
土地活用の選択肢として、ホテル経営(宿泊施設経営)が今、注目を集めています。 コロナ禍を経て回復傾向にあり安定した収益が見込める宿泊業は、土地所有者にとって非常に魅力的な選択肢です。 特に、これからの時代に向けて「自分の土地をどのように活用するか」を真剣に考えている方にとって、ホテル経営は一つの理想的な答えと言えるでしょう。 この記事では、ホテル経営の事業モデルやビジネスホテル経営のメリット・デメリット、開業に必要な手続きについて詳しく解説します。 土地活用を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
- ビジネスホテル経営は、収益性が高い土地活用の1つとして人気が高い
- ホテルはインバウンドの影響を受けやすいという側面がある
- ホテルを開業するには、実績のある施工会社へ相談することが第一歩となる
ホテルの経営方式
土地活用の方法としてホテル事業は魅力的な選択肢の一つですが、ホテルの経営スタイルにはいくつかの経営方式があります。 そのため、それぞれの事業モデルの特徴をしっかり理解することが重要です。
まずは、ホテル事業の経営方式について解説します。
所有直営方式
所有直営方式は、土地所有者であるオーナーが施設を所有し、自社で経営・運営を行う形態です。 この方式は、オーナーの意向に沿った運営が可能である反面、経営リスクや雇用リスクもすべて負担する必要があります。 そのため、高い収益が期待できる一方で、リスク管理が重要となるハイリスク・ハイリターン型の投資形態です。
▼特徴
- オーナーが施設を所有し、経営・運営をすべて自社で行う
- オーナーの意向に沿った運営が可能
- 経営リスク・雇用リスクをすべて土地所有者が負担
- ハイリスク・ハイリターン型の投資形態
▼こんな方におすすめ
- 経営や運営のノウハウを持っている
- 高い収益を狙いたい
- 運営に関する自由度を重視する
賃貸借直営方式
賃貸借直営方式は、ホテルマネジメント会社(かつホテル経営会社)がホテルオーナーから施設を賃借し、経営・運営を行います。 オーナーにとっては、売上変動の影響を受けにくく、安定した賃料収入が得られるメリットがあります。 一方、運営には関与できないため、運営を完全に任せたいオーナー向けの方式です。
▼特徴
- ホテルマネジメント会社が施設を賃借して運営を行う
- オーナーは固定賃料を得るため、収益が安定しやすい
- オーナーは運営には関与できない
▼こんな方におすすめ
- 安定した収入を希望する
- 運営をプロに任せたい
- 売上変動リスクを抑えたい
運営委託方式
運営委託方式は、ホテルマネジメント会社が、売上やGOP(営業総利益)の一定割合のフィー(報酬)をベースに、ホテルオーナーからホテル運営を受託する形態です。 この方式は、運営ノウハウがないオーナーでも効率的な経営が可能となる一方で、オーナーが経営リスクを負う点で注意が必要です。 所有直営方式と同様のリスクが伴うため、収益とリスクのバランスを検討することが重要です。
▼特徴
- ホテルマネジメント会社に運営を委託し、売上や利益の一部をフィーとして支払う
- 効率的な運営が可能
- 経営リスク・雇用リスクをオーナーが負う
▼こんな方におすすめ
- 運営ノウハウが不足している
- 経営の専門家に頼りたい
- リスクを取ってでも収益の最大化を目指したい
賃貸借+運営委託方式
賃貸借直営方式と運営委託方式を組み合わせたこの方式は、リスクを抑えつつ安定した収益を目指すオーナーに最適です。 借り主が運営の専門性を活かしながら、所有者にはローリスク・ローリターン型の投資形態として利用されています。
▼特徴
- 賃貸借方式と運営委託方式を組み合わせた形態
- オーナーはリスクを抑えつつ安定収益を得られる
- 借り主が運営委託料を支払うため、オーナーへの収益性は低くなりやすい
▼こんな方におすすめ
- ローリスク・ローリターンを希望する
- プロの運営による安定性を重視する
- 初めてホテル経営に参入する
フランチャイズ方式
フランチャイズ方式は、ホテルオーナーが有名ブランドのフランチャイズ契約を結び、運営を行う形態です。 ブランド力を活用することで集客力が高まり、収益の向上が期待できます。 ただし、契約条件やブランド基準に従う必要があるため、自由度は限定されます。
▼特徴
- 有名ブランドと契約し、そのブランド名でホテルを運営する形態
- ブランド力を活用して集客力が向上する
- ブランド基準や契約条件に従う必要がある
▼こんな方におすすめ
- ブランドの信頼性を活かして運営したい
- 集客力を短期間で高めたい
- ブランドの基準を守れる運営体制が整っている
事業用定期借地方式
事業用定期借地方式は、土地所有者が土地を一定期間(10年以上50年未満)借地契約で貸し出し、事業者がその土地にホテルを建設して運営するモデルです。 この方式では、所有者は土地の所有権を保持しつつ、安定した収益を得ることができます。
▼特徴
- 長期間にわたる賃貸契約で安定した賃料収入が得られる
- 土地の所有権を維持し、土地価格が上昇した場合、その価値を享受できる
- ホテルの運営は事業者に任せるため、オーナーは運営リスクを負わない
▼こんな方におすすめ
- 長期的に安定した収益を得たい
- 運営に関わらず、土地の価値を維持しながら収益を得たい
- 建物投資をしたくない
土地を貸し出す所有者として、ホテル事業のモデルを選ぶ際には、それぞれの利点とリスクをよく理解することが重要です。 自分の資産運用の目的やリスク許容度に合ったモデルを選ぶことで、長期的な安定収益を確保できる可能性が高まります。
土地活用としてのホテル・宿泊施設の特徴
ホテルにはビジネスホテルやリゾートホテル、カプセルホテル等の様々な種類がありますが、土地活用ではビジネスホテルが主たる選択肢となることが多いです。
ここからは、土地活用としてビジネスホテルを経営する特徴について解説します。
一棟貸しとなることが通常
ビジネスホテルは、ホテル事業者への一棟貸しとなることが通常です。
一棟貸しであるため、設計や仕様は全て出店するホテル事業者の意向によって決まります。
工事に着工する前に事業者が決定され、その後に建物の建築に着工することが通常の流れです。
一定数の部屋が確保できることが必要
ビジネスホテルは、立地だけでなく一定数の部屋が確保できることが出店の条件になることが通常です。 中心市街地にあったとしても、土地が小さければ出店できる可能性は低いため、ビジネスホテルを誘致するには相応に広い土地が必要です。
ビジネスホテルの出店目安としては、一般的に200室以上の部屋を確保できることが条件とされています。
家賃は住宅より高くオフィスより低い
地域にもよりますが、ビジネスホテルの家賃は、住宅より高くオフィスより低いことが一般的です。 たとえば、ワンルームマンション経営を選択するよりもビジネスホテル経営の方が良いといえます。
一方で、都内の都市部ではオフィスビルの方が賃料単価は高いため、オフィスビルが選択できる土地であればオフィスビルの方が収益性は高くなります。
土地活用でホテル・宿泊施設を経営するメリット

ホテル・宿泊施設を経営するメリットについて解説します。
地方都市でもビジネス街であればニーズはある
近年の地方都市は、オフィスビルの賃貸需要が相当に減っており、オフィスビルを建ててしまうと、中心市街地であってもテナントがほとんど決まらないことがよくあります。
地方都市におけるオフィスビルは、リスクの高い選択肢となっており、選択しにくいです。
一方で、ビジネスホテルであれば地方都市でもニーズがあります。
オフィスビルは難しいがワンルームマンションにするには少し惜しいような土地は、ビジネスホテルに適しているといえます。 また、地方でも新幹線停車駅の至近であれば、ビジネスホテルのニーズが存在します。
収入が安定している
ビジネスホテルは一棟貸しであるため、収入が安定している点がメリットです。 賃貸マンションやオフィスビルのように、空室状況に応じて賃料が変動することはありません。
ビジネスホテルは長期一括契約であることが通常であり、家賃も固定であることが一般的です。
運営にほとんど手間とコストがかからない
ビジネスホテルは、運営にほとんど手間とコストがかからない点もメリットです。
運営に関しては一棟貸しであるため、全てホテル事業者が運営を行います。 貸し主が管理会社に管理を委託する必要がなく、管理委託料が不要となります。
また、ビジネスホテルは、日常的な小修繕は借り主であるホテル事業者の負担とすることが多いです。 たとえば、賃貸マンションであればクロスの張り替え費用は貸し主負担となりますが、ビジネスホテルはクロスの張り替えなどはホテル事業者の判断と費用負担で行うということです。 そのため、貸し主は小修繕の費用を削減することができます。
さらに、ビジネスホテルは一棟貸しであることから、借り主の入れ替えに伴う費用も生じません。 たとえば、賃貸マンションであれば空室が発生すると次の入居者を決めるために仲介手数料などが発生します。
ビジネスホテルは、そもそも賃貸マンションのように借り主が頻繁に入れ替わることはないため、テナントの入れ替えに伴う費用も抑えることができるのです。
よって、貸し主が負担するビジネスホテルの費用は、固定資産税や都市計画税、建物の損害保険料程度であり、ランニングコストはほかの土地活用と比べると少ないといえます。
土地活用でホテル・宿泊施設を経営するデメリット
ホテル・宿泊施設を経営するデメリットについて解説します。
退去時の悪影響が大きい
ビジネスホテルは一棟貸しであるため、万が一、退去が発生した場合の悪影響が大きいです。
ビジネスホテルはそれぞれのホテル事業者の独自の仕様によって建てられることから、退去後に後継のホテル事業者が決まりにくい傾向があります。
退去リスクを下げる対策として、借り主となるホテル事業者を賃料だけでなく、実績や経営状態も踏まえた上で決定することをおすすめします。
投資額が大きい
ビジネスホテルは、200室以上の部屋を確保できないと出店できないことから、必然的に建物が大きくなります。
建物が大きいということは、投資額が大きくなることを意味します。 借入金も増えるため、アパートなどの小さな物件と比べると、相対的に投資リスクも上がります。
インバウンドの影響を大きく受けやすい
ビジネスホテルは、インバウンドの影響を大きく受けやすい点がデメリットです。
2024年6月時点では、円安の影響もあり外国人観光客も多いことから、ビジネスホテルは好調となっています。 しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行時に見られたように、外国人観光客が激減すると、ビジネスホテルのニーズが大幅に減ったことは記憶に新しいところです。
新型コロナウイルスは極端な例としても、今後、円高基調に戻ればインバウンド需要は今よりも減っていく可能性は考えられます。 ビジネスホテル需要は国内事情だけでなく、為替やパンデミックなどの複雑な世界情勢を反映することから、見通しが立ちにくい点が特徴です。
ホテル・宿泊施設を開業する手続き
ホテル・宿泊施設を開設する手続きについて解説します。
実績のある施工会社にホテル事業者を探してもらう
ホテルは一棟貸しであるため、借り主となるホテル事業者ありきで計画を進めていきます。
ホテル事業者は、実績のある施工会社に探してもらうことが一般的です。
ホテルの土地活用を始めたい場合は、まずはビジネスホテルの建築実績のある施工会社に相談することから始めます。
ホテル事業者を決定し予約契約を締結する
複数のホテル事業者から提案を受け、その中から条件の良いホテル事業者を選んで決定します。 着工前は、ホテル事業者と予約契約を締結することが通常です。
予約契約とは、竣工後の賃貸条件と着工後にホテル事業者の契約解除を実質的にできないようにする契約になります。
工事に着工し竣工したらホテルとして貸し出す
ホテル事業者と予約契約を締結したら、次に施工会社と工事の請負契約を締結します。
工事に着工し、竣工したらホテル事業者との賃貸借が開始され、ホテルの運営が始まります。
まとめ
以上、ホテル/宿泊施設の不動産活用について解説してきました。
ホテル・宿泊施設経営には、「地方都市でもビジネス街であればニーズはある」や「運営にほとんど手間とコストがかからない」などのメリットがあります。 デメリットは、「退去時の悪影響が大きい」や「インバウンドの影響を大きく受けやすい」などです。
ホテル・宿泊施設を開設するには、実績のある施工会社にホテル事業者を探してもらうことが第一歩となります。
可能性のある場所に土地をお持ちの方は、お気軽に相談していただければと思います。

不動産鑑定士
竹内 英二
不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。
⇒竹内 英二さんの記事一覧はこちら
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