- 地鎮祭は行うのが基本だが、施工主の事情や希望によっては省略することも可能
- 必要な費用の目安は15万円前後で、所要時間は15分から30分程度
- 基本的には、依頼者側がお供えものなどを用意する
地鎮祭(じちんさい)は、住居や施設などを建てる際に、今後の安全や安泰を願って行われる儀式です。ひと昔前は、家を建てるときに必ず行われていました。これから新たに住居を建てる方が地鎮祭をやるなら、施工前に手配をしておかなければなりません。この記事では、地鎮祭の目的や費用、実施するまでの段取りなどを解説します。
地鎮祭は家を建てる際の一大イベント
そもそも、地鎮祭とはどのような儀式なのでしょうか。初めに、地鎮祭を行う目的について確認しておきましょう。
そもそも地鎮祭とは?
地鎮祭は、神主の祈祷によってその土地を清める儀式です。実家などを新築したときなどに、参加した経験がある方もいるかもしれません。地鎮祭には、さまざまな意味が込められています。
実施する目的
地鎮祭は正式には「とこしずめのまつり」と読み、「地を鎮(しず)める」のが大きな目的です。日本では古来より、それぞれの土地に神様がいると信じられてきました。そのため昔の人は、その場所の神様に挨拶せずに勝手に家などを建てると、神様を怒らせてしまうかもしれないと考えたのです。
さらに、地鎮祭には工事そのものの安全と、そこに建てた家に住む人たちの幸せを祈願する意味合いもあります。これらのことから、地鎮祭は宗教色の強い儀式の一つであり、その場所で長きにわたって幸せに暮らしたいと願う人は行うべきであると言えるでしょう。
地鎮祭に招く人
地鎮祭では、そこに建てた家に住むすべての人が参加するのが基本です。それに加えて、施工会社側にも参加してもらう必要があります。担当者などに意図を伝えて、参加してもらうとよいでしょう。
地鎮祭は神主によって執り行われるため、地元の神社などの神主を招く必要もあります。当日は来賓も招けるので、必要に応じて親戚などを呼んでもかまいません。
地鎮祭は必須?
新たに住宅などを建てる際は地鎮祭を行うのが一般的ですが、必須ではありません。「必要性を感じない」「遠方で参加できない」などの理由で執り行われないケースも見られます。
ただし、施工会社によっては地鎮祭を必ず実施しているケースもあります。依頼者側に実施の意思がない場合には、施工会社側だけで簡略的な地鎮祭を行うこともあるようです。
上棟式との違い
地鎮祭は、「上棟式(じょうとうしき)」と混同されることも少なくありません。その違いも把握しておきましょう。
上棟式とは?
上棟式とは、木造建築の建物で骨組みが完成した際に行われる儀式の一種です。この儀式では、建築に関わった人が乾杯をすると同時に、できた骨組みにのぼって餅やお金などをまきます。
昨今では上棟式の風習も廃れつつありますが、地方の建設現場などでは現在でも行われることがあります。なお、建設作業が一区切り着いた段階で行われるので、地鎮祭とは実施時期が異なります。
地鎮祭の費用はどのくらい?
施工会社によっては、地鎮祭にかかる費用を「建設諸経費」に含めていることもあります。しかし、建設諸経費に含まれていない場合、依頼者側は地鎮祭の費用を別途用意しなければなりません。
地鎮祭の費用相場
地鎮祭で必要となる費用は、「初穂料(はつほりょう)」と「ご祝儀」です。以下で、それぞれの目安をご紹介します。
初穂料(はつほりょう)
地鎮祭は土地の神様に対して行う儀式なので、「初穂料」が必要になります。これは、「神様に納めるお金」という意味です。神社でお守りを買うときに、料金が「初穂料」という名目になっているのを見たことがある方もいるでしょう。また、初穂料ではなく「玉串料(たまぐしりょう)」として納めるケースもあります。
地鎮祭では、儀式を執り行う神主へ初穂料を渡します。金額は定められていませんが、目安としては2万円から5万円程度と考えておくとよいでしょう。
ご祝儀
地鎮祭を行う場合、すべての儀式が終わったのち、工事関係者へご祝儀を渡すのが一般的です。「気持ち程度の金額」で問題なく、一人あたり5,000円から1万円ほどと考えておくとよいでしょう。また、最近ではご祝儀ではなく、菓子折りなどを地鎮祭終了後に工事関係者へ渡すケースも多くなっています。
総額
地鎮祭ではこれらのほかに、祭壇などの準備費(1万円から5万円)、自身で用意するお供えものの購入費(2万円から3万円)、神主のお車代(5,000円から1万円)などがかかります。これらをまとめた総額の目安は15万円前後で、建設費などとは別に予算を用意しておく必要があります。
初穂料・ご祝儀の渡し方
地鎮祭における初穂料とご祝儀の渡し方には、決まりがあります。それぞれを渡す際には、形式にのっとった方法を遵守するようにしましょう。
初穂料
地鎮祭当日、神主が到着したら、お祝い用ののし袋に入れた初穂料を手渡しましょう。水引が紅白の蝶結びになっていて、できれば中袋があって水引が取り外せるものがよいでしょう。のし袋の表面には、「御初穂料」と書いておきます。
ご祝儀
工事関係者へご祝儀を渡す場合、こちらもご祝儀袋へ入れた状態で手渡しましょう。また、こちらの場合、ご祝儀袋には「御祝儀」と記載してください。工事関係者へのご祝儀に関しては、地鎮祭が終了し、一段落着いてから渡すのがよいでしょう。ご祝儀や菓子折りなどを渡す場合、事前に担当者などへ一言伝えておくと受け渡しがスムーズになります。
ご近所への挨拶まわりも忘れずに
地鎮祭を行う場合、ご近所への挨拶も一緒に済ませてしまうのがおすすめです。挨拶まわりでは菓子折りやタオルなどの粗品を用意しておくのが一般的で、この購入費を地鎮祭の費用に含めておくのもよいでしょう。粗品には熨斗(のし)を付け、水引のうえに「粗品」や「御挨拶」などと書きます。
ご近所への挨拶まわりを行う場合、まわる家をあらかじめ決めておくことが大切です。その基準としては「家が近いかどうか」だけでなく、「工事による日常生活への影響が生じるかどうか」という点も重視して考えましょう。
地鎮祭に向けて準備すること
地鎮祭自体は神主が執り行ってくれますが、当日までの準備は依頼者側で行わなければならないことも多くあります。地鎮祭当日へ向けて、依頼者側で済ませておくべきことを見ていきましょう。
日取り
地鎮祭を行うにあたっては、依頼者側で日時を決めなければなりません。ここでよく考えなければならないのが「縁起」についてです。
地鎮祭は縁起のよい日に行うことが推奨されているので、六曜カレンダーの「大安(たいあん)」にあたる日に行うとよいでしょう。どうしても「大安」に都合がつかない場合は、「先勝(せんしょう)」にあたる日の午前中や、「先負(せんぶ)」にあたる日の午後などもおすすめです。
また、地鎮祭の日取りを決める際には「十二直(じゅうにちょく)」を考慮することも重要です。十二直は暦の一種で、日付を十二種類に分けて考えることで吉凶を判断できるとされています。この十二直を基準とする場合、「建(たつ)」や「満(みつ)」などにあたる日取りで地鎮祭を執り行うのがよいでしょう。
依頼者が用意するもの
依頼者が用意すべきものは以下の通りです。ただし、一部は神主や施工会社が用意してくれる場合があります。どれを依頼者側が用意しなければならないかは、事前に確認しておきましょう。
お供えもの
お供えものとしては、以下のものを用意しておく必要があります。
米 | 米は1合分用意します。洗米した状態で、一晩乾かしておく必要があります。 |
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神酒(みき) | 神酒は1升分用意しましょう。一升瓶に入ったものを購入し、蝶結びの熨斗を付けた状態で奉納するのが一般的です。 |
塩 | 塩は、土地を清めるのに使います。銘柄に決まりはなく、量は1合分用意しておきます。 |
水 | 水も土地のお清めに使用します。ペットボトル入りのものを購入するのがよいですが、水道水でも問題はありません。こちらも1合分を用意しましょう。 |
野菜 | 地面の上にできる野菜と地面の下にできる野菜を、合計で3種類から5種類用意します。個数は、各種類1から5個程度を目安とするとよいでしょう。 |
海の幸 | 海の幸も3種類用意します。尾と頭が付いた魚や昆布などを購入しておくとよいでしょう。 |
果実(3種) | 果実に関しても3種類用意します。種類の指定はとくにありません。 |
神酒の盃
地鎮祭の最後には、神酒を参列者一同で飲みます。このとき、人数分の盃が必要です。紙コップなどでも問題ありません。
榊(さかき)
榊は、地鎮祭で使用する植物です。こちらは花屋などで大きめのものを5本購入しておきましょう。
半紙
しめ縄などに使用する半紙も、依頼者側で用意しておくのが一般的です。必要な量は1帖(20枚)です。
食事など
地鎮祭を執り行ったあと、参列者で食事をすることもあります。この場合、弁当や飲み物なども依頼者側で手配しておきましょう。
当日の服装
フォーマルな服装で参列するのがおすすめです。スーツや学校の制服(子どもの場合)がよいでしょう。個人宅で行う場合はカジュアルな格好で参列される方もいますが、過度に派手なものは避けるべきです。
迎える地鎮祭当日、どんなことを行う?
地鎮祭を行う場合、依頼者側が当日の段取りをある程度把握しておくことも大切です。ここでは、一般的な地鎮祭の段取りや所要時間についてご紹介します。
所要時間
個人宅で行われる地鎮祭では、所要時間は15分から30分程度が目安です。祭壇の設営や撤収にかかる時間もそれぞれ30分程度なので、通常は全体の所要時間が2時間を超えることはないと考えてよいでしょう。
地鎮祭の流れ
地鎮祭は神主が主導し、以下の流れにて執り行われます。各儀式については別の名称で呼ばれることもありますが、手順に大きな違いはありません。
ステップ1:手水(てみず・ちょうず)
はじめに、全員が桶から水をすくって手を清めます。手水のあと、地鎮祭を開会します。
ステップ2:修祓(しゅばつ)の儀
祭壇や供えもの、参列者などを清めるためにお祓いします。お祓いは神主が行います。
ステップ3:降神(こうしん)の儀
土地の祭壇に神様を招くための儀式です。こちらも神主主導で行われます。
ステップ4:献饌(けんせん)
お招きした神様へ供えものを奉納する儀式です。依頼者側で用意した供えものなどは、この儀式のために祭壇へ並べられます。
ステップ5:祝詞奏上(のりとそうじょう)
土地を使用することを神様に伝え、工事の安全を祈願する儀式です。ここでは祝詞の読み上げを行います。
ステップ6:四方祓(しほうはらい)
土地をお祓いするための儀式です。この儀式は、「清祓の儀(せいばつのぎ・きよはらいのぎ)」と呼ばれることもあります。
ステップ7:地鎮(じちん)の儀
土地を鎮める儀式です。ここでは鍬(くわ)・鎌(かま)・鋤(すき)の三つの道具を使用し、鍬入れや鎮め物を埋める儀式を執り行います。その一部は依頼者が担当します。
ステップ8:玉串奉奠(たまぐしほうてん)
工事の安全を祈願し、榊に紙垂(しで)を付けた「玉串」を神様に捧げる儀式です。依頼者やその家族も奉納を行います。
ステップ9:撤饌(てっせん)
お供えしたものを片付ける所作を指します。こちらも神主が行います。
ステップ10:昇神(しょうじん)の儀
お帰りになる神様を参列者が送る儀式です。ここでは、参列者一同で拝礼をします。
ステップ11:閉式(へいしき)の辞
「閉式の儀」として神主が挨拶をし、閉会となります。
ステップ12:神酒拝戴(しんしゅはいたい)
最後に神酒を参列者一同で飲み、これをもって地鎮祭終了となります。
地鎮祭で依頼者が行うこととは?
地鎮祭は基本的に神主がほとんどの儀式を行います。そのため、依頼者は静かに儀式を見守るのが基本です。しかし、地鎮の儀における「鍬入れの儀」や「玉串奉奠」に関しては依頼者も参加することとなります。あらかじめ、手順などを確認しておくとよいでしょう。
地鎮祭は一つの区切りとして実施するのがおすすめ
地鎮祭は、土地の神様にその場所を使用する許可をいただくための儀式です。「必ず実施しなければならない」というわけではありませんが、施工会社との良好な関係を結ぶうえでも、できるだけ執り行うのがおすすめです。地鎮祭を行う場合は、用意すべきものや費用相場、当日の流れなどをしっかり把握しておきましょう。
なお、分譲住宅などでは地鎮祭の代わりに、購入時に「竣工祭(しゅんこうさい)」などを行うことがあります。地鎮祭を行っていないことに対して不安がある場合は、竣工祭を通して今後の安全や安泰を祈願しましょう。
これから住宅の購入を考えている方は、ぜひ以下よりお問い合わせください。
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