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家のコンディションを把握する「ホームインスペクション(住宅診断)」は必要?

更新日:2023.07.28

家のコンディションを把握する「ホームインスペクション(住宅診断)」は必要?

ホームインスペクションは、物件に大きな問題が潜んでいないかを専門家が見てくれる制度です。売主・買主双方にメリットのある制度で、購入前や売却前には1度調査してもらうのがおすすめ。専門会社を選ぶ際には不動産会社のあっせんを利用すると安心です。

  • ホームインスペクションは専門家に対象住宅を審査してもらう制度のこと
  • ホームインスペクション会社を選ぶなら不動産会社のあっせんがおすすめ
  • ホームインスペクションを利用するなら契約前や物件が完成する前がよい

もくじ

  1. ホームインスペクションとは

    1. 中古住宅・リフォームトータルプランとは

  2. 利用するメリット

    1. 買主のメリット

    2. 売主のメリット

  3. チェック項目や費用について

    1. 時間に余裕を持つ

    2. 不動産会社にあっせんしてもらうとよい

    3. すべての瑕疵を明らかにするものではない

    4. ホームインスペクションの費用について

  4. ホームインスペクションを依頼する流れ

    1. ホームインスペクションを利用するタイミングについて

  5. ホームインスペクションを利用し安心して住宅を売買しよう

 

住宅を購入するときや住宅を売りに出すとき、その物件に不備がないかどうかは気になるところでしょう。自分では確認しきれない部分を専門家に見てもらえる「ホームインスペクション(住宅診断)」が、近年普及しています。

そこで今回は、ホームインスペクションの制度の説明やメリット、費用や利用するタイミングについてご紹介します。これから住宅を購入・売却する方で、ホームインスペクションの利用を検討しているのであれば、ぜひ参考にしてみてください。

ホームインスペクションとは

ホームインスペクション(住宅診断)とは、建物の専門家が住宅の劣化状況や欠陥等を検査し、改修すべき箇所や時期、費用の助言も行う業務を指しています。住宅の購入前や自宅を売り出す前、居住中の自宅について調べる場合など、利用するシーンはさまざまです。

最近ではインスペクションという呼び名で、不動産仲介会社が買主に物件の状況を確実に伝えるために利用することも。診断の方法は住宅のあらゆる場所を目視で確認するのが基本ですが、機材を使用して判断する方法もあります。

中古住宅・リフォームトータルプランとは

国土交通省が出している「中古住宅・リフォームトータルプラン」とは、中古住宅やリフォーム市場の倍増を図るために作られたプランです。住宅市場の姿を、新築中心だったものから中古住宅やリフォームした住宅を増やしてストック型にしようと考えたのです。今後は、新築の住宅を建てるよりも、住み心地がよく定額で購入できる中古住宅に注目が集まっていくと考えられます。

このプランではホームインスペクションが推奨されており、重要項目として普及していくことが期待されています。すでにアメリカではホームインスペクションを行うことが普及しており、日本にもこの常識を取り入れようとしています。

利用するメリット

国土交通省が提示しているプランでも推奨されているホームインスペクションですが、専門家に依頼するメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。買主と売主、双方の目線からメリットを見ていきましょう。

買主のメリット

買主の最大のメリットとしては、第三者の専門的な意見をもらうことができ安心して住宅を購入できることでしょう。

新築住宅を購入する

新築で戸建て住宅を建てる際の状況調査を行うことができるので、引き渡しの立会検査の際に専門的な意見をもらえます。また、注文住宅を建築する場合や新築住宅を完成前に契約できた場合には、構造体の検査をすることも可能です。

防火基準や断熱材の設置については住んでから判断するのが難しいため、工程のなかで見てもらえるのは大きなメリットと言えるでしょう。問題が発覚した際には解決策を提案してくれることもあるので、納得いく形で住宅を建てられます。

中古住宅を購入する

すでに住宅が完成している場合、品質を確保するためにホームインスペクションを利用することになります。実際に住んでみたら、シロアリによる床下の腐食や家の傾きなど重大な問題が出てくる可能性も少なくありません。売主が知らずに販売していることもあるため、事前に専門的な知識をもらうことで安心して中古住宅を購入できるでしょう。

売主のメリット

売主から見た最大のメリットは、売却物件に何か欠陥があることを事前に認識できるという点です。欠陥を買主に告知して売却できるようになるため、のちのち買主から問題を指摘されることを防ぐことができます。

売却物件の状況を明らかにできる

2020年の4月より、買主を保護する目的で「契約不適合責任」が作られました。これは、契約の目的に適合しないものを売った場合に売主が責任を負うというものです。売却後に買主に告知していなかった欠陥が見つかると、修繕のための費用や損害賠償金を請求される可能性があります。

責任追及を受けないためには、契約書に売却する物件の欠陥の内容を明記し、売主は契約不適合責任を負わないことを約定しなくてはなりません。正確な情報を書き込むには、ホームインスペクションで建物を調査してもらう必要が出てきます。専門家による調査を受けて契約書を作成すれば、契約不適合責任に問われるリスクを下げられるでしょう。

購入してもらいやすくなる

ホームインスペクションを受けておけば、専門家が判断したことの証明になるので、買主に安心感を与えることができます。その結果、買い手がつきやすくなることも期待できます。

瑕疵担保保険を利用できる

「瑕疵(かし)」とは通常有すべき品質を欠く欠陥のことを意味しており、瑕疵担保保険に入っていれば売却後に物件に瑕疵が見つかった場合に補修費用の一部を保険金によって賄うことができるのです。瑕疵担保保険に加入するには、新耐震基準に適合していて有資格者が行うインスペクションに合格している建物である必要があります。

瑕疵担保保険は修繕費をカバーできるだけでなく、買主にとってもメリットがある制度です。1981年12月31日以前に建てられた建物であっても住宅ローン控除や登録免許税の軽減などの優遇を受けることができ、双方にとってメリットとなるため、買い手がつきやすくなることもあります。



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チェック項目や費用について

チェック項目や費用について

ホームインスペクションでチェックしてもらえる部分の基準は、国土交通省の「既存住宅状況調査」で決められています。たとえば、ひび割れや傾き、雨水の侵入、シロアリによる床下の腐食などを行います。建物の外部内部はもちろんのこと、床下や屋根裏まで見てもらえます。

ただ、「既存住宅状況調査」が基本になっているものの、専門会社によってチェック項目は異なります。そのため、どのようなことをどのくらいの精密度で知りたいのか、何の目的でホームインスペクションを受けるのかによって利用する専門会社が変わってくるでしょう。
続いては、ホームインスペクションを利用するうえの注意点をご紹介します。

時間に余裕を持つ

ホームインスペクションの調査は1~3時間程度で終わりますが、当日までの段取りや報告書を受け取る工程も含めると、約2週間かかります。地方ではホームインスペクターが少ないこともあり、通常よりも手配に時間がかかるケースもあります。そのため、時間に余裕をもってホームインスペクションの手配を始めることが重要です。
ただしホームインスペクションは義務ではないため、販売活動と並行して行うことも可能です。

不動産会社にあっせんしてもらうとよい

民間の検査会社もホームインスペクションや住宅診断を行っていますが、これらの検査が瑕疵担保保険の加入条件を満たしているとは限りません。
瑕疵担保保険に加入するには、「既存住宅状況調査技術者の資格を有する人」で「住宅瑕疵担保責任保険法人の登録検査事業者」によるホームインスペクションでなくてはなりません。そのため、専門会社を選び間違えるとホームインスペクションを受けたにもかかわらず、瑕疵担保保険に加入できないケースもあります。

効果的なホームインスペクションを受けるためにも、不動産会社にあっせんしてもらった専門会社を利用するのがおすすめです。

すべての瑕疵を明らかにするものではない

ホームインスペクションを受ければ契約不適合責任を免れる対策になりますが、決してすべての瑕疵を明らかにするものではありません。瑕疵にも種類があり、心理的な瑕疵や環境的瑕疵といったものがあります。

心理的な瑕疵がある状態は、過去に自殺や事件、事故などが起きており、心理的な面で住み心地がよくない状態のことを指しています。環境的な瑕疵がある状態は、騒音や異臭、近くに反社会的な勢力の事務所があるなど、快適な生活が周辺環境によって害される恐れがあることを意味しています。

これらの瑕疵を契約書に書いていなかった場合、契約不適合責任を負うことになりますが、ホームインスペクションの調査対象ではありません。そのためホームインスペクションを実施したから契約不適合責任をすべて免れるということではないのです。契約不適合責任を回避するには、心理的瑕疵や環境的瑕疵も含めて瑕疵について明記しましょう。

ホームインスペクションの費用について

ホームインスペクションを利用するときの費用相場は約5万円~10万円と言われています。対象となる物件が戸建てかマンションか、面積や専門会社によっても異なるので、先に確認してから調査してもらうようにしましょう。

ホームインスペクションの費用を負担するのは依頼した側なので、売主が実施すれば売主が負担することになり、買主が実施すれば買主負担となります。どちらが行っても問題はありませんが、売却前に買主が実施する際には売主の承諾が必要となるので注意してください。

ホームインスペクションを依頼する流れ

ホームインスペクションを依頼する流れ

ホームインスペクションを利用する一般的な流れについて解説していきます。まずは、ホームインスペクションを依頼する会社に問い合わせて、調査内容の決定や日程調整、見積もりなどをしてもらいます。購入前の住宅である場合には、売主の許可が必要になるので、あらかじめ許可を取っておくとその後の手続きがスムーズに進むでしょう。

専門会社との日程調整などが終わったら、調査に必要な書類の準備を行います。平面図や契約書などを取り交わしますが、実行日まで数日しかない場合はメールやFAXなどで早めに送るようにしましょう。

ホームインスペクションの実施日になったら、待ち合わせをして調査してもらいます。その後代金の支払いや領収書、診断結果をもらって終了です。詳細は会社によって異なるので、依頼する専門会社に事前に確認しておきましょう。

ホームインスペクションを利用するタイミングについて

ホームインスペクションを利用するケースはさまざまで、買主が購入前に利用したり売主が売却前に利用したりと、立場や物件の状況によっても異なります。ここからは、ケース別にホームインスペクションを利用するタイミングについてご紹介します。

建築前の新築住宅の場合

建築工事が始まる前の物件を買う場合は、対象の建物がありません。ホームインスペクション会社の手配を先に済ませておき、工事が始まってから建築途中の検査を依頼するのがおすすめです。完成前に何度か専門家に見てもらうことができるので、安心して建物を作ることができるでしょう。

建築途中の新築住宅の場合

完成後では確認できない範囲もチェックできるだけでなく、調査結果を判断材料として購入するか否かを決めることができるのもメリットでしょう。

ただ、工程によってはホームインスペクションに適していない段階の建物もあるので、依頼する会社に相談してどのタイミングで調査するのかを決めましょう。

完成後の新築住宅の場合

すでに建物が完成している物件の購入を検討しているのであれば、売買契約を締結する前に調査するのがおすすめです。購入前に調査したほうがいい理由として、問題が見つかったときに購入を中止することができるからです。また、調査結果を受けてから購入を判断することができるのもメリットでしょう。

しかし、契約してから調査するのが手遅れということではありません。引き渡し前のタイミングで調査をして何か瑕疵が見つかったときには、引き渡し前に売主側に補修してもらえるためです。

中古住宅の場合

中古住宅を購入する場合もすでに建物が完成した状態なので、契約前に調査をするのがおすすめです。事前に売主がホームインスペクションを受けている場合もありますが、買主側でも調査を依頼しておくとより安心して購入できるでしょう。

また、物件の購入は決まっていて入居後のリフォームを考えている場合には、購入後や入居後のホームインスペクションの利用でも問題ありません。しかし、購入後に瑕疵が見つかった場合は補修工事などを行わなくてはならないため、できるだけ購入前に行ったほうがよいでしょう。

ホームインスペクションを利用し安心して住宅を売買しよう

ホームインスペクションは、売主・買主ともにメリットがある制度です。売主としては契約不適合責任を回避できる可能性が高まるだけでなく、瑕疵担保保険の加入や安心して住宅を購入できるなど、さまざまな利点があります。
満足いく売買契約を締結するためにも、ホームインスペクションを活用しましょう。



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不動産鑑定士

竹内 英二

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。
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