更新日:2024.01.24
東京23区のハザードマップ!不動産の購入前に知っておきたい5つの注意点
2020年8月から不動産の購入前に行われる重要事項説明において“水害ハザードマップの説明が義務化”されたこともあり、ハザードマップに対する関心が高まってきました。東京23区ではインターネットでハザードマップを調べることができるので、安全に暮らせる不動産を購入するために、自分でもハザードマップを確認しておくことが望ましいです。また、東京の地形も知っておくと、ハザードマップの理解に役立ちます。この記事では「東京23区のハザードマップ」について解説します。
- ハザードマップを確認することで、水害被害を避けやすくなる
- 東京23区は台地と低地に分かれ、洪水被害は低地部に多い
- 地震は広域的に被害が生じる恐れがあるため、建物の耐震性を重視する
ハザードマップとは
ハザードマップとは、自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所、避難経路などの防災関係施設の位置を表示した地図のことです。 ハザードマップは、土地の成り立ちや災害の素因となる地形、地盤の特徴、過去の災害履歴などに基づいて作成されます。
近年は地球温暖化の影響もあり、ゲリラ豪雨などが増えてきたことから、とくに水害に関するハザードマップに関心が集まってきています。
水害は、住む場所によって被害の影響が異なる自然災害です。全国で増加傾向にある水害を考慮すると、不動産を購入する前にハザードマップを確認し、安全に暮らせる場所を選ぶことは重要になりつつあります。
ハザードマップの種類
日本は自然災害の多い国であることから、さまざまなハザードマップが作られてきました。
ここでは、主なハザードマップの種類について解説します。
洪水・高潮・雨水出水を含む水害ハザードマップ
水害ハザードマップとは、洪水や高潮、雨水出水などの水害の被害予測を示したハザードマップのことです。
洪水とは、河川の堤防が決壊することで生じる氾濫のことを指します。 高潮とは、発達した低気圧により海面が上昇し、風によって海水が吹き寄せられる氾濫のことです。 雨水出水とは、集中豪雨などによって下水道の処理能力が追いつかなくなり、マンホール等から雨水があふれてしまうことを指します。なお、洪水氾濫は外水氾濫、雨水出水は内水氾濫とも呼ばれます。
水害ハザードマップは“宅地建物取引業法の改正”により、2020年8月28日以降は不動産売買における重要事項説明において、買い主(借り主)へ説明しなければならない項目となっています。
▼ 洪水ハザードマップ
・ 洪水ハザードマップ
・ ハザードマップポータルサイト
土砂災害のハザードマップ
土砂災害ハザードマップとは、土石流や地すべり、がけ崩れ等の土砂災害の被害予測を示したハザードマップのことです。 土砂災害とは、大雨や地震、火山の噴火などをきっかけに山や崖が崩れる災害のことを指し、主に土石流と地すべり、がけ崩れの3つがあります。
土石流とは、大雨などが原因で山や谷の土・石・砂などが崩れ、水と混じって一気に土砂が流れ出てくる現象です。 地すべりとは、比較的ゆるい傾きの斜面が、雨や雪解け水がしみこんだ地下水によって、広い範囲にわたってすべり落ちていく現象になります。 がけ崩れとは、大雨や地震によって斜面が突然崩れ落ちる現象です。
東京都で発生する土砂災害は“がけ崩れ”がほとんどであり、2008~2017年度における崖崩れは、多い年でも年間10件※程度と比較的少ない自然災害となっています。
がけ崩れを避けるには、がけの下や上にある物件は避けることが望ましいといえます。
※東京都建設局 「土砂災害とは」
▼ 土砂災害ハザードマップ
・ 区市町村による土砂災害ハザードマップの公表状況
・ ハザードマップポータルサイト
地震のハザードマップ
地震のハザードマップとは、プレートや活断層を原因とする被害予測を示したハザードマップのことです。 地震は、極めて予測が難しい災害ですが、日本はフィリピン海プレートや太平洋プレート、ユーラシアプレートなどのプレートが重なりあった上に位置しているため、プレート地震は日本全体で生じる可能性があります。
一方で、地震の原因には、断層を震源とする断層型地震も存在します。東京にある立川断層を原因とする地震に関しては、地域ごとに揺れが予想されています。
▼ 地震ハザードマップ
・ 東京被害想定デジタルマップ
・ 地震ハザードステーション
ハザードマップの閲覧・入手方法
ハザードマップは、市区町村役場の窓口や、国土交通省のハザードマップポータルサイトなどで入手することができます。 東京23区のハザードマップのサイトをまとめると、以下の通りです。
【洪水・土砂災害・高潮・津波】
ハザードマップポータルサイト
【地震】
地震ハザードステーション
【洪水ハザードマップ】
東京都建設局洪水ハザードマップ公表状況
【土砂災害ハザードマップ】
土砂災害ハザードマップの公表状況
東京23区の地形の特徴
この章では、東京23区の地形の特徴について解説します。地形を知っておくことで、ハザードマップの理解や引っ越しの判断に役立つため、先んじて確認することをお勧めします。
台地と低地に分かれる
東京23区の土地は、大きく分けて“武蔵野台地”と“東京低地”の2種類に分類されます。ざっくりというと、JR京浜東北線を境に西側が武蔵野台地、東側が東京低地です。
武蔵野台地は約40万年前から形成された古い土地であり、東京低地は約1万年前に形成された比較的新しい土地となっています。
区で表現すると、東京低地は足立区、葛飾区、墨田区、江東区、江戸川区、荒川区、中央区、台東区(JR京浜東北線の東側)の概ね8つの区です。 それ以外の京浜東北線よりも西側の区は、武蔵野台地上に位置する区となっています。
台地には坂や山・谷が多い
東京は、坂が多い街として知られています。ただし、坂が多い場所は、都内でもJR京浜東北線より西側の武蔵野台地です。 乃木坂やけやき坂といった坂は、武蔵野台地内に位置する港区に存在します。坂が多い武蔵野台地には、山や谷も多いことが特徴となっています。
たとえば、港区の愛宕山や渋谷区の円山、北区の飛鳥山、品川区の八ツ山・御殿山、目黒区の大岡山といったのが武蔵野台地にある山です。
谷に関しては、渋谷区の渋谷、文京区の茗荷谷、新宿区の四ツ谷、台東区の谷中といったものが挙げられます。
低地は人工的に形成されている
東京低地に関しては、江戸時代以降、土地が人工的に形成されてきた歴史があります。とくに、東京湾側は埋立てで造成されてきた場所も多いです。 東京湾は、江戸時代より前は日比谷公園辺りまで日比谷入江という湾が入り込んでおり、海岸線となっていました。
日本一の地価を誇る銀座も、埋立てによってできた土地です。 江戸時代初期の埋め立ては、江戸城の築城の際に掘りや水路を掘削したときの残土を利用したといわれています。
また、低地において、江戸時代には利根川東遷と荒川西遷という2つの河川改修事業が行われたことも大きな特徴です。
現在では利根川は千葉県の銚子沖へと流れていますが、江戸時代まで利根川は東京低地を通って東京湾へと流れ出ていました。 利根川は暴れ川として名高く、東京低地に度重なる洪水を引き起こす原因となっていたため、江戸幕府は利根川の流れを変える治水事業を行いました。 そして、利根川を太平洋へ流路を変えることに約60年の歳月をかけて成功しています。
当時、荒川は利根川と合流する川であったため、荒川の流れも西側に変更しています。荒川に関しては「荒ぶる川」と呼ばれ、明治に入っても東京低地に洪水をもたらしましたが、昭和5年に荒川放水路が完成したことで、東京の洪水被害は激減しました。
現在、東京都内で洪水被害がほとんど発生しないのは、江戸時代から先人たちが行ってきた治水事業の結果となっています。
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東京23区全体のハザードマップの傾向
ここからは、東京23区全体のハザードマップの傾向について解説します。
洪水・高潮の傾向
東京都の洪水と高潮のハザードマップを重ね合わせた状況を示すと、下図の通りです。
画像出典:国土交通省 「ハザードマップポータルサイト」
洪水や高潮は、JR京浜東北線の東に広がる東京低地に浸水被害が多いことがわかります。
土砂災害の傾向
東京都の土砂災害のハザードマップの状況を示すと、下図の通りです。
画像出典:国土交通省 「ハザードマップポータルサイト」
土砂災害に関しては、多摩川を挟んだ神奈川県に被害予想エリアが集中しており、都内には予想エリアがほとんどない状況です。
地震の傾向
東京都で30年以内に震度6弱以上の地震が26%以上の確率で生じる地域を示すと、以下の通りです。
画像出典:国立研究開発法人防災科学技術研究所 「地震ハザードステーション」
少し見づらいですが、東京23区は全地域で「26%以上の確率で30年以内に震度6弱以上の地震が生じる」と予想されています。
東京23区の物件を購入する際の5つの注意点
ここでは、東京23区の物件を購入する際の注意点について解説します。
地名から安全な高台を推測する
東京23区は、高層ビルが建ち並んでいるため地形を感じにくいですが、地名から安全な高台をある程度推測することはできます。 「〇〇山」や「〇〇台」といった地名は、高台にあり水害リスクの低い地域です。 たとえば、品川区の御殿山や北区の飛鳥山、港区の白金台・高輪台といった地名が挙げられます。
そのほかとして、地名にはなっていませんが東京には本郷台や上野台、淀橋台、目黒台、久が原台、荏原台といった台地もあります。
マンションは水害エリアを柔軟に捉えても良い
水害に関しては、マンションであればハザードマップの結果を柔軟に捉えるという考え方もできます。 浸水被害は、深刻な場所でも10m未満となっており、4階以上であれば住戸内への浸水被害は避けられることがほとんどです。 そのため、マンションの高層階を購入する予定の方は、ハザードマップを気にし過ぎないということも一つの判断といえます。
仮にJR京浜東北線より東側である「東京低地」を選択肢から外してしまうと、住まいの選択肢が大幅に狭まってしまいます。
東京の東側は丸ノ内や大手町に近く、通勤に便利な地域も多いです。
東京低地には実際に多くの人が暮らしていますので、ハザードマップは過度に気にせず、マンションの高層階を選択することで水害リスクを避けることも一つの考えといえます。
一方で、戸建てに関しては、まずはJR京浜東北線より西側である「武蔵野台地」側の物件から優先的に検討してみるというのも良いでしょう。
内水氾濫の場所を重点的に確認する
東京23区でハザードマップを確認する際は、内水氾濫の場所を重点的に確認することをおすすめします。
先述した通り、東京都は江戸時代から治水事業を行ってきた歴史もあり、実は全国の中でも洪水氾濫の少ない地域です。 2008~2017年における洪水氾濫と内水氾濫の被害額の割合を示すと、以下のようになっています。
画像出典:国土交通省 「近年の降雨および内水被害の状況、下水道整備の現状について」
洪水被害は全国で59%もありますが、東京都では29%しかありません。東京都の水害被害は圧倒的に内水氾濫の方が多いため、東京都でハザードマップを確認する際は、とくに内水氾濫の地域を意識して確認することが望ましいです。
垂直避難や広域避難を検討しておく
ハザードマップには避難場所が記載されていますが、東京都は人口が多いため、実際に避難場所へ避難民を収容しきれない問題が指摘されています。そのため、ハザードマップで避難場所を確認しても、それだけで十分とは言い切れません。
そこで、避難先は垂直避難や広域避難も検討しておくことが望ましいといえます。
垂直避難とは、たとえばマンションであれば高層階に逃げる避難のことです。
広域避難とは、主に大きな公園や広場などへ避難することを指します。
また、近所の避難場所だけでなく、広域的に親戚や知人宅、宿泊施設、勤め先などを避難先として確保しておくことも現実的な安全対策といえます。
地震を想定し、建物の耐震性を重視する
地震は全国のどこでも発生する可能性があるため、ハザードマップの情報だけでは回避できません。 そのため、地震に関しては、耐震性を備えた建物に住むことで回避することが適切といえます。
中古物件の場合、1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認申請を通過した建物であれば、現行の耐震基準を満たしていることが証明されています。
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まとめ
以上、東京23区のハザードマップについて解説してきました。
東京23区は台地と低地に分かれ、ハザードマップ上では低地に洪水や高潮の浸水被害が多いことが示されています。 しかし、東京都は治水事業が進んでいることで、全国的にみても洪水氾濫は少ないエリアです。
ハザードマップを気にし過ぎる必要はありませんが、住宅を購入するうえで、本記事を一つの判断材料として参考にしていただけますと幸いです。
不動産鑑定士
竹内 英二
不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。
⇒竹内 英二さんの記事一覧はこちら
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