の安全性に直結するわけではないからです。 たとえば、利回りが高いと喜んでいたら、立地としての将来性がなかった、というようなトレードオフの関係は起こりがちです。
ただし、ひとつの目安として、他の金融商品との比較で目指す利回りを求める方法があります。
たとえば、上場株式と比較するケースがあります。 現在東証プライム市場に上場している株式の平均配当利回りは2.3%程度です。 新NISAで株式運用を行う場合、配当には課税されないため全額受け取れますが、不動産投資では課税により30%手取りが減ると仮定すると、約3.3%(2.3%÷70%)の利回りが必要になります。 さらに不動産投資の場合、キャピタルロスが発生する可能性もあるため、より高い利回りを目指す必要が生じるケースもあります。
なお、「土地活用」の場合は、アパートの建築費用のみが初期投資額のため、土地と建物を購入する「不動産投資」よりも高い利回りが見込めます。
まずは、利回りで誤った判断をしないよう、利回りも含めた賃貸経営のリテラシーを高めることが、アパート経営の大切なポイントです。
所有する不動産の土地活用や不動産投資をお考えの方は、下記よりお気軽にご相談ください。

ファイナンシャルプランナー・終活アドバイザー・不動産コンサルタント
橋本 秋人
1961年東京都出身。早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。
30年以上、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当、その後独立。
現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続・終活などを中心に相談、コンサルティング、セミナー、執筆などを行っている。また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。
⇒橋本 秋人さんの記事一覧はこちら
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