- 離婚時のマンション売却にはメリットもデメリットもある
- 財産分与・名義・売却コストなどを総合的に判断することが大切
- 早めに準備を進めることでスムーズに対応しやすくなる
離婚でマンション売却すべき?と迷ったら知っておきたい基礎知識
「離婚の際、マンションを売却するか?しないか?」を判断する前に、知っておきたい事項から見ていきましょう。
3つのポイントがあります。
- 財産分与
- マンションの名義と住宅ローンの名義
- 売却する/しない メリット・デメリット
財産分与
1つめのポイントは「財産分与」です。
簡単にいえば、結婚後に購入したマンションであれば、配偶者の収入で購入した配偶者名義のマンションであっても、財産分与の対象となります。
以下は法務省のWebサイトからの引用です。
夫婦のいずれか一方の名義になっている財産であっても、実際には夫婦の協力によって形成されたものであれば、財産分与の対象となります。
例えば、婚姻中に夫の収入で土地建物を購入して夫の単独名義になっている場合であっても、妻が家事等を分担して夫を支えていたときは、その土地建物は、実質的には夫婦の財産といえると考えられます。
出典:法務省 「財産分与」
このような夫婦の財産であるマンションを、現金に換えてお金で財産分与をしたい場合には、マンション売却を検討することになります。
「財産分与をいつするか?」のタイミング(時期)は、2つの選択肢があります。
- 離婚と同時に財産分与する
- 離婚した後に財産分与する
離婚までに協議をしておき離婚と同時に分与してもよいですし、離婚をしてから分与を請求することもできます。
ただし、離婚から2年が経過すると、家庭裁判所に申立てをすることができなくなりますので、ご注意ください。
出典:法務省 「財産分与」
上記のとおり注意点として、「財産分与の申立ては、離婚後2年以内」の期限があることを、把握しておきましょう。
参考:法務省 「離婚を考えている方へ」
名義
2つめに確認しておきたいポイントは「名義」です。
マンションの売却を考えるときには、「(1)不動産登記の名義」と「(2)住宅ローンの名義」を区別して認識し、それぞれ誰になっているか確認しておく必要があります。
(1)不動産登記の名義
「不動産登記の名義」は、マンションの所有者を示すものです。登記簿に所有者として住所・氏名が記載されているのは誰か、確認します。
所有者は、マンションを取得し登記したときに受け取った、登記済証(いわゆる権利証)に書かれています。
配偶者の単独名義になっているケースや、夫婦の共有名義になっているケースがあります。
注意したいのは、共有名義のマンションを売却するには、共有の所有者全員の同意が必要なことです。
たとえば、夫婦の共有名義のマンションの場合、「夫は売りたいと主張し、妻は売らずに住み続けたいと主張している」という状況では、マンション売却を進められません。
あるいは、「購入時に頭金を夫の父親に出してもらったので、夫の父親も名義に入っている」など、夫婦以外の所有者がいる場合、その人物の同意が必要です。
(2)住宅ローンの名義
住宅ローンの残債があるマンションの場合、住宅ローンの名義は誰になっているか、確認します。前述の「不動産登記の名義」は、比較的簡単に変更可能です(法務局へ所有権移転登記を申請します)。
一方、「住宅ローンの名義」は、基本的に変更できないと考えておきましょう。
住宅ローンは、申込者の信用情報や返済能力などの審査を経て、審査を通った申込者と金融機関との間で、契約が締結されます。
そのため、名義人(=住宅ローンの契約者)の変更を金融機関が認めることは、まずありません。
売却する/しない メリット・デメリット
財産分与、名義に続いて、3つめに確認しておきたいのは、「売却する場合・しない場合、それぞれのメリットとデメリット」です。
詳しくは後述しますが、一長一短があります。
▼ 売却するメリットとデメリット
○ メリット | ●わかりやすく財産分与できる ●気持ちの切り替えをしやすい ●相手との関係を断ちやすい |
---|---|
× デメリット | ●税金や手数料などのコストがかかる ●希望価格でスムーズに売却できるとは限らない ●新しい住まいを用意する必要がある ●思い入れや愛着があると売却が難しい ●共有名義の場合は全員の合意が必要となる |
▼ 売却しないメリットとデメリット
○ メリット | ●住み慣れた環境で引き続き生活できる ●売却にかかるコストを支払う必要がない |
---|---|
× デメリット | ●元配偶者の住宅ローン支払いが滞るリスクがある ●相手との関係を断ちにくい ●財産分与の方法で合意しにくい場合がある |
一概に「どちらがいい」とは言い切れないため、ご自身のケースに合わせて、最適解を十分に検討することが大切です。
以下では、そのヒントとなるように、売却する場合・しない場合のメリットデメリットを、詳しく解説します。 続けてご覧ください。
離婚でマンションを「売却する」メリットとデメリット
まず、離婚でマンションを「売却する」場合のメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
売却するメリットとして挙げられるのは、以下の3つです。
○ わかりやすく財産分与できる
1つめのメリットは「わかりやすく財産分与できる」です。
マンションそのままでは分け合えませんが、売却して現金化すれば、明確な金額で分けられます。財産分与の内容が単純明快になりますから、分与方法で揉めたり、トラブルになったりするリスクが、低くなります。
○ 気持ちの切り替えをしやすい
2つめのメリットは「気持ちの切り替えをしやすい」です。
売却しようとしているマンションに、結婚中のさまざまな思いがある場合には、手放すことで心機一転できることが多いでしょう。
○ 相手との関係を断ちやすい
3つめのメリットは「相手との関係を断ちやすい」です。
マンションを売却して引越しをすれば、その後の居住地を相手に知らせない選択も可能です。
離婚後も続く住宅ローンの支払いなど、間接的な関係も、清算できます。
「できる限りの事柄を清算して、離婚後は関係を断ちたい」と希望する場合には、マンションを売却したほうが希望を実現しやすくなります。
デメリット
一方、売却するデメリットとしては5つ、挙げられます。
× 税金や手数料などのコストがかかる
1つめのデメリットは「税金や手数料などのコストがかかる」です。
マンション売却にはお金がかかるため、財産分与の対象となる財産は、売却コストや税金を差し引いた残りに目減りします。
▼ 税金の例
- 所得税
- 住民税
- 印紙税
- 登録免許税
▼ 費用の例
- 仲介手数料
- 住宅ローン一括返済手数料
- 司法書士に支払う報酬
- ハウスクリーニング費用
- 引越し費用
マンション売却に関わる税金の詳細は「マンション売却の税金はいくら?いつ払う?賢く節税する対策ポイント」を、費用は「マンション売却に必要な手数料はいくら?基本からわかりやすく解説」をご覧ください。
× 希望価格でスムーズに売却できるとは限らない
2つめのデメリットは「希望価格でスムーズに売却できるとは限らない」です。
マンションを購入したときより市場価格が下がっている場合、購入時に支払った金額よりも、低い金額で売却することになります。あるいは、買い手が見つかるまでに時間を要することもあり、希望の時期までに売却できるとも限りません。
× 新しい住まいを用意する必要がある
3つめのデメリットは「新しい住まいを用意する必要がある」です。
居住中のマンションを売却するなら、売却後の新しい住まいをどうするか、検討する必要があります。小さなお子さんがいる場合には、離婚による家族の変化と、住環境の変化が同時に起きることになり、配慮が必要になることもあるでしょう。
× 思い入れや愛着があると売却が難しい
4つめのデメリットは「思い入れや愛着があると売却が難しい」です。
マンションに対して、かけがえのない思い出や、家族の歴史の一部としての特別な思いがある場合には、売却の決断が難しいかもしれません。
夫婦は売却を希望していても、お子さんが反対するケースもあります。
× 共有名義の場合は全員の合意が必要となる
5つめのデメリットは「共有名義の場合は全員の合意が必要となる」です。
先ほど「名義」の説明で述べたとおり、夫婦の共有名義の場合には、どちらかが反対すると、売却を進めるのが難しくなります。あるいは、両親・義両親など夫婦以外の人物が名義に入っていれば、全員の合意を取る必要があります。
離婚でマンションを「売却しない」メリットとデメリット
続いて、離婚でマンションを「売却しない」場合のメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
売却しないメリットとして挙げられるのは、以下の2つです。
○ 住み慣れた環境で引き続き生活できる
1つめのメリットは「住み慣れた環境で引き続き生活できる」です。
お子さんがいる場合には、居住中のマンションをそのまま維持することで、引越しによる環境の変化を回避できます。慣れ親しんだ日常生活の継続が、離婚という困難な時期を乗り越える手助けとなるケースもあるでしょう。
家族の中に、マンションに対し感情的な愛着を持つ人がいる場合には、「マンションとの別れ」というつらい経験をしなくて済むことも、挙げられます。
○ 売却にかかるコストを支払う必要がない
2つめのメリットは「売却にかかるコストを支払う必要がない」です。
先ほど、マンションを売却するデメリットとして挙げたとおり、マンションを売却する際には、手数料や税金などの出費があります。売却しない選択をすると、それらのコストが不要になる分、経済的なメリットがあるといえます。
デメリット
次に、デメリットを見ていきましょう。3つ挙げられます。
× 元配偶者の住宅ローン支払いが滞るリスクがある
1つめのデメリットは「元配偶者の住宅ローン支払いが滞るリスクがある」です。
これは、住宅ローンの契約者(名義)と、マンションに住み続ける人が別の場合に、注意したいポイントです。
たとえば、夫が住宅ローンの契約者で返済義務を負っており、妻と子がマンションに住み続けるとします。離婚後、元夫による住宅ローンの返済が滞ると、最悪なケースではマンションが差し押さえられ、競売にかけられます。マンションは競売で購入した人の所有となり、妻と子はマンションから立ち退きを強いられます。
「慰謝料や養育費の代わりとして、住宅ローンの支払いを相手にしてもらう」という選択をする人もいますが、ローンの支払いが滞ったときのリスクについて、十分に考えておく必要があります。慰謝料や養育費であれば、法的な手続きによって請求の手続きをとります。
しかし、住宅ローンは返済先が金融機関のため、延滞すると金融機関の判断によって、マンションを差し押さえられるリスクがあるのです。
× 相手との関係を断ちにくい
2つめのデメリットは「相手との関係を断ちにくい」です。
ご自身がマンションに住み続ける場合、相手に現住所を知られたままとなります。
DVの問題を抱えている場合や、復縁を迫られている場合などは、マンションは売却して関係性を清算したほうがよいケースも多いでしょう。
× 財産分与の方法で合意しにくい場合がある
3つめのデメリットは「財産分与の方法で合意しにくい場合がある」です。
マンションを売却して現金化した場合の財産分与は、お金を分け合うのでわかりやすいのですが、現物のままの分与では、どう分けるかが難しくなります。ほかの財産との兼ね合いも見ながら、トラブルなくお互いに納得できる分与を検討する必要があります。
離婚でマンション売却を考えるときの注意点
最後に、離婚でマンション売却を考えるときに注意したいポイントについて、お伝えします。
個々のケース別に最適な方法は変わる
まず念頭に置きたいのは、「個々のケース別に最適な方法は変わる」ということです。
売却する・しないのどちらを選ぶべきかは、ほかの財産や離婚事由、家族の状況などによって、大きく変わってきます。
慰謝料や養育費との兼ね合いもあるため、総合的に判断しなければなりません。
自分だけで判断しづらいときには、弁護士などの専門家にアドバイスを求めることをおすすめします。
マンション売却の流れを把握して準備を進める
マンションの売却には時間がかかるので、売却の可能性が出た時点(売却の決断をする前)から、準備だけは進めておきましょう。
以下は、マンション売却の流れです。
準備をしていれば、「売却する」と決めたらすぐ動けます。
売却を有利に進められる可能性が、高まります。
詳しくは、「マンション売却の流れ10ステップとは?初心者さんにわかりやすく解説」にて、ご確認ください。
査定やコストの算出は早めに行う
手元にどれくらいのお金が残るのか把握するために、売却見込価格の査定や、諸費用の算出は、早めに行っておきましょう。
▼ 売却にかかる主な費用(一部抜粋)
- 仲介手数料
仲介を依頼した不動産会社へ媒介契約に基づいて支払う。 - 抵当権抹消費用
住宅ローン残債があり、抵当権が設定されている場合に抹消登記の登録免許税が必要となる。抵当権の抹消を司法書士に依頼する場合は、司法書士の報酬も必要となる。 - 不動産売買契約書の印紙税
不動産の売買契約書に印紙を貼り、割り印を押すことで納税する。 - 譲渡所得税
物件の売却により利益が出た場合、所得税と住民税がかかる。 - その他
引っ越し費用や不要品の処分費用等も発生する。
出典: 不動産ジャパン
マンション売却の査定は、下記「不動産売却査定はこちら」をぜひご活用ください。
まとめ
本記事では「離婚のときのマンション売却」をテーマに解説しました。
▼ 売却するメリットとデメリット
○ メリット | ●わかりやすく財産分与できる ●気持ちの切り替えをしやすい ●相手との関係を断ちやすい |
---|---|
× デメリット | ●税金や手数料などのコストがかかる ●希望価格でスムーズに売却できるとは限らない ●新しい住まいを用意する必要がある ●思い入れや愛着があると売却が難しい ●共有名義の場合は全員の合意が必要となる |
▼ 売却しないメリットとデメリット
○ メリット | ●住み慣れた環境で引き続き生活できる ●売却にかかるコストを支払う必要がない |
---|---|
× デメリット | ●元配偶者の住宅ローン支払いが滞るリスクがある ●相手との関係を断ちにくい ●財産分与の方法で合意しにくい場合がある |
本記事を参考にしていただき、離婚に向けた悩みごとをひとつずつ、解消していただければと思います。
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