- 2024年7月1日に、令和6年分の路線価が発表
- 令和6年の路線価は全国平均2.3%上昇で、2010年以降最大の上昇率
- 路線価から不動産の実勢価格(実際に取引されている価格)の目安を算出できる
- 今後は利上げや移民政策など、地価に対し不透明なことが多い
令和6年分の路線価が発表!
2024年7月1日に、令和6年分の路線価が発表されました。 全国平均は3年連続で上昇、伸び率は昨年比で+2.3%と、2010年以降過去最大の上昇率となっています。
上昇率が特に高い県は、以下の通りです。
- 福岡県:5.8%
- 沖縄県:5.6%
- 東京都:5.3%
上昇した要因としては、2023年5月より新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が全面解除され、訪日外国人が増えるなどしてインバウンド需要が高まったことなどが考えられます。 特に 観光地としての需要が高い沖縄県は、観光客の集まる国際通りなどに店舗数が増大し、商業地としての投資需要が高まったことで、地価の上昇につながっています。
路線価は、観光地だけでなく、再開発が活発なエリアでも上昇傾向にあります。
福岡県では、中核エリアである天神と博多で100年に1度といわれる再開発プロジェクトが進められており、近年地価上昇傾向が続いています。 この現象は、大規模再開発の真っただ中にある東京都も、同様だといえます。
なお、今年1月に起こった能登半島地震による地価下落を反映するため、被災地域ごとに路線価を引き下げる「調整率」が定められています。 それにより、石川県・富山県・新潟県の全域で、土地の相続や贈与税も引き下げられます。
そもそも路線価とは?
ここでは、そもそも路線価がどういうものなのか解説していきます。
道路に面した土地の価値を算出できる
路線価とは、日本全国のさまざまな道路に価格がつけられており、その道路に面した土地の面積を掛け合わせることで土地の価値を算出できるというものです。
国税庁が路線価図を公表しており、インターネット上で閲覧することが可能です。
画像出典:国税庁 「路線価図・評価倍率表」
国税庁のサイトで調べたいエリアの住所を検索すると、以下のような路線価図を見ることができます。
画像出典:国税庁 「路線価図・評価倍率表」
路線価図の単位は千円となります。
例えば、「820B」と書かれた土地に面している100㎡の土地であれば、
820,000×100㎡=82,000,000円
と計算できます。
なお、数字の後の「B」は借地権割合を示しています。
上記の例で挙げた東京都中央区の路線価図における借地権割合は、以下の通りです。
画像出典:国税庁 「路線価図・評価倍率表」
つまり、この土地に借地権を設定した場合の借地権割合は80%となり、以下のように計算します。
82,000,000円×80%=65,600,000円
相続税路線価と固定資産税路線価の違い
路線価には、相続税路線価と固定資産税路線価があります。
相続税路線価は、主に相続税や贈与税を算出するために用いられるのに対し、固定資産税評価額は、主に固定資産税や都市計画税などを算出するために使用されるといった違いがあります。 両者の違いは以下の通りです。
相続税路線価 | 固定資産税路線価 | |
---|---|---|
算出価格 | 相続税評価額 | 固定資産税評価額 |
主に用いられる税金 | 相続税、贈与税 | 固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税 |
評価主体 | 国税庁 | 市町村(東京23区は東京都) |
公表時期 | 毎年7月頃 | 基準年の4月頃 |
評価頻度 | 毎年 | 3年に1回 |
価格水準 | 公示価格の80%程度 | 公示価格の70%程度 |
相続税路線価 | 固定資産税路線価 | |
---|---|---|
算出価格 | 相続税評価額 | 固定資産税評価額 |
主に用いられる税金 | 相続税、贈与税 | 固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税 |
評価主体 | 国税庁 | 市町村(東京23区は東京都) |
公表時期 | 7月頃 | 4月頃 |
公表頻度 | 毎年 | 3年に1回 |
価格水準 | 公示価格の80%程度 | 公示価格の70%程度 |
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路線価から実勢価格を算出する方法
路線価とは、土地の価値を表す価格の一つです。
土地の価格は「一物五価(いちぶつごか)」などといわれ、一つの土地に五つの価格があるといった特徴があります。
実勢価格 | 時価 |
---|---|
公示価格 | 概ね実勢価格と同じ |
都道府県基準地価 | 概ね実勢価格と同じ |
相続税路線価 | 概ね実勢価格の80%程度 |
固定資産税評価額 | 概ね実勢価格の70%程度 |
実勢価格とは「実際に取引される価格」のことで、公示地価や都道府県基準地価は、概ね実勢価格と同じになるように設定されます。
一方、相続税路線価は実勢価格の80%程度、固定資産税評価額は実勢価格の70%程度を目安に定められます。 これは、相続税路線価が1年に1回、固定資産税評価額が3年に1回しか更新されないため、期間中の地価の増減による納税者間の不公平をなくすことが目的です。
以下の計算式を用いることで、相続税路線価から実勢価格を算出することが可能です。
相続税路線価 ÷ 80% = 実勢価格
例えば、相続税路線価が1,000万円であれば、
1,000万円÷80%=1,250万円
と計算できます。
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過去10年の路線価の推移
過去10年の路線価の推移を見てみると、以下のようになります。
年 | 全国平均/前年比 |
---|---|
2014年 | ▲0.7% |
2015年 | ▲0.4% |
2016年 | 0.2% |
2017年 | 0.4% |
2018年 | 0.7% |
2019年 | 1.3% |
2020年 | 1.6% |
2021年 | ▲0.5% |
2022年 | 0.5% |
2023年 | 1.5% |
リーマンショック以降、特に地方では人口減少が進んでいることもあり、2015年まで下落傾向にありました。 しかし、2016年頃からはアベノミクスの効果もあって、全国平均もプラスに転じ、2020年まで上昇が続きました。 2021年は、コロナ禍の影響でマイナスとなりましたが、2022年以降は再び上昇しています。
なお、新型コロナウイルス感染症が流行したのは2020年1月頃からでしたが、路線価はその年の1月1日時点の評価額となるため、2020年の路線価は大きくプラスとなっています。
特に、2020年前後ではアベノミクスによる経済効果や東京オリンピック開催によるインバウンド需要があるため、観光地を中心に大きくプラスになっていましたが、新型コロナウイルス感染症が流行したことにより、特に観光地の地価は大幅な下落傾向となりました。
2020年の路線価はこうした理由により、現実の価格と大きく乖離してしまったことから、国税庁のホームページ上で「状況に応じて補正する可能性がある」といった異例の声明が出されています。
今後の土地価格に影響を与える可能性があること
最後に、今後の土地価格に影響を与える可能性があることについて、以下の3つに分けて見ていきましょう。
円安とインバウンド需要
新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界各国では、補助金等、多額のお金が配られたことでインフレが進み、その対策として利上げが進められています。 一方、日本においてはインフレがそこまで大きく進行していないといった理由から、他国と比べると利上げのペースは緩やかです。 このため、日本と世界各国の金利差が大きくなり、急激な円安が進んでいます。
円安が進むことで、日本に多くの外国人が観光に訪れ、観光地などは積極的に開発が進められる可能性が高いです。 また、円安で日本の土地を海外の投資家が購入するといった動きも見られます。 そのため、今後もこの傾向が続けば、さらなる地価の上昇につながる可能性があるでしょう。
利上げ
一方で、2024年7月現在、日本でもインフレと利上げが少しずつ進んでいるため、今後本格的に利上げが進めば、住宅ローンや不動産投資ローンの金利が大きく上昇することも考えられます。
住宅ローンや不動産投資ローンの金利が大きく上昇すれば、不動産を購入したくても購入できない人が多くなります。 結果として、地価の下落につながる可能性があるのです。
日本の人口問題
日本の人口問題も、土地価格に影響を与える重要なポイントとなります。
厚生労働省によると、2023年の日本の出生数は約72.7万人、2024年は70万人を割る可能性が高いと発表されるなど、少子高齢化が加速しています。 特に地方などは高齢者の割合が高く、高齢者は新築を建てない、商業施設などの利用が減るといった理由から、そうしたエリアの土地は取引需要が減り、地価が大きく下落していく可能性があるでしょう。
今後、短期間で出生率が大きく改善することは見込めませんが、一つの方法として、移民を受け入れることで人口の減少を抑えられる可能性があります。 実際、政府は外国人労働者を増やしていく方向で政策を進めており、国立社会保障・人口問題研究所の公表する「将来推計人口」は、外国人が増えていくことを前提に作られています。
ただし、こうした外国人労働者を増やす政策には反対する方も多く、今後、政権交代などで政策が変わると状況も変化するでしょう。
まとめ
令和6年分の路線価から、そもそも路線価とはどういったものか、過去の路線価の推移、また今後地価に影響を与える可能性があることについてお伝えしました。
現在、日本においては利上げや少子高齢化など、今後の地価にとって不透明なリスクが複数ある状態といえます。
東京カンテイのプレスリリース「中古マンション価格(年間版) 2024年1月24日」によると、首都圏の中古マンション(70㎡換算)の年間平均価格は、2014年の2,851万円から、2023年には4,802万円まで上昇するなど、不動産バブルの状態にあるという見方もできます。
しかし、利上げなどをきっかけに一気にバブルが崩壊するといった可能性もあり、今後どうなっていくか不透明な部分が多いため、不動産の売却や住み替えを考えている方は、早い段階で不動産会社に相談されてみてはいかがでしょうか。
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宅建士・2級FP技能士(AFP)・相続管理士
逆瀬川 勇造
大学卒業後、地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より不動産会社に入社。不動産会社では住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。2018年より独立し、2020年合同会社7pocketsを設立。
金融や不動産分野におけるコンテンツにおいて、現場での経験を活かし、読者の方が悩みやすいポイントを分かりやすく解説することを心がけている。
⇒逆瀬川 勇造さんの記事一覧はこちら
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