- 資材・人件費の高騰で「建設業」「不動産業」の倒産件数が増加
- 取引中の倒産は、契約不履行や金銭トラブルの原因に
- 不動産会社選びは「倒産リスクの低さ」を重視する
2025年上半期の建設業・不動産業の倒産件数が増加
帝国データバンクの最新調査によると、建設業や不動産業の倒産件数は増加傾向にあります。
ここでは、2025年10月8日に公表された2025年度上半期のデータを詳しく見ていきましょう。
2025年上半期の倒産件数は8半期連続で増加
帝国データバンクの発表によると、2025年度上半期の全業種の倒産件数は5,146件で、8半期連続の増加となりました。 一方、負債総額は2半期連続で減少しており、中小企業の倒産が増えている傾向が見られます。
倒産の理由を見てみると、「売掛金回収難」や「不良債権の累積」などによる不況型倒産が8半期連続で増加しています。 さらに、「人手不足倒産」や「物価高倒産」は過去最多、「後継者難倒産」は上半期として過去2番目の多さとなり、時代を反映した結果といえます。
建設業・不動産業は増加傾向 | なぜ急増したのか?
帝国データバンクの業種別データによると、建設業と不動産業の倒産件数は大幅に増加しており、「建設業」は前年同期比+10%で1,013件と、2013年度以来12年ぶりに1,000件を上回りました。
また、「不動産業」も前年同月比+9.9%の155件で、過去10年の最多タイとなっています。
倒産増加の背景には、資材価格の上昇や人手不足、後継者不足などが挙げられます。
これらの課題は短期的な解決が難しく、今後も同様の状況が続く可能性が高いと考えられます。
取引中に不動産会社が倒産したらどうなる?リスクと対応策
不動産取引の途中で、仲介を依頼している不動産会社が倒産した場合、どのような影響があるのでしょうか? ここでは、具体的なケースと注意点を解説します。
仲介中に不動産会社が倒産した場合
不動産会社に購入や売却の仲介を依頼しているような場合、基本的に不動産会社が倒産しても大きな問題になることは少ないといえます。 理由は、別の不動産会社に仲介を依頼し直せるためです。
ただし、以下のケースでは注意が必要です。
●広告費を事前に支払っていた場合
➡ 倒産により、支払った広告費が返金されない可能性が高いです。
●売買契約時に仲介手数料を支払っていた場合
➡ 住宅ローンが不承認となり、住宅ローン特約で白紙解約になるまでの間に倒産したケースでは、仲介手数料が返還されない可能性があります。
売主が倒産した場合
不動産会社が売主となる中古物件を購入した場合、「売買契約後・引き渡し前に倒産した場合」と「引き渡し後に倒産した場合」の2つのケースで影響が異なります。
「売買契約後・引き渡し前に倒産した場合」は、支払った仲介手数料などが返還されない可能性があります。 また、残債を支払っても物件を取得できないリスクがあるため、契約時の安全策が重要です。
「引き渡し後に倒産した場合」は、物件に瑕疵があっても補修など受けられない可能性があります。 アフターサービスや保証が消滅するため、購入前に確認が必要です。
▼リスク回避の対応策
売主が既存住宅売買瑕疵保険に加入している場合、引き渡し後に倒産しても、瑕疵に対する修繕費用を請求できる可能性があります。 そのため、取引前に瑕疵保険の加入状況を必ず確認することが重要です。
新築住宅購入時に会社が倒産した場合
大きな問題となりやすいのが、新築住宅の場合です。
特に建設途中で倒産すると、支払った手付金や中間金が返還されない可能性に加え、未完成の建物が残るリスクがあります。 また、他社が工事を引き継ぐ場合でも、追加費用が必要になるケースが多いです。
さらに、住宅ローンの問題も発生します。 建物が完成しないと融資が実行されず、つなぎ融資を利用している場合は利息負担が増える可能性があります。
▼リスク回避の対応策
倒産が判明したら、すぐに金融機関へ相談しましょう。 住宅完成保証制度に加入していれば、建築途中でもサポートを受けられます。
※この制度は任意加入のため、事前に不動産会社に確認しておくことが重要です。
倒産しない不動産会社の見極め方

不動産取引を安心して進めるためには、倒産リスクの低い不動産会社を選ぶことが重要です。
ここでは、倒産しない不動産会社の見極め方を解説します。
財務基盤が盤石
まずは人件費の高騰や資材高騰など、急な経済変動があっても耐えられる企業かどうかを見極めましょう。 不動産の購入を検討している地域で長く経営している企業は、一定の財務基盤を築いている可能性が高いといえます。 また、上場企業は財務基盤が盤石と判断しやすいのに加え、決算書が公表されているため、誰でも財務状況を確認できます。
多角的に事業展開している
近年、不動産会社や建設会社の倒産が増加している背景には、資材価格の高騰や人件費の上昇が挙げられます。 こうした問題に対応できない企業から倒産しているといえるでしょう。
事業の多角化は、倒産リスクを減らす重要な要素です。
例えば、不動産の建設販売だけでなく賃貸管理も行っている企業であれば、継続的な収入を得られるため、経営が安定しやすくなります。 さらに、不動産業以外にも資材価格高騰の影響を受けにくい事業を展開している企業は、リスク分散が可能で倒産を避けやすいといえます。
長期経営の実績がある
対象エリアで長く経営している企業は、財務基盤が安定し、信頼性も高いと評価できます。
企業が倒産する理由はさまざまですが、取引途中で倒産するケースでは、赤字が累積し返済不能になることが多いと考えられます。 健全な企業であれば、経営が厳しくなった際に規模を縮小するなどして取引先に悪影響が出ないよう対策を講じるはずです。
また、長期経営の実績は、過去の問題に適切に対応してきた証拠ともいえます。 そのため、経営歴の長さは不動産会社選びの重要なポイントです。
不動産会社の経営歴に関しては、会社のホームページなどで創業年を確認する方法のほかに、宅地取引業免許の更新回数を確認する方法があります。 宅地建物取引業の免許は5年に1回更新(平成8年3月31日以前は3年ごと)が必要で、免許番号の横に更新回数が記載されています。 この更新回数が多いほど、長く経営している証拠です。
まとめ
本記事では、帝国データバンクのデータをもとに、不動産会社や建設会社の倒産増加の背景、取引中に倒産した場合のリスクと対応策、そして倒産しにくい不動産会社の見極め方をご紹介しました。
仲介を依頼している場合は、不動産会社が倒産しても大きな問題にならないケースが多いですが、売却を依頼している場合は売却期間が長引くリスクがあります。 そのため、最初から倒産リスクの低い不動産会社を選ぶことが重要です。
判断基準としては、対象エリアで長く経営している不動産会社や、知名度・財政基盤がしっかりとした企業を選ぶことがおすすめです。 こうした企業は、経営の安定性や信頼性が高く、安心して取引できます。
本メディア「クラモア」を運営する株式会社ウィーブは、スターツコーポレーション(株)の一員です。
スターツコーポレーション(株)は、1969年の創業以来、50年以上の実績を持つプライム市場上場企業です。 建設・不動産・管理事業を中心に、金融、出版、ホテル、高齢者支援事業など幅広く事業を展開し、リスク分散を実現しています。
安心して不動産取引したいとお考えの方は、ぜひ下記よりお気軽にご相談ください。
宅建士・2級FP技能士(AFP)・相続管理士
逆瀬川 勇造
大学卒業後、地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より不動産会社に入社。不動産会社では住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。2018年より独立し、2020年合同会社7pocketsを設立。
金融や不動産分野におけるコンテンツにおいて、現場での経験を活かし、読者の方が悩みやすいポイントを分かりやすく解説することを心がけている。
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