本記事は「サブリースを見直すときに読む不動産オーナーのための判断講座」としてお届けする連載シリーズの第4回です。 賃貸物件を相続した方の中には、アパートやマンションの建て替えを検討している方も多いのではないでしょうか。 思い切って建て替えをするのであれば、親から引き継いだ物件をそのまま踏襲するのではなく、構造や規模も含めて抜本的に見直したいところです。 とくに賃貸住宅は、立地だけでなく構造(材料)も家賃査定や入居率に影響を及ぼすポイントです。 そのため、土地の立地条件や敷地規模に適した構造を選択することで、賃貸住宅をより収益性の高い資産へと再生することが可能です。 この記事では、木造や鉄骨造、鉄筋コンクリート造(RC造)などの構造別に見るアパートやマンションの建て替えについて解説します。
- 賃貸住宅の材料には、W造や軽量S造、重量S造、RC造がある
- 構造によって外壁の仕上げ材や共用部の設計が変わり、家賃査定にも影響を与える
- 免震構造を採用することで、物件の付加価値を高めることができる
資産3億円以上の経営者様へ
連載シリーズ
建て替えをする際の構造の選択肢
最初にアパートやマンションを建て替える際に選択できる主な構造について解説します。
選択できる構造の種類と特徴
アパートやマンションでは、主に木造(W造)や軽量鉄骨造(軽量S造)、重量鉄骨造(重量S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)の4つの材料の選択肢が考えられます。
軽量鉄骨造とは一般的に鉄骨の厚さが6mm未満の鋼材を用いた構造です。
一方、重量鉄骨造とは鉄骨の厚さが6mm以上の鋼材を使用した構造を指します。
材料におけるそれぞれの特徴は、下表のようになります。
| 材料 | 特徴 |
|---|---|
| 木造 | 主に2階建てに適している。建築費は安い。 |
| 軽量鉄骨造 | ハウスメーカーによっては3階建ても可能。 建築費は比較的安い。 |
| 重量鉄骨造 | 5階建て以下なら可能。柱の少ない広い空間を確保できるため、1階を店舗にするような物件に適している。 |
| 鉄筋コンクリート造 | 高層階の物件も可能。堅牢で耐風性や耐震性、耐久性、耐火性に優れており、防音性能も高い。 |
構造別の耐用年数と減価償却費
耐用年数とは、一般的に建物等の固定資産が使用に耐えうる期間のことです。
耐用年数には、実際に物理的に耐えられる「物理的耐用年数」と経済的な価値を維持できる「経済的耐用年数」、法律で定められた「法定耐用年数」等があります。
法定耐用年数とは、建物の減価償却費が計上できる期間のことです。
減価償却費とは、建物の取得原価を法定耐用年数で配分することで生じる会計上の費用のことを指します。 材料別に見る法定耐用年数は、下表の通りです。
| 材料 | 法定耐用年数 |
|---|---|
| 木造 | 22年 |
| 鉄骨造(3mm以下) | 19年 |
| 鉄骨造(3mm超4mm以下) | 27年 |
| 鉄骨造(4mm超) | 34年 |
| 鉄筋コンクリート造 | 47年 |
なお、法定耐用年数には、軽量鉄骨造や重量鉄骨造といった区分けはありません。
鉄骨造は鉄骨の厚みによって法定耐用年数が異なるため、特に厚さ6mm未満の軽量鉄骨造では、実際の鉄骨の厚みを確認する必要があります。
減価償却費は会計上の費用であり、計上している期間は課税所得を圧縮できるため、節税効果が期待できます。 たとえば、木造は22年しか減価償却費を計上できませんが、鉄筋コンクリート造は47年とより長期間にわたって減価償却費を計上できるということです。
構造別に見るコスト比較
材料別に見る建築費の相場は、下表の通りです。
| 材料 | 建築費の相場(坪単価) |
|---|---|
| 木造 | 坪70万円~100万円 |
| 軽量鉄骨造 | 坪100万円~130万円 |
| 重量鉄骨造 | 坪110万円~140万円 |
| 鉄筋コンクリート造 | 坪120万円~150万円 |
※相場はあくまでも目安であり、グレード・階数・規模・エリア・設備仕様などによって変動する可能性があります。
※2026年7月記事制作時点
耐震性を表す構造の種類
「構造」という言葉は、木造や鉄骨造など建物の材料を指すだけでなく、建物の耐震性能を表す際にも用いられます。
耐震性を表す代表的な構造は、下表の通りです。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 耐震構造 | 建築基準法の新耐震基準を満たしたうえで、建物自体の強度を上げ、地震の揺れに対抗した構造 |
| 制震構造 | 建物に地震エネルギーを吸収する制振部材を組み込むことで、地震発生時の揺れを軽減させる構造 |
| 免震構造 | 建物と基礎の間に免振装置を設置し、地震のエネルギーが建物に直接伝わらないようにする構造 |
耐震性は高い順に並べると、「免震構造」「制震構造」「耐震構造」となるのが一般的です。
現行の建築基準法を遵守して建物と建てると、基本的には耐震構造になります。
一方、免震構造や制震構造は、現行の建築基準法で定められた最低基準を上回る耐震性能を確保するために採用される構造です。
建築費に関しては、耐震構造を100とした場合、制震構造は概ね105程度、免震構造は概ね110程度になるとされています。
構造が家賃査定に与える影響
家賃査定の結果は、立地や設備だけでなく、建物の構造によっても左右されます。
この章では、構造が家賃査定に与える影響について解説します。
材料
材料別に家賃が高くなる順番で並べると、「鉄筋コンクリート造」「重量鉄骨造」「軽量鉄骨造」「木造」となるのが一般的です。
鉄筋コンクリート造は、木造に比べると防音性・遮音性が高く、地震時の揺れも小さくなります。
賃貸住宅では上下左右の部屋からの音を気にする人が多いため、防音性能の高い鉄筋コンクリート造の方に需要が集まりやすく、木造よりも家賃が高く設定しやすい傾向があります。
外壁の仕上げ材
鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造は、木造や軽量鉄骨造に比べて地震時の揺れが小さいため、外壁にタイルや石といった重い仕上げ材を使用しやすいです。
タイル張りや石張りの外壁は高級感を演出しやすく、建物の資産価値や見た目の印象向上にもつながります。 そのため、高級感のある外観を実現しやすい鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造の物件は、家賃が高くなる傾向があります。
共用部の設計
木造や軽量鉄骨造は2~3階建て以下のアパートに使用されることが多く、鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造は4~5階建て以上のマンションで採用されるケースが一般的です。
2~3階建て以下のアパートは、集合玄関やエレベータがなく、共用部が外階段と外廊下しかない簡素な物件が多いです。
一方で、4~5階建て以上のマンションは、オートロック付のエントランスやエレベータ、宅配ボックス付の集合ポスト等があり、共用部が充実している物件が多くあります。
特に、オートロック付や宅配ボックス、24時間利用可能ゴミ置き場は物件に付加価値を与える人気の共用設備です。
このような共用部を設けやすい鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造の4~5階以上のマンションは、入居者にとっての利便性や安全性が高く評価されるため、家賃も高くなりやすいといえます。
条件別に見るおすすめの構造

この章では、条件別に見るおすすめの構造について解説します。
中心市街地の広めの土地なら「免震+RC構造」
免震構造は、揺れの力を大きく逃がすために、建物の外周部にクリアランス(十分な空間)を設ける必要があります。そのため、ある程度広い敷地が求められます。
中心市街地の広めの土地であれば、免震構造の建物を建てても、家賃に付加価値を反映させることができ、投資を十分に回収することができます。
立地が良く4階建て以上の建物なら「重量S造またはRC造」
立地の良い場所であれば、中高層以上の建築物を建てられる可能性があります。
そのため、好立地の土地では、4階建て以上の建物に対応しやすい重量鉄骨造(重量S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)で建てるマンションがおすすめです。
また、重量S造やRC造は共用部を充実させやすく、高い家賃設定もしやすいというメリットがあります。
郊外の土地なら「木造または軽量S造」
郊外は中心市街地に比べて家賃水準が低く、賃貸需要も比較的弱い傾向があります。
そのため、建築費を抑えながら、地域の需要に合った規模の物件を計画することが重要です。
郊外の土地では、建築コストを抑えやすい木造や軽量鉄骨造(軽量S造)による2〜3階建て以下のアパートが適しているといえます。
まとめ
以上、構造別に見るアパートやマンションの建て替えについて解説してきました。
家賃査定は構造の材料だけで決まるものではありません。材料に応じて採用しやすくなる外壁の仕上げ材や、共用部の設計・設備なども家賃に影響を与える重要な要素です。
また、建て替えに適した構造は、土地の立地条件や敷地規模によって異なります。そのため、それぞれの条件に応じて最適な構造を選択することが重要です。
アパート・マンションの建て替えの概算費用について知りたい方は、下記よりお気軽にご相談ください。
資産3億円以上の経営者様へ
不動産鑑定士
竹内 英二
不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容には執筆者の解釈や見解が含まれる場合があり、正確性や完全性を保証するものではありません。
具体的な判断や行動にあたっては、必要に応じて専門家へご相談ください。
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