更新日:2024.10.29
【2024年7~9月】首都圏中古マンション・戸建の価格動向は?最新市況と今後の予測を解説
国土交通省から指定を受けた不動産流通機構が運営する、不動産流通標準情報システム「レインズ」の2024年7~9月期の季報マーケットウォッチが公表されました。 本記事では、不動産の購入や売却を考えている方、今が買い時なのかが気になっている方に向けて、2024年7~9月期の季報マーケットウォッチを参考に、現在の首都圏における中古マンションと戸建ての価格推移、長期的に見た価格動向、今後の予測などについて解説します。
- 首都圏中古マンションの価格は、前年同期比+5.5%で48期連続の上昇
- 首都圏中古戸建ての価格も、前年同期比+2.2%と上昇傾向
- 中古マンション・中古戸建てともに上昇しているが、今後は金利の動向に注意が必要
2024年7月~9月首都圏中古マンションの価格動向
ここでは、レインズが公表している「2024年7~9月期の季報マーケットウォッチ」より、首都圏中古マンションの価格動向を見ていきます。
価格が5.5%上昇(48期連続上昇)
2024年7~9月期の首都圏中古マンションの価格は4,875万円で、前年同期比+5,5%となりました。
また、㎡単価は76.74万円/㎡で、前年同期比+5.6%と、価格と同じような上昇幅になっています。
なお、価格は2012年10~12月期より48期連続の上昇で、㎡単価は2020年7~9月期より17期連続での上昇となります。 ㎡単価については、コロナ禍により一時下落したもののすぐに回復し、価格についてはコロナ禍においても引き続き前年同期比がプラスとなっており、長期間右肩上がりの上昇が続いていることがわかります。
成約件数は2.9%下落
2024年7~9月期の首都圏中古マンションの成約件数は8,539件、前年同期比で2.9%下降し、5期ぶりの下落となりました。
なお、以下は2013年からの年間の首都圏中古マンション成約件数(暦年)のデータです。
暦年 | 成約件数 |
---|---|
2013年 | 3万6,432件 |
2014年 | 3万3,798件 |
2015年 | 3万4,776件 |
2016年 | 3万7,189件 |
2017年 | 3万7,329件 |
2018年 | 3万7,217件 |
2019年 | 3万8,109件 |
2020年 | 3万5,825件 |
2021年 | 3万9,812件 |
2022年 | 3万5,429件 |
2023年 | 3万5,987件 |
出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構 REINS TOWER
成約件数は下落となっているものの、長期間上がったり下がったりを続けつつ、横ばい傾向が続いている状況です。
地域別動向
地域別に見てみると、㎡単価は首都圏の全てのエリアで前年同期比プラスとなり、特に東京都区部(東京23区)は11.4%の上昇となっています。 一方、神奈川県は前年同期比2.2%、埼玉県は3.1%と、東京都区部が首都圏全体の上昇を底上げしているといえるでしょう。
成約件数は東京都が前年同期比-6.5%、神奈川県が-3.1%となっており、特に東京都区部で-8.0%、横浜市・川崎市で-3.9%と、都心ほどマイナス幅が大きくなっている傾向にあります。 一方で、千葉県は前年同期比で+9.7%、埼玉県は+2.9%となっています。 なお、成約件数についてはいずれの地域においても中長期的に見ると上がったり下がったりを繰り返しているといえるでしょう。
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2024年7月~9月首都圏中古戸建の価格動向
次に、2024年7~9月期の首都圏中古戸建ての価格動向をご紹介します。
価格が2.2%上昇(17期連続上昇)
首都圏中古戸建ての価格は3,928万円、前年同期比2.2%の上昇で2020年7~9月期から17期連続の上昇となっています。 コロナ禍に下がった後、中古マンションほどではないものの、少しずつ上昇が続いているといえるでしょう。
成約件数は12.5%上昇
首都圏中古戸建ての成約件数は3,478件、前年同期比12.5%と、大幅に上昇しています。 理由としては、2022年~2023年にかけて、成約件数が右肩下がりに下降したことが挙げられます。
2024年7~9月期の成約件数は、2021年7~9月期(3,519件)とほぼ同水準となっており、一旦下がった成約件数が少しずつ回復している状況と見ることができるでしょう。
地域別動向
首都圏の地域別の成約価格を見ると、東京都が+2.4%、千葉県+2.6%、神奈川県+3.3%といずれの地域においても小幅な上昇となっていることが分かります。 埼玉県は多少下落しているものの、-2.7%と下落幅はゆるやかです。 より細かい地域で見てみると、神奈川県の横浜市・川崎市以外のエリアでは前年同期比+9.0%と大きな上昇率となっています。
首都圏の地域別の成約件数を見てみると、東京都が前年同期比+15.5%、埼玉県が+8.8%、千葉県が+16.7%、神奈川県が+8.5%と、いずれの地域においても高い上昇率となっています。
こちらも、2013年以降の年間の首都圏中古戸建ての成約件数を見てみましょう。
暦年 | 成約件数 |
---|---|
2013年 | 1万2,245件 |
2014年 | 1万1,208件 |
2015年 | 1万2,153件 |
2016年 | 1万3,195件 |
2017年 | 1万2,743件 |
2018年 | 1万2,718件 |
2019年 | 1万3,037件 |
2020年 | 1万3,348件 |
2021年 | 1万5,436件 |
2022年 | 1万3,446件 |
2023年 | 1万2,871件 |
出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構 REINS TOWER
いずれの地域においても中長期的に見ると、上がったり下がったりを続けており、横ばい傾向にあるといえるでしょう。
中古マンション・中古戸建の長期動向(2013年10月~)
ここでは、首都圏における中古マンション・中古戸建ての2013年10月以降の長期動向をご紹介します。
中古マンションの価格は上昇傾向
出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構 REINS TOWERの情報を基に、クラモア編集部が作成
2013年10月以降の中古マンションの成約㎡単価を見てみると、若干の上がり下がりはありつつも、一貫して右肩上がりで上昇していることが分かります。 特に、新型コロナウイルスの影響があった2020年の上半期については一旦大きく落ち込んでいることが分かりますが、その後、力強く上昇していると見ることができます。
コロナ禍において経済的な問題が生じたとしても、住むための場所は必要です。 むしろリモートワークなどで家にいることが増えたことにより、住居にお金をかける人が増えたともいわれています。
成約㎡単価が上昇した経済的要因としては、コロナ禍以降、資材の価格が上昇したり日米金利差により円安が進んだりしたことが考えられます。 資材の価格が上昇すると新築マンションの価格上昇につながりますが、新築マンションの価格が上昇すると、新築マンションより購入しやすい中古マンションを検討する人が増えるため、中古マンションの価格上昇につながります。 また、円安が進むことで、海外投資家などが不動産を購入するケースがあり、これもマンション価格の上昇につながるでしょう。
今後については、これまで低く抑えられていた日本の金利が利上げに進む可能性があり、利上げが進むと住宅ローン金利の上昇につながることが考えられます。 これまで、マンション価格はバブル状態といわれるほど長期的に大きく上昇してきていますが、住宅ローン金利の上昇を皮切りに、バブルが弾けることも十分考えられるでしょう。
中古戸建の価格は微増傾向
出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構 REINS TOWERの情報を基に、クラモア編集部が作成
中古戸建てについては、マンションほどではないものの、価格の上昇傾向が続いているといえます。
中古戸建ての価格が右肩上がりになっている理由としては、中古マンションと同様に、新築物件の価格が上昇していることが理由として挙げられます。 また、新築戸建ての価格が上昇している要因としては、円安などを背景とした資材の価格上昇や、住宅ローン控除の適用要件に省エネ性能が採用されるなどして、新築戸建てに求められる省エネ性能が高くなってきていることなどが挙げられるでしょう。
まとめ
2024年7~9月期の東日本不動産流通機構の季別マーケットウォッチを参考に、首都圏中古マンションと中古戸建ての価格、成約件数の推移、長期的に見た価格動向、今後の予測について解説しました。 2024年7~9月期において、中古マンション、中古戸建ともに価格の上昇傾向が続いていますが、今後は金利の利上げなどの外的要因により、大きく価格が下落してしまう可能性は十分考えられます。
マンションや戸建ての購入、売却を考えている方は、本記事でご紹介したデータなど参考にしながらよりよいタイミングで取引できるよう、計画を立てることをおすすめします。
宅建士・2級FP技能士(AFP)・相続管理士
逆瀬川 勇造
大学卒業後、地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より不動産会社に入社。不動産会社では住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。2018年より独立し、2020年合同会社7pocketsを設立。
金融や不動産分野におけるコンテンツにおいて、現場での経験を活かし、読者の方が悩みやすいポイントを分かりやすく解説することを心がけている。
⇒逆瀬川 勇造さんの記事一覧はこちら
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