マンションを売却する際には、仲介手数料をはじめ、税金や各種手続き費用など、さまざまな支出が必要になります。 これらの費用を合計すると、100万円を超えることも珍しくありません。 見落としやすい費用も多いため、事前にしっかり確認しておくことが重要です。 本記事では、マンション売却時に発生する具体的な費用の内訳や、売却費用を抑える方法についてわかりやすく解説します。
- マンション売却では仲介手数料や印紙税・抵当権抹消費用などの諸費用が生じる
- 見落としやすい費用も多いため、事前にしっかり確認しておく
- 売却益が生じると税金が発生するが、節税できる特例もある
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マンション売却にかかる手数料・費用
マンションを売却する際には、さまざまな費用が発生します。 一般的には売却額の5~10%が目安とされており、例えば3,000万円で売却した場合、諸費用はおよそ150~300万円かかるとされています。
マンション売却にかかる主な手数料・費用をまとめると、下記の通りです。
費用項目 | 費用の相場 |
---|---|
仲介手数料※1 | 売買代金に応じて上限額が以下のように決まっており、上限額がそのまま相場となっていることが多いです。仲介手数料には別途消費税がかかります。 売買代金が400万円超:「売買代金×3%+6万円」 売買代金が200万円超400万円以下:「売買代金×4%+2万円」 売買代金が200万円以下:「売買代金×5%」 |
抵当権抹消費用 | 抵当権抹消の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。 司法書士手数料は、1.0~2.5万円程度となります。 |
印紙税 | 印紙税は売買契約書に記載する売買代金で決定されます。 主な印紙税は以下の通りです。(2027年3月31日までの軽減税率) 売買代金が1,000万円超5,000万円以下:1万円 売買代金が5,000万円超1億円以下:3万円 |
住宅ローン 一括返済手数料 |
税込みで3.3~5.5万円程度 |
譲渡所得税 | 売却物件で売却益(譲渡所得)が発生した場合に生じます。 所得税および住民税、復興特別所得税※2を合算した原則的な税率は以下の通りです。 保有期間5年以下:譲渡所得の39.63% 保有期間5年超:譲渡所得の20.315% (保有期間は売却した年の1月1日における所有期間のこと) |
引越し代 | 人数や距離によって異なることが通常です。 たとえば4人家族で50km未満の引越しなら、12~15万円程度となります。 |
※1)低廉な空き家等(物件価格が800万円以下の宅地建物)の場合、仲介手数料の上限額が30万円(税抜)となります。
※2)復興特別所得税は、2037年12月31日まで
出典:
国土交通省 「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」
国税庁 「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
法務局 「抵当権の抹消登記に必要な書類と登録免許税」
日本司法書士連合会 「報酬アンケート結果一覧」
仲介手数料
仲介手数料とは、 不動産会社に物件の売却を依頼した際に支払う報酬のことで、売買契約が成立した場合のみに発生します。 仲介手数料は、宅地建物取引業法に基づいて上限が定められており、不動産会社から上限額を超えた手数料を請求されることはありません。
不動産の売却金額(税抜) | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下の部分 | 売却価格×5%+消費税 |
200万円超〜400万円以下の部分 | 売却価格×4%+2万円+消費税 |
400万円超の部分 | 売却価格×3%+6万円+消費税 |
仲介手数料については、2024年7月1日に施行された法改正により、売買価格800万円以下の空き家等(空き家・空き地)の取引において、上限額が33万円(税込)に引き上げられました。
詳しくは「【2024年7月改正】800万円以下の売買、仲介手数料が上限33万に!」で解説していますので、ご参照ください。
売却価格ごとの仲介手数料を算出したのが、以下の表になります。
正確な金額は不動産会社側から提示されますので、その前に「目安だけ知りたい」という場合などに参考にしてください。
物件価格 | 仲介手数料(税抜) |
---|---|
800万円以下の物件(特例適用) | 一律30万円 |
1,000万円の物件 | 36万円 |
2,000万円の物件 | 66万円 |
3,000万円の物件 | 96万円 |
4,000万円の物件 | 126万円 |
5,000万円の物件 | 156万円 |
6,000万円の物件 | 186万円 |
7,000万円の物件 | 216万円 |
8,000万円の物件 | 246万円 |
9,000万円の物件 | 276万円 |
1億円の物件 | 306万円 |
抵当権抹消の費用
抵当権とは、債権者(銀行)がその担保物件から優先的に弁済を受けることができる権利のことです。 住宅ローンが残っている不動産を売却する際は、抵当権抹消費用も発生します。
抵当権を抹消するには、「登録免許税」と「司法書士への依頼報酬」の費用が発生します。
登録免許税
登録免許税とは、抵当権抹消登記を行うにあたって国に納める税金です。
抵当権抹消の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
マンションの場合、土地と建物それぞれに抵当権が設定されているため、抵当権抹消登記は2,000円となります。
司法書への報酬
住宅ローンが残っている不動産の売却では、不動産会社が売り主の抵当権抹消手続きを代行してくれる司法書士を手配してくれることが一般的です。司法書士手数料は1.0~2.5万円程度が相場となっています。
印紙税
不動産の売買契約書は、印紙を貼らなければいけない課税文書です。
印紙税は売買契約書に記載される売買金額によって、下表のように決まります。
売買契約書に記載する売買代金 | 本則 | 軽減税率※ |
---|---|---|
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円超10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
10億円超50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
50億円超 | 600,000円 | 480,000円 |
金額の記載のないもの | 200円 | 200円 |
※2027年3月31日までの軽減税率
出典:国税庁 「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
住宅ローン一括返済手数料
住宅ローンが残っているマンションを売却する場合、銀行に対して一括返済手数料を支払います。一括返済手数料の相場は、都市銀行の窓口申し込みで、3.3~5.5万円程度です。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、マンション売却で利益(譲渡所得)が発生したときにかかる所得税および住民税、復興特別所得税の総称です。
- 所得税
個人の所得に対して課税されるのが所得税です。 売却した翌年の2~3月に納税します。 - 住民税
地方自治体に納める税金で、「道府県民税」(東京都は都民税)と「市町村民税」(区市町村民税)の総称です。 売却した翌年の6月ごろに納税します。 - 復興特別所得税
2011年に発生した東日本大震災の復興に必要な財源を確保するための税金です。 2013年1月1日~2037年12月31日の間に生じる所得について課税されます。
譲渡所得税は、マンション売却にかかる費用の中でも高額になりやすいものです。 ただし、控除などの軽減措置も用意されているため、計算方法や軽減について理解しておくことが重要になります。
譲渡所得の計算方法
不動産を売却すれば、もれなく譲渡所得税が発生するというわけではありません。譲渡所得税は、いわゆる譲渡益(購入費より売却費が上回ったときの差額)に対して課税されるものです。譲渡益は、売却価格から取得費用と売却にかかる経費を差し引いた額を指します。
譲渡所得の計算方法は次のとおりです。
売却価格-(取得費用+売却時の経費)
=譲渡所得
たとえばあなたが、5,000万円で購入した土地を7,000万円で売却したとします。 売却にともなう仲介手数料は、200万円でした。 この場合の譲渡所得は以下のようになります。
7,000万円-(5,000万円+200万円)
=1,800万円
つまり、この「1,800万円」に対して譲渡所得税が課税されることになります。
譲渡所得税の税率は所有期間で異なる
譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって異なるという特徴があります。 短期の場合は高く、長期になると低くなるので覚えておきましょう。
【短期譲渡所得(5年未満)】
所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%:合計39.63%
【長期譲渡所得(5年以上)】
所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%:合計20.315%
所有期間によって税率が異なるのは、短期間で土地の売買を繰り返し、利益を得るようなケースを避けるためです。 所有期間は「その年の1月1日時点」が起点となります。
もし、2019年5月1日に購入した土地を2024年5月2日に売却した場合、2024年1月1日時点で計算することになるため、所有期間は4年となります。
5年を超えるか否かで税率が大きく変わるため、売却時期には注意しましょう。
各種証明書類の取得手数料
マンション売却時、以下のような証明書類が必要となり、それぞれ取得費がかかります。
証明書類 | 相場 |
---|---|
印鑑証明書 | 1通300円 |
住民票 | 1通300円 |
固定資産評価証明書 | 1件あたり300~400円 |
印鑑証明書
印鑑証明書とは、実印であることを証明する書類です。
個人の場合は、住民登録地の市区町村の役所、一部の郵便局やコンビニエンスストアなどで取得できます。取得費は、300円程度となります。
住民票
住民票も市町村の役所で取得できます。取得費用は、一般的に300円程度とされています。
固定資産税評価証明書
固定資産税評価証明書は、マンション売却時、不動産の登記変更の際に提出する書類として、固定資産税の課税標準額を算出するために必要となります。
取得費用は、1件あたり300~400円です。
ハウスクリーニング費用
ハウスクリーニングは、マンション売却時の義務ではなく任意で行うものですが、多くの売主さんが行っています。 その理由は、高値でスムーズに売却できるようにするためです。
ハウスクリーニングの費用は、依頼先の会社や内容、マンションの広さなどによって異なります。 参考までに、以下は業界大手である「おそうじ本舗」の「お引越し前・後 まるごとクリーニング」の料金です。
部屋タイプ | 税込価格 |
---|---|
マンション・アパート 1K/1DK | 2万6,400円~5万2,800円 |
マンション・アパート 1LDK/2DK | 3万5,200円~7万400円 |
マンション・アパート 2LDK/3DK | 4万8,400円~9万6,800円 |
マンション・アパート 3LDK/4DK | 6万1,600円~12万3,200円 |
マンション・アパート 4LDK/5DK | 7万4,800円~14万9,600円 |
※2024年12月時点
引っ越し費用
住み替えでマンションを売却する場合には、引越し費用も見積もっておく必要があります。 引越し費用は、引越しの時期・荷物の量・引越し先までの移動距離によって【3万円~35万円以上】まで幅があります。
早めに見積もりを取り、正確な費用を把握するようにしましょう。 なお、引越し業界では、3~4月が繁忙期となり、料金が高くなる傾向があります。 引越し費用をできるだけ抑えたい場合は、3~4月を避けるようにします。
マンション売却にかかる手数料・費用のシミュレーション
マンション売却にかかる費用について、シミュレーションをしてみましょう。
【ケースA】マンション売却価格2,000万円・1LDK・単身の場合
▼マンション売却価格2,000万円のシミュレーション
項目 | 金額 |
---|---|
仲介手数料(税込) | 72万6,000円 |
住宅ローン一括返済手数料 | 2万7,500円 |
抵当権抹消登記 司法書士報酬 | 1万5,000円 |
抵当権抹消登記 登録免許税 | 1,000円 |
ハウスクリーニング費用 | 3万5,200円 |
引越し費用 | 4万円 |
印紙税 | 1万円 |
所得税・住民税 | 状況による |
合計 | 85万4,700円(所得税・住民税 別途) |
※上記は概算のイメージです。
【ケースB】マンション売却価格5,000万円・3LDK・4人家族の場合
▼マンション売却価格5,000万円のシミュレーション
項目 | 金額 |
---|---|
仲介手数料(税込) | 171万6,000円 |
住宅ローン一括返済手数料 | 2万7,500円 |
抵当権抹消登記 司法書士報酬 | 1万5,000円 |
抵当権抹消登記 登録免許税 | 1,000円 |
ハウスクリーニング費用 | 6万1,600円 |
引越し費用 | 10万円 |
印紙税 | 1万円 |
所得税・住民税 | 状況による |
合計 | 193万1,100円(所得税・住民税 別途) |
※上記は概算のイメージです。
金額は、それぞれの状況によって大きく異なりますので、上記はあくまでもイメージをつかむためにご覧ください。 実際にかかる手数料は費用の正確な金額は、ご自身のマンションに合わせて、算出してみましょう。
売却費用を抑える方法
売却費用をできるだけ抑えられると、その分手元にも多くお金が残ります。
最後に、売却費用を抑える方法として以下の3つを紹介します。
それぞれ詳しくみていきましょう。
キャンペーンを利用して仲介手数料を抑える
不動産会社によっては、期間限定のキャンペーンやリピーター特典を利用して仲介手数料を割引している場合があります。 仲介手数料を抑えたい場合は、こうしたキャンペーンを活用するのも一つの方法です。
また、仲介手数料は法律で上限が決まっていますが、その範囲内であれば不動産会社が自由に設定できます。そのため、交渉次第で値下げが可能な場合もあります。
ただし、過度な値下げ交渉は不動産会社との関係を悪化させ、売却活動に悪影響を及ぼすリスクがあるため注意が必要です。たとえ手数料を下げても、売却額が下がってしまうと結果的に損をする可能性があります。
手数料を抑えることにこだわるよりも、不動産会社と信頼関係を築き、より高値で売却してもらうことを優先する方が、最終的には利益につながるでしょう。 仲介手数料だけでなく、売却額全体で判断することをおすすめします。
特例や控除を活用する
譲渡所得税には、節税できる控除がいくつか用意されています。
例えば、3,000万円特別控除は利益が3,000万円以下であれば税金は発生しません。 各種控除の適用条件を確認し、自身の売却に合った控除を活用することで譲渡所得税を大きく抑えられるでしょう。
なお、特例の適用を受ける確定申告が必要です。 仮に、3,000万円特別控除を適用すれば税金が発生しないケースであっても、「税金が発生しないから確定申告が要らない」というわけではありません。 確定申告をしていないと、控除が適用されないことは覚えておきましょう。
また、各種控除の適用には必要書類が多くあります。 事前に必要書類を確認し、確定申告時期に間に合うように準備を進めていきましょう。
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サービスの充実した不動産会社を選ぶ
売却に際してハウスクリーニングや修繕などを検討する方も多いでしょうが、これらを依頼すると当然費用が必要です。 しかし、大手の不動産会社などでは売却時のハウスクリーニングや修繕などをサービスとして提供しているケースが少なくありません。 不動産会社のサービスでハウスクリーニングや修繕を受けられると、コストの削減につながります。
また、荷物の一時預かりや税務相談・プロによる物件写真の撮影など、不動産会社によって提供される売却に伴ったサービス内容は異なります。 サービスが充実している不動産会社を選ぶとコストを抑えられる可能性があるため、どのようなサービスがあるかについてもチェックすると良いでしょう。
ただし、サービスが充実していても売却できなければ意味がないという点は覚えておくことが大切です。 サービス重視ではなく、自分のマンションを高くスムーズに売ってくれるかどうかを考慮したうえで、サービスはあくまでもおまけとして考えるようにしましょう。
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みんなが不動産会社選びで重視してることは?
クラモアが独自に調査した、不動産売却を検討している方へのアンケート結果によると、不動産を売却する際に依頼する会社選びで重視することとして多かったのは、「高く売却できる」(31.6%)、「担当者の対応が丁寧」(20.7%)、「売却エリアに詳しい(地域密着型)」(15.8%)でした。
最も多い回答が「高く売却できる」という結果であることから、不動産会社への売却に対する期待値(高く売れることに対する期待値)が高いことが分かります。
大切な不動産を高く売却するには、売却のノウハウを持ち、その地域に詳しい「信頼できる担当者」がいる不動産会社を選ぶことが大切です。 専門知識を持つ不動産会社は、市場分析や適正な価格設定だけでなく、複雑な売却手続きもしっかりサポートしてくれます。 また、物件の立地や特性、市場動向などを熟知しているため、マンションを高く売るための戦略を一緒に立てることが可能です。
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まとめ
本記事では、「マンション売却にかかる手数料・費用・税金」をテーマに解説しました。
費用を抑えることは、売却計画を進めるうえで重要なポイントとなります。 ただし、費用削減にこだわりすぎると、結果的に売却価格が下がってしまう可能性もあるため注意が必要です。 むしろ、売却価格を高くすることが最終的に手元に残る金額を増やす近道となるため、マンション売却の実績が豊富な信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。
売却時に必要な費用は、状況や条件によって異なります。 まずは不動産会社に相談し、自分に合ったプランを立てることをおすすめします。
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